筋肉痛は、運動によって筋繊維に細かな傷ができることから始まります 。従来は乳酸の蓄積が原因とされていましたが、現在では筋肉を構成している繊維の損傷とその修復過程で生じる炎症反応が主因と考えられています 。
参考)https://www.healthcare.omron.co.jp/pain-with/sports-chronic-pain/muscle-pain/
特に普段使わない筋肉を使ったり、同じ動作を繰り返したりすると、筋繊維により大きな負荷がかかり、微細な損傷が生じやすくなります 。この損傷自体は筋肉の成長に必要な自然なプロセスですが、修復過程で発生する炎症が痛みの原因となるのです 。
参考)https://www.taisho-kenko.com/disease/67/
遅発性筋肉痛(Delayed onset muscle soreness, DOMS)は、慣れない、もしくは激しい運動を行った後の数時間から数日間に感じられる疼痛および筋硬直です 。運動した当日よりも翌日や翌々日の方が筋肉痛がひどくなる現象として多くの人が経験しています 。
参考)https://alinamin-kenko.jp/navi/navi_kinnikutsu.html
DOMSの主な原因となるのは、筋肉が収縮方向とは逆方向に引き伸ばされながら力を発揮する「伸張性収縮(エキセントリック収縮)」です 。例えば、階段を下りる動作や重りをゆっくりと下ろす動作が典型的な伸張性収縮であり、これらの運動は筋肉痛を引き起こしやすいのです 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%81%85%E7%99%BA%E6%80%A7%E7%AD%8B%E8%82%89%E7%97%9B
筋肉痛の痛みが遅れて現れる理由は、痛みを感じるメカニズムにあります 。筋線維自体には痛み刺激を感じ取る神経が存在せず、筋線維の束を包んでいる筋膜に痛覚神経があるためです 。
運動によって筋肉組織にわずかな傷ができると、それを修復するために炎症反応が起こり、「ブラジキニン」などの発痛物質が血液中から放出されます 。この発痛物質が筋膜にまで広がった時に初めて痛みを感じるようになり、少し体を動かすだけでも筋肉の痛みが生じてしまいます 。
参考)https://store.healthcare.omron.co.jp/product/hvf/media/sports/relieve-muscle-pain/index.html
筋肉痛を発症すると、熱感や腫れを伴う痛みが生じます 。筋肉部分に力を加えたり、動かしたりすると痛みを感じるため、日常生活に支障をきたすこともあります 。
症状が軽い場合は、運動後から数日で症状が軽減されますが、筋肉痛の回復には段階があることを理解することが重要です 。初期(1〜2日)は炎症が強いため、冷却や安静が基本となり、この時期に無理に動かすと症状が悪化する可能性があります 。炎症が落ち着いてきたら、温熱・ストレッチ・マッサージなどで血流を促し、回復をサポートしていくことが効果的です 。
筋肉の酷使や軽いけがだけでなく、ストレスも筋肉痛の原因となることがあります 。ストレスが続くと、筋肉の緊張を高め痛みに対する感受性を高めるホルモンが放出されます 。
参考)https://www.voltaren-ex.jp/pain-treatments/muscle-pain/
仕事で緊張を強いられた後に背中が痛くなったり、長時間のデスクワークで首や肩に痛みを感じたりするのは、このストレスによる筋肉の緊張が関係しています 。また、疲れていたり、冷たい水に長く浸かるなどで筋肉の血行が悪くなっている時にも筋肉痛が起こりやすくなります 。さらに、ミネラルバランスの崩れも筋肉痛の一因と考えられています 。
筋肉痛を早く治すための根本的な方法は血流の改善です 。筋肉痛は損傷した筋線維を修復する過程での炎症が生じた状態であり、この炎症反応は疼痛物質が筋肉に留まり続けると長く続いてしまいます 。
参考)https://tenroku-orthop.com/column/1007/
2018年のDupuyらによる筋肉痛のケアに関する研究により、運動後のマッサージが最も筋肉痛の改善・回復に効果があることが明らかにされています 。マッサージで血流を良くして、血液中の疼痛物質の滞留を防ぎ、一箇所に留まる量を減らすことが筋肉痛の改善・回復に効果的なのです 。血液循環が良くなると、疲労物質を体外に排出させ疲労回復を促すことにもつながります 。
参考)https://www.karadacare-navi.com/life/11/