スポット尿だけで病型診断すると、約2〜3割のケースで誤分類し治療薬を間違えます。
尿酸クリアランス(Cua)とは、血中の尿酸が腎臓を介して尿中にどれだけ排泄されているかを示す指標です。「単位時間あたりに尿中へ排泄される尿酸量」を「血清尿酸濃度」で除した値で、腎臓の尿酸排泄効率をmL/分という単位で表します。
測定法は大きく3種類に分類されます。精度が最も高いのは24時間蓄尿法ですが、患者負担が大きく外来では実施が困難です。臨床現場で標準的に使われるのが60分蓄尿法で、24時間蓄尿との相関係数が0.67(p<0.01)と良好であることがRICE-U研究で示されています。最も簡便なのはスポット尿を用いたFEUA(尿酸排泄率)の計算で、蓄尿が不要です。
それぞれの計算式は次のとおりです。
① 60分蓄尿によるCua(推奨される標準法)
$$Cua(mL/分)= \frac{尿中尿酸濃度(mg/dL)× 60分間尿量(mL)}{血清尿酸値(mg/dL)× 60(分)} × \frac{1.73}{体表面積(m^2)}$$
体表面積(m²)はDu Bois法で算出します。
$$体表面積 = 身長(cm)^{0.725} × 体重(kg)^{0.425} × 0.007184$$
② スポット尿によるFEUA(尿酸排泄率)
$$FEUA(\%)= \frac{尿中尿酸濃度(mg/dL)× 血清クレアチニン濃度(mg/dL)}{血清尿酸値(mg/dL)× 尿中クレアチニン濃度(mg/dL)} × 100$$
FEUAはCuaをCCrで補正した指標であり、腎機能の影響を受けにくいという特徴があります。これが条件です。
③ 簡易判定:尿中尿酸/尿中クレアチニン比(Uua/Ucr)
$$尿中尿酸/クレアチニン比 = \frac{尿中尿酸濃度(mg/dL)}{尿中クレアチニン濃度(mg/dL)}$$
カットオフ値は0.4以下が排泄低下型、0.8以上が産生過剰型と判断されます。外来でのスクリーニングに有用ですね。
各指標の正常値は以下のとおりです。
| 指標 | 正常値 | 排泄低下型 | 産生過剰型 |
|---|---|---|---|
| 尿中尿酸排泄量(mg/kg/h) | 0.48〜0.51 | 0.47以下 | 0.52以上 |
| 尿酸クリアランスCua(mL/分) | 6.2〜12.6 | 6.1以下 | 6.2以上 |
| FEUA(Cua/CCr比)(%) | 5.5〜11.1 | 5.4以下 | — |
| 尿中尿酸/クレアチニン比 | — | 0.4以下 | 0.8以上 |
RICE-U研究のデータによれば、3種類の指標間の診断一致率はFEUAスポットとCua24時間で71.0%、FEUAスポットとCua60分で72.4%という報告があります。つまり完全に代替できるわけではなく、各指標の精度(変動係数30〜35%)も踏まえた上で解釈することが求められます。
参考:尿酸排泄指標の基準範囲と診断精度を詳述した専門資料(日本痛風・尿酸核酸学会 痛風・尿酸ニュース)
尿酸排泄指標の基準範囲と臨床判断値 – 使いやすい方法を求めて|日本痛風・尿酸核酸学会
尿酸クリアランス検査の精度は、検査前の準備状況に大きく左右されます。検査値に影響を与えるエラー要因として、①蓄尿時間の確実性、②尿酸塩結晶の析出による測定値の変化、③記録時のヒューマンエラーが知られており、これらへの対策が診断精度に直結します。
まず食事・飲酒の制限についてです。血清尿酸値は食事・飲酒により変動するため、少なくとも検査3日前からプリン体の多い食事および飲酒を制限することが必要です。プリン体を多く含む食品とは、レバーや白子、あん肝、海老などの内臓・魚介類などが代表例です。
60分法の当日プロトコルは次の流れが標準です。
- 前日21:30 :排尿(24時間蓄尿開始)
- 当日8:30 :310mL程度の飲水(水のみ)
- 9:00 :排尿し、この尿をスポット尿として採取
- 9:00〜10:00 :60分蓄尿開始
- 9:30 :採血(血清尿酸・血清クレアチニン測定)
- 10:00 :60分蓄尿終了、排尿して尿量と尿中濃度を計測
絶食は採血前10時間以上が原則です。採血前には20分以上の座位安静も重要で、これを守らないと結果がぶれます。
尿酸塩結晶の析出を防ぐため、蓄尿は夏期(高温期)を避けることが推奨されています。夏場にやむを得ず実施する場合は、蓄尿容器の保冷管理が必要です。また、60分蓄尿では「前後2分以上の逸脱」があった場合は除外することが研究上でも基準とされており、実臨床においても蓄尿時間の記録を正確に残すことが求められます。
さらに、尿酸値に影響する薬剤(利尿薬・サリチル酸・シクロスポリンなど)は、原則として検査1〜2週間前から休薬が望ましいとされています。薬剤の影響を確認せずに計算した値は、誤った病型分類につながりかねません。
参考:60分法の実施手順と注意事項を解説したクリニックの詳細情報
痛風クリアランス検査 検査結果について|両国東口クリニック
高尿酸血症の病型分類は、尿酸降下薬を選択する上で最も根拠となる情報です。「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第3版」(日本痛風・尿酸核酸学会)では、病型を尿酸産生過剰型・尿酸排泄低下型・腎外排泄低下型・混合型の4つに分類しています。
判断の流れは次のとおりです。
- Step1:血清尿酸値が7.0mg/dL超であることを確認
- Step2:60分法または24時間法でCuaと尿酸産生量(Eua)を測定
- Step3:Cua 6.1 mL/分以下 → 排泄低下型、Eua 0.52 mg/kg/h以上 → 産生過剰型、両方 → 混合型
- Step4:CCrで腎機能状態を確認し、病型を確定
排泄低下型と産生過剰型では、使用すべき薬剤が根本的に異なります。つまり病型誤判定は治療方針の誤りに直結します。
| 病型 | 第一選択薬 | 代表薬 |
|---|---|---|
| 排泄低下型 | 尿酸排泄促進薬 | ベンズブロマロン、ドチヌラド |
| 産生過剰型 | 尿酸生成抑制薬 | アロプリノール、フェブキソスタット、トピロキソスタット |
| 混合型 | 両者の組み合わせ | ベンズブロマロン+アロプリノール など |
注目すべき点として、「腎外排泄低下型」があります。これは腸管での尿酸排泄を担うトランスポーターABCG2の機能低下が原因で生じる型ですが、臨床検査上では尿酸産生過剰型と区別できません。見かけ上は尿中尿酸排泄量が増加するため産生過剰型に分類されますが、本質は産生ではなく腸管排泄の低下です。これは意外ですね。
排泄低下型の患者に尿酸排泄促進薬を投与する際は、尿路結石の予防管理が必須です。1日尿量2L以上を確保し、クエン酸カリウム・クエン酸ナトリウム水和物(ウラリット®など)の投与も検討します。尿路結石の既往がある症例には、原則として尿酸生成抑制薬が優先されます。
参考:高尿酸血症の病型分類と治療薬選択について詳細に解説(富士薬品 高尿酸血症特設サイト)
診断と治療|高尿酸血症・痛風特設サイト|富士薬品
腎機能が低下した患者(CKD合併例)では、尿酸クリアランスの解釈に特別な注意が必要です。CCr(クレアチニンクリアランス)とeGFR(推算糸球体濾過量)は同一ではなく、特に若年者ではCCrがGFRより約30%高めに推算されることが知られています。腎機能低下例でこの乖離を無視すると、病型判断が変わってくることがあります。
高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでは、CCrの目安として以下の分類が示されています。
- 正常:CCr 83〜146 mL/分
- 軽度低下:CCr 70 mL/分以下
- 高度低下〜中等度CKD:CCr 50 mL/分以下
- 高度CKD:CCr 29 mL/分以下
CCrが低下した症例では、Cua自体の値が低くなり、見かけ上「排泄低下型」と判断されやすくなります。しかしこれは腎機能そのものの低下によるものであり、尿酸トランスポーターの機能異常ではありません。CKD合併高尿酸血症においては、FEUA(Cua/CCr比)が真の尿酸排泄効率を反映する、より精度の高い指標となります。
この点でFEUAが優れる理由は明快です。FEUAはCuaをCCrで割って補正しているため、腎機能の全体的な低下の影響をキャンセルできます。一方、Cua単独で5.5 mL/分という値を見た場合、それがCKD G3a(eGFR 45〜59)による低下なのか、URAT1などのトランスポーター異常によるものなのかを区別するには、FEUA比による確認が不可欠です。
また、ガイドラインでは尿酸降下薬の選択において腎機能を必ず考慮するよう定めています。フェブキソスタット・トピロキソスタットは胆汁排泄経路を有するため、中等度までの腎機能低下例でも減量不要で使用できます。アロプリノールは腎機能低下例では蓄積リスクがあるため、用量調節が必要です。腎機能に注意すれば大丈夫です。
CKD合併高尿酸血症の治療においては、尿酸生成抑制薬(特にフェブキソスタット・トピロキソスタット)を優先的に選択しつつ、定期的にFEUAで排泄効率のモニタリングを継続することが推奨されます。
参考:CKD合併高尿酸血症の治療指針について(日本腎臓学会)
高尿酸血症の治療:CKDにおける診療指針|日本腎臓学会
「スポット尿のFEUAは60分蓄尿のCuaと同じ精度だ」と考えて日常診療に使っている医療従事者は少なくありません。しかし、RICE-U研究の副次解析(国立病院機構 796名対象)の結果は、少し慎重な見方を示しています。
FEUAスポットとCua24時間の診断一致率は71.0%(κ係数0.43)、FEUAスポットとCua60分では72.4%(κ係数0.41)であり、統計的にはいずれも「moderate(中程度の一致)」にとどまりました。完全一致でない、ということです。各指標の変動係数はいずれも30〜35%と大きく、1回の測定値での判断には本来、一定の誤差幅があります。
ではなぜそれでもスポット尿FEUAが普及を推奨されているのでしょうか?
理由は「蓄尿の煩雑さ」にあります。一般臨床家において、蓄尿を伴う腎尿酸排泄能の検査は手間と患者負担の大きさから十分に実施されていないのが現状です。そのため、診断精度がやや劣っても、使われない精密検査よりも実施される簡便検査の方が臨床的価値は高いという考え方が支持されています。これは使えそうです。
ただし、治療薬の変更や追加を検討する際など、正確な病型判断が要求される場面では、やはり60分蓄尿によるCuaを実施することが望ましいです。特に「FEUAスポットで排泄低下型と判定されたが治療反応が悪い」「産生過剰型との混合型が疑われる」といったケースでは、60分蓄尿の追加実施を検討する価値があります。
もう一つ注意すべき点として、血清尿酸値・尿中尿酸排泄量には日内変動があることです。血清尿酸値は一般的に朝に高いとされています。FEUAスポット・Cua60分・採血を同一時間帯(午前9〜10時の空腹・安静状態)で揃えることが、測定誤差を最小化するための基本です。
また、尿酸産生阻害薬(アロプリノール等)を使用中の患者では、腎尿酸排泄能が低下することが報告されています。薬物療法開始後も定期的にFEUAまたはCuaをモニタリングすることで、治療の効果判定や薬剤変更の根拠にもなります。FEUAの定期測定が原則です。
実臨床での運用として、以下のような段階的アプローチが合理的です。
- 初回スクリーニング:スポット尿でFEUAを計算(簡便、外来で完結)
- 確定診断・薬剤選択:60分蓄尿によるCuaと尿中尿酸産生量(Eua)を測定
- 治療中モニタリング:スポット尿FEUAを定期的に実施(3〜6か月ごと)
- 治療反応不良時:改めて60分蓄尿でCuaを再測定し、病型の再評価
日本痛風・尿酸核酸学会では、FEUAスポット値とCua60分値は相互に代用可能であることが「推察された」という表現にとどまっており、確定的なエビデンスとしては位置づけられていません。この「moderate」という一致度の意味を正しく理解して診療に活かすことが、高尿酸血症診療の精度向上につながります。
参考:FEUAスポットと60分蓄尿Cuaの診断精度比較を示したRICE-U副次解析論文(J-STAGE掲載)