簡易懸濁法 できない薬剤 徐放性 腸溶性

簡易懸濁法で「できない薬剤」を見分ける要点を、徐放性・腸溶性・温度不安定・配合変化・閉塞対策まで現場目線で整理します。あなたの施設の手順を今の運用のまま安全に底上げできますか?

簡易懸濁法 できない薬剤

簡易懸濁法で「できない薬剤」を早く安全に判断する
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できない理由は「剤形・温度・配合」

徐放性・腸溶性などの特殊構造、55℃での安定性、同時懸濁による配合変化が主因です。

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55℃・10分・投与直前が基本

温湯は約55℃、放置は10分、懸濁後は速やかに投与し、遅延による変化を避けます。

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閉塞はフラッシュと単独懸濁で減らす

チューブ開通確認と前後フラッシュ、詰まりやすい組合せは「別々に懸濁」が効きます。

簡易懸濁法 できない薬剤 徐放性


簡易懸濁法は「錠剤を粉砕せず、投与時に55℃程度の温湯で崩壊・懸濁させて経管投与する」方法なので、剤形の仕組みを壊すと危険な薬は原則として不適です。
とくに徐放性(持続放出)製剤は、薬がゆっくり出る前提で設計されているため、温湯で崩壊させたり構造を壊したりすると、短時間に放出が進み血中濃度の急上昇につながり得ます。
現場で迷いやすいのは「OD錠=何でも懸濁OK」ではない点で、ODであっても特殊構造や添加物の性質により、温湯が不向きな例があります。
「徐放性っぽい」薬を疑うための実務的チェックポイントを、薬歴・薬袋・名称から拾うと判断が速くなります。


  • 製品名にCR、SR、R、LA、ERなどの表記がある(施設差はありますが、徐放設計のサインになりやすい)
  • 「1日1回で長く効く」を売りにしている、急な作用で困る薬効(循環器・気管支拡張など)
  • 粒が多層・コーティング様に見える、割線がないなど、見た目が“加工前提でない”

代替の考え方は「同効薬の通常放出製剤」「散剤・液剤」「貼付剤」などで、医師へ提案する際は“同成分”にこだわりすぎない方が安全に着地することがあります。


※ただし代替は患者状態(腸管機能、栄養剤、投与部位)で最適解が変わるため、最終判断は処方医・薬剤師で必ずすり合わせます。


参考)https://www.semanticscholar.org/paper/17d328bdfff802d67d8c0ac2f6b118c24c3e48b2

簡易懸濁法 できない薬剤 腸溶性

腸溶性は「胃では溶けず、腸で溶ける」ことで薬を守ったり、胃障害を避けたりする設計です。
このタイプを温湯で処理してしまうと、胃内で放出される前提ではなかった成分が露出し、効果や安全性の前提が崩れる可能性があります。
さらに、腸溶顆粒など“粒そのものが機能”の製剤では、つぶす/強く擦る/過度に振るなどで粒が壊れると設計通りに届かなくなるため注意が必要です。
一方で、腸溶性やコーティングがある薬でも「崩壊しにくい=完全に不可」と短絡しないのがコツです。


意外に盲点になるのが、経管投与は「胃」だけではなく「腸ろう」もあり得る点です。

投与部位が変わると、腸溶設計の意味が変化し、相互作用や吸収の出方も変わり得るため、腸ろうでは“可否”だけでなく“投与部位の妥当性”まで含めて薬剤師と会話するのが事故予防になります。

簡易懸濁法 できない薬剤 温湯 55℃ 安定性

簡易懸濁法で温湯が約55℃とされる理由は、10分放置してもカプセルが溶ける温度(37℃)を下回りにくい運用設計だからです。
ただし「55℃に耐える」ことが全薬剤の前提ではなく、55℃で安定性が保てない薬は使用できない、と明確に指摘されています。
具体例として、55℃で安定性が保てないシクロフォスファミドやカリジノゲナーゼなどが挙げられています。
温度は“高ければよい”わけではなく、添加物の性質で別のトラブルが起きることがあります。


たとえば、添加物にマクロゴール6000(凝固点が56~61℃)を含む薬は、温湯で凝固してチューブ詰まりの原因になり得るため、常温水での調製など工夫が必要です。

このタイプは「できない薬剤」として一律に切り捨てるより、手順(温度・単独懸濁・投与順・フラッシュ)で回避できる余地があるため、“不可”と“条件付き可”を現場で分けておくと教育が楽になります。

また、温湯の作り方が曖昧だと再現性が落ち、崩壊不良→残渣→閉塞という連鎖が起きます。


  • 60℃設定のポット湯を使う
  • 熱湯と水を2:1で混ぜて約55℃を作る

    このような具体手順が提示されています。

簡易懸濁法 できない薬剤 配合変化

簡易懸濁法の失敗は「薬が崩壊しない」だけでなく、「一緒に懸濁したら性質が変わった」「沈殿した」「効果が落ちた」という配合変化でも起きます。
代表例として、レボドパ製剤鉄剤、レボドパ製剤と酸化マグネシウム製剤の組合せは注意が必要で、こうした場合は別々に懸濁して投与する必要があります。
さらに、大量の粉薬や液剤を他薬と一緒に懸濁すると温湯の温度が低下して崩壊しにくくなるため、粉薬や液剤は別にする、という注意点も示されています。
配合変化を避けるための、現場で実装しやすい運用の型を作ると事故が減ります。


  • 原則:1薬1容器(どうしてもまとめるなら“相性が良い組合せだけ”に限定)
  • 投与順:詰まりやすい/反応しやすい薬は最後に回し、都度フラッシュ
  • 時間:10分放置の後は速やかに投与、作り置きは避ける(放置しすぎで変化リスクが上がる)​

また、意外と見落とされがちですが「水」も配合条件の一部です。


硬度が高いミネラルウォーター(硬水)やアルカリイオン水は、薬の吸収や効果に影響することがあるため、水道水を使うよう注意喚起されています。

簡易懸濁法 できない薬剤 閉塞 予防(独自視点)

「できない薬剤」判定の裏側には、実は“薬剤の可否”というより“閉塞させない再現性”の問題が潜んでいることが多いです。
つまり、理論上は懸濁できる薬でも、温度・量・混ぜ方・投与順・フラッシュがズレると「現場ではできない」に変わりやすい、という視点です。
このギャップを埋めるには、薬剤名の暗記よりも、失敗パターンの標準化が効きます。
現場で再現性を上げる“閉塞予防の最小セット”を、あえてチェックリスト化します。


  • 🧪 量の管理:温湯20~30mLを基本にし、薬が多い場合は分割して懸濁する。
  • ⏱️ 時間の管理:10分放置を守り、懸濁後は速やかに投与する(放置しすぎない)。​
  • 🧼 ルート管理:投与前にチューブの開通確認として水20~30mLを注入し、投与後も水でフラッシュする。
  • 🧊 温度の管理:熱湯のまま使わず、2:1混合や60℃ポットからの調製で“55℃付近”を再現する。​
  • 🧱 分離の判断:粉薬・液剤・反応しやすい薬は「別懸濁」を原則にする。

そして、施設運用として最も効くのが「銘柄変更のたびに可否を再確認する」ルールです。


同じ有効成分でもメーカーにより懸濁できる/できないがあり得る、と明記されているため、供給事情でメーカーが変わりやすい今ほど重要になります。

手順書に一言だけ追加するなら、「困ったら自己判断せず医師・薬剤師へ相談」を太字で入れるのが実務的です。


簡易懸濁に適さない薬があること、懸濁しない・変色など異常時は相談することが注意事項として示されています。

注意事項(55℃での安定性、温度・時間の基本、硬水回避、適さない薬は相談)を確認できる公的医療機関PDF。
簡易懸濁法を実施される方へ(大阪刀根山医療センター)




内服薬経管投与ハンドブック―簡易懸濁法可能医薬品一覧