エゼチミブの最も頻度の高い副作用として消化器症状が挙げられます。国内臨床試験では便秘、下痢、腹痛、腹部膨満、悪心・嘔吐などの消化器系副作用が患者の約10-15%に発現することが報告されており、これらの症状は投与開始後2週間以内に出現し、その後徐々に軽減する傾向があります。
消化器症状の詳細な発現パターンは以下の通りです。
これらの消化器症状の多くは一過性で軽度なものですが、症状が続く場合や悪化する場合には医師への相談が必要です。エゼチミブの小腸コレステロールトランスポーター阻害機序が腸管の生理機能に軽微な影響を与えることが消化器症状の背景と考えられています。
エゼチミブ投与において最も注意すべき重大な副作用の一つが横紋筋融解症です。エゼチミブと横紋筋融解症の因果関係は完全には確立されていませんが、まれに横紋筋融解症の発現が報告されており、特にスタチン系薬剤との併用時に注意が必要です。
筋肉症状の発現パターンを以下に示します:
筋肉症状の早期発見には以下の徴候に注意を払う必要があります:
国内第Ⅲ相長期投与試験では、エゼチミブ単独投与期間中にCK上昇が2.8%(5/178例)に認められ、HMG-CoA還元酵素阻害剤併用中では筋肉症状のリスクがさらに上昇することが確認されています。
エゼチミブ投与時には肝機能への影響も重要な監視項目です。血中のALT上昇、γ-GTP上昇などの肝機能障害が発現する可能性があり、重篤な肝機能障害として全身倦怠感、食欲不振、吐き気・嘔吐、皮膚や白目の黄変などの症状が現れることがあります。
国内臨床試験では、エゼチミブ単独投与期間中にγ-GTP上昇が3.4%(6/178例)、HMG-CoA還元酵素阻害剤併用中では4%(3/67例)に認められました。肝機能障害による症状は以下の通りです:
また、エゼチミブによる過敏症反応も重要な副作用の一つです。過敏症状としてアナフィラキシー、血管神経性浮腫、発疹などが報告されており、呼吸困難、まぶたや唇・舌・咽頭の腫れ、発疹などの症状が急速に現れる可能性があります。これらの症状は直ちに服用を中止し、緊急医療機関での対応が必要です。
海外では、エゼチミブ投与後4ヶ月で重篤な肝細胞性薬剤誘発性肝障害を発症した症例が報告されており、薬剤中止後に患者は徐々に回復したものの、エゼチミブが重篤な中毒性肝炎を引き起こす可能性があることが示唆されています。
エゼチミブ投与による神経系副作用として、頭痛、しびれ、めまい、坐骨神経痛などが報告されています。これらの症状の発現頻度は比較的低いものの、患者の日常生活に影響を与える可能性があります。
神経系副作用の詳細は以下の通りです。
特に注目すべき症例として、エゼチミブによる視覚障害の報告があります。この症例では、エゼチミブ療法により同心円状可逆性視野欠損、夜盲症、色覚異常が発現し、エゼチミブと円錐桿体ジストロフィー(CRD)関連視覚障害との関連性が初めて実証されました。薬剤中止後3ヶ月で視野欠損の正常化が確認されており、早期発見と適切な対応の重要性が示されています。
さらに、エゼチミブは肝機能障害患者において薬物動態が大幅に変化することが報告されています。肝機能障害により、エゼチミブとその主要活性代謝物であるEZE-Phの全身曝露量が大幅に増加し、これにより副作用リスクの増大が懸念されます。
エゼチミブ投与における副作用管理では、定期的な検査と患者教育が不可欠です。特に血液検査によるCK値、肝機能マーカー(ALT、γ-GTP)の監視が重要であり、これらの数値の変化を早期に捉えることで重大な副作用の予防が可能になります。
推奨されるモニタリング項目と頻度。
また、高齢者では生理機能の低下により副作用が出やすくなるため、用法用量への配慮が必要です。妊娠中や小児においては安全性が確立されていないため、治療効果がリスクを上回ると判断される場合のみの慎重投与が求められます。
スタチン系薬剤との併用時には筋肉症状のリスクが増大するため、より厳重なモニタリングが必要となります。また、エゼチミブ投与患者の43.6%が治療期間中に薬剤を中止しているという報告もあり、副作用による治療中断を最小限に抑えるための適切な患者管理が重要です。
医薬品医療機器総合機構(PMDA)の副作用報告データベース
日本医療機能評価機構によるエゼチミブの安全性情報