一般名処方は、薬価収載品名ではなく「一般的名称+剤形+含量」で処方箋に記載する考え方で、制度上は一般名処方加算の算定とも結びついています。
厚生労働省の解説では、一般名処方マスタは「処方箋に記載する一般名処方の標準的な記載」を示すもので、一般名処方を行う際の参照情報として位置づけられています。
重要なのは、一般名処方マスタの記載は“現場の入力・電算処理・調剤の運用”に直結しやすい点で、マスタ更新が入ると院内システムやレセコンの辞書が追随して、見かけ上「一般名が変わった」ように見えることです。
今回話題になったのは、ヘパリン類似物質ローション(実務上は「ヘパリン類似物質外用液 0.3%」の枠で運用されることが多い)について、一般名が「乳剤性」と「水性」に区分される形へ整理されたことです。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/ac6d0848eef9b820f5978e566b22ed4ac1bd2b48
一般名が分かれると、処方箋の表記が変わるだけでなく、薬局側の在庫が片方しかない場合に「今まで通りの感覚で変更してよいか」が揺らぎ、疑義照会の発生頻度も上がります。
現場向けの注意点を短くまとめると、次の通りです。
分離後の一般名は「ヘパリン類似物質外用液0.3%(乳剤性)」と「ヘパリン類似物質外用液0.3%(水性)」の2本立てとして示されています。
この“括弧付き区分”は、厚生労働省の一般説明にもある「同一成分・同一剤形でも、効能・用法等が異なるものがある場合は括弧書き等で区別する」という整理と同じ発想で、区別の必要性が生じた枠組みです。
薬局実務では、これが次のような連鎖を起こします。
ここで押さえたいのは、乳剤性/水性は「優劣」ではなく「使用感や用途の選択」に直結する属性として扱われやすい点です。
そのため、処方医側が“患者の好み(べたつきや伸び)”を見て乳剤性を選び、薬局側が在庫都合で水性へ寄せていた運用があった場合、今回の区分で“ズレ”が表面化しやすくなります。
患者説明での言い換え例(説明時間が短い外来・薬局窓口向け)も、あらかじめ用意しておくと事故が減ります。
一般名処方マスタは、一般名処方加算の対象となる成分・規格について「標準的な記載」を一覧化したものであり、一般名処方を実施する際に参照することが示されています。
同ページでは、一般名コードが「薬価基準収載医薬品コードの上9桁+ZZZ」を基本にすることなど、電算処理と結びついた設計思想も説明されています。
この“電算と制度の接続”があるため、マスタ更新が入ると現場では次の現象が起きます。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/ce43d52d6955bdbba20164c2c2796b700121c309
意外と見落とされがちなのが、厚労省ページにも明記されている注意書きで、「この一覧は一般名処方加算の対象品目の標準的な記載を示したものであり、一般名処方の可否や記載方法を規定するものではない」という点です。
つまり制度上の“規定”と、電算・監査の“実務上の事実上標準”が完全一致しないことがあり、ここが現場の混乱ポイントになります。
参考:一般名処方マスタの考え方(標準的な記載、括弧書きでの区別、一般名コードの説明)
厚生労働省|処方箋に記載する一般名処方の標準的な記載(一般名処方マスタ)について
現場対応のコアは「処方意図の確認」と「患者への見える化(説明)」を、最小の追加作業で回すことです。
薬局側の視点では、分離後の一般名が出た時点で、在庫・採用品目・発注単位が乳剤性/水性のどちらに紐づくかを棚卸しし、代替候補のリストを持つ必要があります。
運用のたたき台(薬局・院内薬剤部で共通化しやすい形)を示します。
また、話題として重要なのが「院内マスタ設定で、先発名から一般名へ自動変換している場合は乳剤性に寄る可能性がある」という指摘です。
この場合、処方医が水性を想定していても処方箋が乳剤性で出てしまい、薬局側で水性に“戻す”には疑義照会が必要になりやすいため、院内側の辞書(どのキーがどの一般名へ落ちるか)の点検が効果的です。
参考:乳剤性/水性分離後の業務影響(在庫見直し、処方元との情報共有、院内マスタ由来の乳剤性寄りの出力リスク)
アスヤク|ヘパリン類似物質外用液の一般名マスタの分離について徹底解説
検索上位の解説は「何が変わったか」「どう対応するか」に集中しがちですが、医療安全と業務設計の観点では“見えないリスク”を先に潰すのが効率的です。
ここでは独自視点として、レセプト・監査・患者心理の3方向で、起こりやすい事故パターンを整理します(いずれも現場で「あるある」なのに、表面化しにくいタイプです)。
この3つは、個別のスキルではなく“仕組み”で抑えるのが有効です。
この一般名変更は、単なる“表記変更”ではなく、処方意図がラベルとして可視化された出来事と捉えると、対応の優先順位がつけやすくなります。