あなたの計算、1割ズレで研究結果が無効になります
脱落率とは、研究や臨床試験の途中で追跡不能になった被験者の割合を指します。例えば100人で開始し、10人が途中で来院しなくなった場合、単純には10%です。つまり途中離脱の割合です。
ただし医療現場では「除外」と「脱落」を混同しやすく、ここが重要な落とし穴になります。除外は開始前または解析前の意図的な外しであり、脱落とは別概念です。ここは混同しやすいです。
例えば登録120人→解析対象100人→脱落10人というケースでは、母数の取り方で10%にも8.3%にもなります。結論は母数次第です。
この違いを理解していないと、論文の再現性や監査で問題になる可能性があります。特に治験では重大です。
基本の計算式は「脱落数÷総対象数」です。しかし実務ではこれだけでは不十分です。単純式だけでは足りません。
代表的なパターンは以下です。
・単純脱落率:脱落数÷登録数
・追跡脱落率:脱落数÷追跡対象数
・期間脱落率:一定期間内の脱落数÷その期間の在籍数
例えば1年追跡で、途中参加や途中除外がある場合、単純式では誤差が大きくなります。ここがズレやすいです。
このズレは最大で10%以上になることもあり、統計的有意差に影響します。これは痛いですね。
臨床研究ではKaplan-Meier法などで補正するケースもありますが、日常業務ではまず母数の定義を固定することが重要です。これが基本です。
臨床試験では脱落率が20%を超えると、研究の信頼性が大きく低下するとされています。ここは重要ラインです。
例えば抗がん剤試験で脱落率が25%になると、ITT解析とPP解析の乖離が大きくなります。つまり結果が揺れます。
また脱落理由の内訳も重要です。副作用による脱落と転居による脱落では意味が違います。ここは分ける必要があります。
規制当局(PMDAなど)は、脱落理由の記録と説明責任を重視しています。つまり記録が命です。
参考:臨床試験の統計的取り扱い(脱落・欠測の扱い)
https://www.pmda.go.jp/files/000153557.pdf
現場で最も多いミスは「途中除外を脱落に含める」ことです。この誤りは非常に多いです。
例えば副作用で中止した患者を脱落とカウントするかは、プロトコル次第です。ここはルール依存です。
また、再来院予定未達を即脱落とするのも危険です。一定期間の猶予が必要です。ここは注意です。
このリスクの対策として「脱落定義の事前明文化」を行うことが有効です。狙いは判定の一貫性です。候補はプロトコル追記です。
これを1回確認するだけで、監査時の指摘を大きく減らせます。これは使えそうです。
脱落率は単なる指標ではなく、研究コストに直結します。見逃せないポイントです。
例えば脱落率が10%増えると、統計的検出力を維持するために症例数を約1.1〜1.2倍に増やす必要があります。つまり費用増です。
100例で済む試験が120例必要になると、1例あたり50万円なら1000万円の追加コストになります。かなり大きいです。
さらに期間延長により人件費や施設コストも増加します。つまり時間も失います。
このリスクの対策として「早期フォローアップ強化」を行うのが有効です。狙いは脱落予防です。候補はリマインドシステム導入です。
結論は予防が最安です。