変形性膝関節症の症状と治療薬から手術まで完全解説

変形性膝関節症の症状や薬物療法、保存療法から手術まで詳しく解説。膝の痛みと変形のメカニズム、ステージ別治療法を網羅。あなたの膝の痛みは改善できるでしょうか?

変形性膝関節症の症状と治療薬

変形性膝関節症の基本情報
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疾患の特徴

膝関節の軟骨がすり減ることで痛みや機能障害を引き起こす慢性疾患

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主な症状

階段の上り下り時の痛み、長時間立った後の痛み、膝の腫れ、O脚変形

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治療アプローチ

薬物療法、リハビリテーション、装具療法、必要に応じた手術治療

変形性膝関節症の定義と発症メカニズム

変形性膝関節症は、膝関節の内部にある軟骨が徐々に摩耗して小さくなっていく疾患です。健康な膝関節では、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(すねの骨)の間に存在する軟骨がクッションの役割を果たしています。この軟骨は骨同士が直接触れないようにし、関節がスムーズに動くように機能します。

 

発症メカニズムは次のように進行します。

  1. 最初は軟骨の表面が荒れ始め、なめらかさが失われます
  2. 軟骨の厚みが減少し、クッション機能が低下します
  3. 軟骨のすり減りにより、関節の動きが悪くなり痛みや腫れが発生します
  4. さらに進行すると、骨同士が直接触れるようになり変形が始まります

この疾患の主なリスク要因には以下のものがあります。

  • 加齢(特に50歳以上で発症リスクが上昇)
  • 肥満(膝関節への負荷増大)
  • 過去の膝のケガや手術歴
  • 筋力不足(特に大腿四頭筋の弱化)
  • 長期間の膝への過剰な負荷(重労働やスポーツなど)
  • 遺伝的要因
  • 女性(特に閉経後)

膝関節は内外側の大腿脛骨関節と膝蓋大腿関節の3つの関節で構成されています。それぞれの部位で変形が起こると症状や経過が異なることがあります。また、軟骨や半月板には血管が通っていないため、一度損傷すると自然修復が難しいという特徴があります。

変形性膝関節症の主な症状とステージ


変形性膝関節症の症状は進行度によって異なり、初期から重症まで段階的に症状が変化します。症状の出現パターンとステージ別の特徴を理解することが適切な治療選択につながります。

初期ステージの症状:

  • 歩き始めや立ち上がり時に痛みを感じる(スタートアップペイン)
  • 階段の上り下りで膝に不快感がある
  • 長時間の立ち仕事などで膝に痛みが出る
  • 休息により症状が改善する
  • レントゲンでは軽度の変化のみ

中期ステージの症状:

  • より頻繁な膝の痛みがある
  • 関節周囲の腫れや熱感が現れる
  • 正座やしゃがみ込みが困難になる
  • 膝を曲げ伸ばしする際にきしみ音(クレピタス)がする
  • 膝に水がたまることがある(関節液の増加)

重症ステージの症状:

  • 安静時でも続く慢性的な痛み
  • 夜間痛により睡眠が妨げられる
  • 明らかな膝の変形(多くの場合O脚)が見られる
  • 歩行が著しく制限される
  • 日常生活動作に支障をきたす

変形性膝関節症のレントゲン所見として、国際的に「Kellgren-Lawrence分類」が用いられ、グレード0(正常)からグレード4(最重症)まで評価されます。これは関節裂隙の狭小化や骨棘(こっきょく)の形成程度に基づく分類です。

また、特徴的な症状として「引っかかり感」や「ロッキング現象」があります。これは膝の中の破損した軟骨片や半月板が関節内で引っかかることで起こり、突然膝が動かせなくなる感覚を引き起こします。

多くの変形性膝関節症患者は、天候の変化(特に気圧の低下や湿度の高い日)に伴って症状が悪化することを報告しています。これは気圧変化に対する関節内圧の適応遅延が関係していると考えられています。

変形性膝関節症における薬物療法の種類と効果


変形性膝関節症の治療において、薬物療法は症状を緩和する重要な選択肢です。様々なタイプの薬剤が症状や進行度に応じて使用されます。それぞれの薬剤の特徴と効果について解説します。

1. 内服薬
非ステロイド性抗炎症薬NSAIDs):

アセトアミノフェン(解熱鎮痛薬):

  • 作用:中枢神経系に作用して痛みを抑制(抗炎症作用は弱い)
  • 代表的な薬剤:カロナール、タイレノール
  • 効果:軽度から中等度の痛み緩和
  • 特徴:NSAIDsより胃腸への副作用が少なく、高齢者にも使いやすい

オピオイド系鎮痛薬:

  • 作用:強力な鎮痛効果
  • 代表的な薬剤:トラマドール(トラマール)、コデイン
  • 適応:他の治療で効果不十分な中等度から重度の痛み
  • 副作用:便秘、吐き気、めまい、依存性のリスク
  • 使用上の注意:短期間の使用が推奨される

2. 外用薬
NSAIDs外用剤:

  • 形状:ゲル、クリーム、パップ剤(湿布)、テープ剤
  • 代表的な薬剤:ロキソプロフェンテープ、ジクロフェナクゲル
  • 効果:局所の痛みと炎症の緩和
  • 利点:全身性の副作用が少ない
  • 適応:軽度から中等度の痛み、内服薬との併用にも適している

3. 関節内注射薬
ヒアルロン酸注射:

  • 作用:関節液の潤滑機能を改善し、クッション効果を高める
  • 投与方法:通常1〜2週間に1回、計3〜5回の注射
  • 効果:関節の動きの改善、痛みの軽減
  • 効果持続期間:約3〜6ヶ月
  • 副作用:注射部位の一時的な痛みや腫れ(一般的に軽度)

ステロイド注射:

  • 作用:強力な抗炎症効果により関節内の炎症を急速に抑制
  • 投与方法:急性増悪時に単回または少数回の注射
  • 効果:即効性のある炎症と痛みの軽減
  • 効果持続期間:数週間〜数ヶ月
  • 副作用:頻回使用による軟骨への悪影響、感染リスク
  • 使用上の注意:年3〜4回以内の使用が望ましい

変形性膝関節症の薬物療法は、症状の重症度や患者の年齢、合併症の有無などを考慮して選択されます。特に高齢者では薬物有害反応のリスクが高まるため、「低用量から開始し、慎重に調整する」というアプローチが重要です。また、薬物療法単独ではなく、後述する運動療法や生活指導などを組み合わせた総合的な治療アプローチが有効とされています。

変形性膝関節症の保存療法と外科的治療


変形性膝関節症の治療は、基本的に保存療法から始まり、必要に応じて外科的治療に移行します。薬物療法以外の保存療法と、症状が進行した際の外科的治療の選択肢について解説します。

保存療法
1. リハビリテーション・運動療法:
膝関節周囲の筋力強化とストレッチは、関節の安定性向上と症状緩和に効果的です。


  • 筋力トレーニング

    • 大腿四頭筋(前もも)の強化:膝を伸ばす運動