アドヒアランスと服薬指導の実践的アプローチ

薬物治療の成功には患者の積極的な参加が不可欠です。アドヒアランスの概念から評価方法、影響要因まで実践的な視点で解説し、医療従事者との協働による治療効果の最大化を目指すアプローチをご存知ですか?

アドヒアランスと治療の継続性

アドヒアランスの重要な3つの要素
🤝
患者と医療従事者の協働

治療方針を一緒に決定し、積極的に参加する関係性

🎯
理解と納得に基づく治療

病気や治療法を十分に理解した上での主体的な取り組み

継続的な治療参加

一時的ではない持続的な治療への積極的関与

アドヒアランスの基本概念と定義

アドヒアランスとは、患者が積極的に治療方針の決定に参加し、その決定に従って治療を受けることを意味する医療概念です 。英語の「adherence」は「固守」「執着」という意味を持ち、医療現場では「患者が治療方針の決定に賛同し積極的に治療を受ける」ことを表現します 。
参考)https://www.jga.gr.jp/jgapedia/column/201702.html

 

従来のコンプライアンス概念とは根本的に異なり、アドヒアランスは医療従事者と患者の相互関係で成り立つパートナーシップに基づいています 。患者自身が病気を受け入れ、医師の指示に従って積極的に薬を用いた治療を受けることを指し、患者の主体性と理解度が治療成功の鍵となります 。
参考)https://news.curon.co/pharmacy/8637/

 

📊 重要な統計データ

アドヒアランスとコンプライアンスの本質的違い

アドヒアランスとコンプライアンスの違いは、患者の治療に対する姿勢に表れます。コンプライアンスは「患者の治療に対する姿勢が受動的」であるのに対し、アドヒアランスは「患者の治療に対する姿勢が積極的」という特徴があります 。
参考)https://clius.jp/mag/2024/01/18/fukuyaku-ad-point/

 

コンプライアンス概念では「医療者の指示に患者がどの程度従うか」という一方向の評価が中心でしたが、アドヒアランスでは患者自身の治療への積極的な参加が治療成功の鍵であるとの考え方が基盤となっています 。服薬状況がよくない場合の原因についても、コンプライアンスでは患者側に問題があるとされがちですが、アドヒアランスでは医療提供側と患者の両方に問題があるととらえます 。
参考)https://www.pharm.or.jp/words/word00187.html

 

この概念的変化により、現在の医療現場では患者と医療従事者が一緒になって治療方針を決定し、治療に取り組んでいくことが重視されています 。
参考)http://healthcarenote.jp/glossary/adherence/

 

アドヒアランス評価の方法と測定技術

アドヒアランスの評価・測定方法は、客観的か主観的か、その上で直接法か間接法かの2つの次元で区分されます 。客観的な直接法には、採血などによる生化学的測定値や喘息などでの直接監視下療法(DOT)などがあります。これらは正確ではあるものの、患者や医療者の負担、コストから常用することは困難です 。
参考)https://www.jstage.jst.go.jp/article/yakkyoku/advpub/0/advpub_ra.2022-3000/_pdf

 

間接法では、自己申告(セルフ・レポート)、評価尺度、ピルカウント、服薬支援システム、服薬カレンダー・薬ケース、治療薬物濃度のモニタリングが含まれます 。精神科薬物療法における服薬アドヒアランス研究では、161の論文のうち107の論文においてセルフ・レポートを基に評価されており、最も簡単で実用的な方法として位置づけられています 。
参考)https://mhlw-grants.niph.go.jp/system/files/2014/147111/201446026A_upload/201446026A0009.pdf

 

💡 実用的な評価ツール例

アドヒアランスに影響する5つの主要因子

WHO(2003)は、患者のアドヒアランスに影響する5つの要因を示しています。これらは患者関連要因、治療関連要因、病状関連要因、医療チームまたは医療システム関連要因、社会・経済的要因です 。不十分なアドヒアランスにはしばしば2つ以上の要因が関係しており、相互作用的に影響することの重要性が指摘されています 。
患者属性および生活習慣、服薬状況等の各因子の研究では、「年齢」「職業」「食事」「定期的な受診」「不快な経験」において服用実態の分布の割合に有意差がみられました 。複数のアドヒアランス不良となる因子を持つ患者において、年齢と職業は大きく影響することが示されています 。
参考)https://kaken.nii.ac.jp/file/KAKENHI-PROJECT-26460870/26460870seika.pdf

 

🔍 具体的な影響要因カテゴリ

アドヒアランス向上のための革新的支援戦略

アドヒアランス向上には、まず「なぜ患者のアドヒアランスが低下しているのか」を把握することが不可欠です 。患者一人ひとりのアドヒアランス低下要因を追求し、適切なアプローチを行う必要があります。病気や治療に対して無関心・楽観的な患者に対しては、用法用量を守らない場合のリスクを説明することが効果的です 。
参考)https://kango.mynavi.jp/contents/nurseplus/career_skillup/20221128-2154898/

 

服薬指導においては、視覚から訴えて理解を促し、興味を惹くアプローチが有効です。イラストや説明文が表示された画面を見せながら行う服薬指導が、アドヒアランス向上につながることが実証実験で示されています 。また、服薬アラーム機能を持つスマートフォンアプリの効果も検証されており、4週間の使用で高い遵守率が維持されることが確認されています 。
参考)https://musubi.kakehashi.life/blog/210129-medication-adherence

 

実践的な支援ツール

患者との信頼関係の構築も重要な要素であり、患者の話をじっくりと傾聴し、質問に丁寧に応対することで、わかりやすい言葉で繰り返し説明し、患者の考えや訴えを受け入れる姿勢が求められます 。