プリモボラン(メテノロン)の最も重大な副作用として肝機能障害と黄疸があります。これらは頻度不明とされていますが、長期投与時には特に注意が必要です。肝機能障害では著しいAST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇を伴う場合があり、進行すると黄疸を呈する場合もあります。
肝機能障害の発生機序については、蛋白同化ステロイドが肝細胞に与える直接的な毒性作用が関与しているとされています。特に17α-アルキル化ステロイドと比較して、プリモボランは肝毒性は軽度とされていますが、長期投与や大量投与では肝機能障害のリスクが上昇します。
臨床現場では、プリモボラン投与時は3ヶ月に1回の定期的な血液検査による肝機能モニタリングが推奨されており、AST、ALT、総ビリルビンの測定が基本となります。肝機能異常が認められた場合には、投与中止により多くの症例で回復が期待できます。
プリモボランの副作用は男性と女性で大きく異なる症状パターンを示します。女性における特徴的な副作用として、嗄声(しゃがれ声)が最も注意すべき症状です。この嗄声は進行すると回復困難となる場合があり、通常は月経異常が先発する例が多いとされています。
女性患者では以下のような男性化徴候が現れる可能性があります。
一方、男性患者における副作用は以下のような症状が報告されています。
プリモボランの消化器系副作用として、悪心(吐き気)と嘔吐が報告されています。これらの症状は投与初期に現れることが多く、多くの場合は軽度から中等度の症状に留まります。症状が持続する場合には制吐剤の併用や投与量の調整を検討することが重要です。
過敏症状については頻度不明とされていますが、アレルギー反応として皮疹、かゆみ、発疹などが現れる場合があります。これらの症状が認められた場合には、速やかに投与を中止し、抗ヒスタミン薬やステロイド薬による対症療法を行います。
また、プリモボランは心疾患や腎疾患を有する患者では、ナトリウム貯留や体液貯留を引き起こす可能性があるため、これらの既往歴を有する患者では慎重な投与が必要です。浮腫や体重増加などの症状に注意深く観察し、必要に応じて利尿薬の併用を検討します。
プリモボランの副作用発現は投与量と密接な関係があります。臨床での一般的な投与量は1日3-5錠(15-25mg)程度であり、この用量では重篤な副作用の報告は少ないとされています。しかし、1日10錠以上の大量投与では肝機能障害のリスクが著しく上昇することが指摘されています。
投与量と副作用の関係。
特に思春期男児の低身長治療において使用される場合、約60名の患者での使用経験では大きな副作用は報告されておらず、3ヶ月毎の肝機能検査でも異常値を示した症例はないとされています。
投与期間も重要な要因であり、短期間の使用では可逆性の副作用が多いものの、長期投与では不可逆性の変化をもたらす可能性があります。特に女性の嗄声や男性の睾丸機能抑制は長期投与により回復困難となる場合があるため、定期的な評価と投与継続の必要性を検討することが重要です。
プリモボランの副作用を早期に発見し適切に管理するためには、従来の画一的な検査だけでなく、患者個別の特性に応じた包括的な監視アプローチが必要です。
個別化監視プロトコル。
また、プリモボランは男性ホルモンではないものの、部分的な男性ホルモン様作用を示すため、投与開始から1-2ヶ月程度で声変わりが生じることがあります。これは男児では正常な発達過程の一部として捉えられますが、女性では重篤な副作用となるため、性別による監視項目の違いを明確にする必要があります。
血中コレステロール値の上昇についても注意が必要であり、プリモボランの分子骨格がコレステロール由来であることから、治療前にコレステロール値が高値の患者では慎重な投与を行い、投与終了後には正常値に回復することが確認されています。
精子減少に関する懸念については、製造販売元への問い合わせでも明確な科学的根拠は示されておらず、内分泌学的観点からも一時的な影響に留まると推定されています。FSH(卵胞刺激ホルモン)が精子形成の主要な制御因子であることから、仮に一時的な精子減少があったとしても、投与終了後2-3ヶ月で回復が期待されます。