バルサルタンは、アンジオテンシンⅡ受容体のサブタイプであるAT1受容体に選択的に結合し、昇圧系として作用するアンジオテンシンⅡに対して受容体レベルで競合的に拮抗することで降圧作用を発揮します。バルサルタンはラット大動脈平滑筋においてAT1受容体に対するアンジオテンシンⅡの結合を競合的に阻害し、AT1受容体以外の受容体に対してはほとんど親和性を示さないという高い選択性を持ちます。carenet+2
バルサルタンの薬物動態学的特性として、健康成人に単回経口投与した際には速やかに吸収され、血漿中の未変化体は投与後2~3時間で最高濃度に到達します。消失半減期は4~6時間と比較的短く、Cmax及びAUCは160mg投与まで投与量の増加に比例して増大する用量依存性を示します。med.sawai+1
日本では小児(6歳以上)の高血圧症に適応が承認されており、英国及び米国では心不全や心筋梗塞後にも適応が承認されています。バルサルタンは世界で最も処方数が多いARBの一つとして知られ、AT1選択性が大きく、透析では除去されないという特徴があります。e-medicaljapan+2
アジルサルタンは、アンジオテンシンⅡタイプ1(AT1)受容体を選択的に阻害し、血管収縮作用を緩和することで降圧効果を発揮します。アジルサルタンは2012年に発売された最新のARBであり、現在販売されているARBの中で最も効果が強いとされています。h-ohp+2
アジルサルタンの代謝経路は、脱炭酸により代謝物M-Ⅰに、またCYP2C9により代謝物M-Ⅱに代謝されますが、これらの代謝物のAT1受容体阻害作用は未変化体の約1/1,000程度です。健康成人にアジルサルタン20mgおよび40mgを単回経口投与した際の薬物動態パラメータでは、消失半減期は約10時間とバルサルタンよりも長く、1日1回の投与でも24時間を通して血圧をコントロールできる持続的な降圧効果を示します。yg-nissin+3
アジルサルタンは、過剰な血管収縮を抑え、末梢血管抵抗を低下させることで血圧を下げる効果があり、特に夜間高血圧や早朝高血圧の上昇を抑える効果を持つことが特徴です。日本国内では6歳以上、さらには2歳以上6歳未満に対しても用量追加承認が取得されており、小児の高血圧にも使用される場合があります。38-8931+2
ARBの降圧効果の強さを比較すると、ロサルタン<バルサルタン<カンデサルタン<イルベサルタン<テルミサルタン<オルメサルタン<アジルサルタンという順序になります。バルサルタンは適度な降圧作用を持ち、半減期が4時間で適応は高血圧のみです。一方、アジルサルタンは強い降圧作用を持ち、半減期が13時間と作用時間も長いことが特徴です。funmedtokyo
ある研究では、より強い降圧を求める場合にはアジルサルタン(商品名:アジルバ)を選択することが多く、逆に高齢者で強い降圧を求めない場合にはロサルタン(商品名:ニューロタン)を選ぶケースがあると報告されています。降圧効果の一番強いアジルサルタンと一番弱いロサルタンを比べると、効果に差があることが確認されています。iida-naika+1
オルメサルタンは先行して販売されていたロサルタンやバルサルタンに比べると降圧作用が強めでしたが、アジルサルタンが登場してからは、降圧作用の強さで選ばれる機会は少なくなっています。実際の臨床試験において、アジルサルタンは有効な降圧効果を示すことが確認されており、通常は服用開始から数週間で安定した効果が現れます。pharmacist.m3+1
バルサルタンの薬物動態学的特性として、消失半減期は投与量に関わらず約4~6時間と報告されており、Cmax及びAUCは用量依存的に増加し160mgまで線形性が見られます。バルサルタン80mg投与時の最高血漿中濃度は約3.44~3.63μg/mL、消失半減期は5.9~6.0時間です。pmda+2
一方、アジルサルタンの消失半減期は約9.8~10.8時間とバルサルタンの約2倍の長さがあり、作用持続時間がより長いことが特徴です。アジルサルタン20mg投与時の最高血漿中濃度は約2151.7~2303.2ng/mL、40mg投与時は約4741.6~4506.5ng/mLと報告されています。medical.nihon-generic+2
半減期の違いは投与回数に影響を与える重要な要素です。バルサルタンは半減期が短いため、症例によっては1日2回投与(日本では承認外)が必要な場合もあります。アジルサルタンは1日1回の服用でも24時間を通して血圧をコントロールでき、日内変動(1日の血圧の上下)を是正する作用が期待できます。formulary+1
健康成人にアジルサルタン20mgおよび40mgを1日1回7日間反復経口投与した際、初回投与から168時間までの未変化体の累積尿中排泄率はそれぞれ15.1%、14.6%であり、腎排泄の程度も明らかにされています。nc-medical
バルサルタンの適応症は、日本では高血圧症および小児(6歳以上)の高血圧症となっていますが、英国や米国では心不全や心筋梗塞後にも適応が承認されています。バルサルタンはAT1選択性が大きく、透析では除去されないという特徴があり、心不全治療薬エンレストにも使われている成分として知られています。zaitsu-naika+2
アジルサルタンの適応症は高血圧症であり、日本では6歳以上、さらには2歳以上6歳未満に対しても用量追加承認が取得されています。アジルサルタンは腎臓の血管への負担を軽減し、腎臓を保護する効果が期待でき、腎機能の悪化を遅らせる目的でARBが処方されることがあります。utu-yobo+2
ARBはAT1受容体を阻害することによる心臓、腎臓、脳血管などの臓器保護作用が報告されています。オルメサルタンでは糖尿病患者でアルブミン尿が出るまでの期間を延長させる効果を示した研究結果があり、臓器保護作用が期待できることが知られています。telemedease+1
医療現場では、降圧効果を目的とした処方よりも臓器保護作用を念頭においた処方が中心になることも多く、それぞれのARBの特性を理解した上で薬剤選択を行うことが重要です。降圧効果に加えて臓器保護作用を期待できるため、心疾患や腎疾患がある場合の第一選択薬となることが多いのがARBの特徴です。doctor-vision+1
バルサルタンの主な副作用として、横紋筋融解症(0.1%未満)があり、筋肉痛、脱力感、CK上昇、血中及び尿中ミオグロビン上昇を特徴とします。その他、咳、夜間頻尿、ALT上昇、BUN上昇、血清クレアチニン上昇、尿酸上昇が報告されています。pins.japic+1
アジルサルタンの主な副作用には、低血圧、めまい、高カリウム血症、腎機能障害などがあります。ARB全般の副作用として、これらは共通して注意が必要な項目です。アジルサルタンは他の降圧薬(カルシウム拮抗薬、利尿薬など)との併用で相乗効果が期待でき、治療抵抗性高血圧への対応も可能とされています。0thclinic+1
薬価に関しては、バルサルタン錠20mg(後発品)は10.4円/錠程度であるのに対し、アジルサルタン錠10mg「武田テバ」(後発品AG)は20円/錠、アジルサルタン錠20mg「武田テバ」は30.20円/錠と、アジルサルタンの方が高価格です。先発品のアジルバ錠10mgは50.10円、アジルバ錠20mgは価格が設定されており、後発品との価格差も考慮する必要があります。med.ts-pharma+1
バルサルタンは世界で最も処方数が多いARBの一つであり、長期的な使用実績と安全性データが豊富です。一方、アジルサルタンは2012年に発売された比較的新しい薬剤であり、最も強力な降圧効果を持つという特徴から、より強い血圧コントロールが必要な症例に選択されることが多くなっています。h-ohp+1
医療現場でのバルサルタンとアジルサルタンの使い分けは、患者の血圧レベル、年齢、合併症の有無、治療目標などを総合的に判断して行われます。強い降圧を求める場合にはアジルサルタンが選択され、高齢者で強い降圧を求めない場合には効果が穏やかなARBが選ばれる傾向があります。iida-naika
バルサルタンは半減期が短いため、降圧効果よりも腎保護作用を目的に使用される頻度が高いという報告もあり、これは同じくロサルタンにも当てはまります。バルサルタンは適度な降圧作用を持ち、小児から成人まで幅広い年齢層で使用可能であり、透析患者にも使用できるという利点があります。zaitsu-naika+1
アジルサルタンは最も強力な降圧効果を持つARBとして、夜間高血圧や早朝高血圧といった特定の血圧パターンを持つ患者に特に有効です。心血管疾患発症の危険因子とされる夜間高血圧や早朝高血圧の上昇を抑える効果を持つため、これらのリスクが高い患者には優先的に選択されることがあります。sugamo-sengoku-hifu+1
また、既に他のARBで治療中の患者でコントロール不良の場合、より強力なアジルサルタンへの切り替えが検討されることもあります。ある研究では、血液透析患者においてアジルサルタンからサクビトリル/バルサルタンへの切り替えによる効果が報告されており、ARB間の切り替えや併用療法の可能性も示唆されています。pmc.ncbi.nlm.nih
薬剤選択においては、降圧効果だけでなく、薬価、服薬コンプライアンス、患者の生活背景なども考慮する必要があります。バルサルタンは後発品が普及しており薬価が低いため、長期的な治療コストの面でも優位性があります。一方、アジルサルタンは1日1回の服用で24時間安定した降圧効果が得られるため、服薬アドヒアランスの向上が期待できます。kegg+1
日本人高血圧患者におけるARBの比較効果に関するシステマティックレビューとネットワークメタアナリシスでは、アジルサルタン、カンデサルタン、イルベサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、バルサルタンなど7種類のARB単剤療法の有効性が評価されています。この研究では、763件のランダム化比較試験が同定され、そのうち77件が適格基準を満たし、37件が収縮期血圧の平均変化を報告していました。pmc.ncbi.nlm.nih
バルサルタン160mgの朝1回投与と80mg朝・夕2回分割投与の降圧効果を比較した研究では、家庭血圧測定を用いた評価が行われており、投与方法による効果の違いが検討されています。このような研究は、バルサルタンの半減期が比較的短いことから、投与方法の最適化を図る上で重要な知見を提供しています。semanticscholar
アジルサルタンとカンデサルタンの有効性と安全性を比較した日本人のグレードI~II本態性高血圧患者を対象とした16週間の多施設、ランダム化、二重盲検試験では、622人の患者が参加し、アジルサルタン(20~40mgを強制増量)とカンデサルタン(8~12mgを強制増量)の24時間血圧コントロール能力が評価されました。pmc.ncbi.nlm.nih
今後の展望として、ARB間の直接比較試験の蓄積により、より精緻な使い分けの指針が確立されることが期待されます。また、サクビトリル/バルサルタンのような新しい配合剤の登場により、ARBの治療選択肢はさらに広がっています。医療従事者としては、各ARBの特性を理解し、患者個々の状態に応じた最適な薬剤選択を行うことが求められています。pmc.ncbi.nlm.nih
さらに、高血圧治療においてはARB単剤だけでなく、カルシウム拮抗薬や利尿薬との併用療法も重要であり、配合剤を意識した治療戦略も注目されています。バルサルタンとアジルサルタンそれぞれの特性を活かした併用療法や、治療段階に応じた薬剤の使い分けが、今後さらに重要になると考えられます。motoyawata