活性酸素の種類とフリーラジカルの特徴

活性酸素には主に4種類があり、その中でもフリーラジカルと非ラジカル種に分類されます。スーパーオキシド、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素はそれぞれ異なる反応性と生体影響を持っていますが、医療従事者はこれらの特性を理解していますか?

活性酸素の種類と特徴

この記事のポイント
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4種類の主要な活性酸素

スーパーオキシド、過酸化水素、ヒドロキシラジカル、一重項酸素が狭義の活性酸素として定義されています。

フリーラジカルの特性

不対電子を持つ活性酸素種は高い反応性を示し、特にヒドロキシラジカルは最も強力な酸化作用を持ちます。

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臨床における重要性

活性酸素はミトコンドリアで主に発生し、多様な疾患の病態形成に関与することが明らかになっています。

活性酸素種(Reactive Oxygen Species: ROS)は、大気中の酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称です。医療現場では、活性酸素が関与する疾患の診断や治療において、その種類と特性を正確に理解することが不可欠となっています。狭義の活性酸素には、スーパーオキシドアニオンラジカル、ヒドロキシラジカル、過酸化水素、一重項酸素の4種類が含まれます。toho-u+4

活性酸素のスーパーオキシド生成機序

 

 

スーパーオキシド(O₂⁻)は、酸素分子が一電子還元されることで生成される最初の活性酸素種であり、他の活性酸素の前駆体として機能します。ミトコンドリアの電子伝達系において、複合体Iからマトリックス側に、複合体IIIからマトリックスと膜間腔側にそれぞれスーパーオキシドが産生されることが報告されています。生体内で生じるスーパーオキシドの約90%はミトコンドリアで発生していると推測されており、細胞内最大の活性酸素発生源となっています。weblio+5
スーパーオキシドは酸素分子から生成される最初の還元体であり、生体にとって重要な役割を持つ一酸化窒素と反応してその作用を消滅させる特性があります。また、好中球やマクロファージなどの貪食細胞において、NADPHオキシダーゼなどの活性酸素産生酵素系によってスーパーオキシドが産生され、生体防御に必要不可欠な役割を担っています。ミトコンドリアは生体内の約95%の酸素を消費し、そのうち1~3%が活性酸素種に変換されると推測されています。wikipedia+4

活性酸素の過酸化水素から生じる反応性

過酸化水素(H₂O₂)は、スーパーオキシドが二電子還元されることで生成される非ラジカル型の活性酸素種です。過酸化水素の反応性はそれほど高くなく、生体温度では比較的安定していますが、金属イオンや光により容易に分解して、より反応性の高いヒドロキシラジカルを生成する特性があります。juraku-clinic+5
過酸化水素は、スーパーオキシドがSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)によって不均化反応を受けることで生成されます。生体内には鉄イオンが多く存在しており、過酸化水素が金属イオン触媒と反応することでヒドロキシラジカルが生じます。この反応はフェントン反応として知られており、過酸化水素が細胞障害を引き起こす重要な経路となっています。過酸化水素は細胞膜を透過しやすい性質を持ち、ミトコンドリアから細胞質へと拡散してシグナル伝達に関与することも報告されています。mnc.toho-u+5

活性酸素のヒドロキシラジカル毒性機構

ヒドロキシラジカル(- OH)は、活性酸素の中で最も反応性が高く、極めて強力な酸化作用を持つフリーラジカルです。活性酸素による多くの生体損傷は、ヒドロキシラジカルによるものとされており、がんや生活習慣病、慢性疾患、老化の直接的な原因となっています。ls-jp.fujifilm+2
ヒドロキシラジカルは地球上で最も酸化反応が高い物質の一つであり、基本的にあらゆる生体分子と反応します。過酸化水素がスーパーオキシドや金属元素と反応することでヒドロキシラジカルが生まれ、DNAや脂質を直接攻撃することが知られています。活性酸素は1日に細胞あたり約10億個発生し、これに対して生体の活性酸素消去能力(抗酸化機能)が働くものの、活性酸素は細胞内のDNAを損傷し、平常の生活でもDNA損傷の数は細胞あたり一日数万から数十万個になります。ヒドロキシラジカルの極めて高い反応性は、その不対電子が他の分子から電子を奪おうとする性質に起因しており、この過程で細胞成分が酸化的損傷を受けます。new.aoyama-wefit+5

活性酸素の一重項酸素と励起状態

一重項酸素(¹O₂)は、通常の三重項酸素とは異なる電子配置を持つ励起状態の酸素分子であり、非ラジカル型の活性酸素種に分類されます。一重項酸素には¹Δgタイプと¹Σg⁺タイプの2種類が存在し、それぞれ異なるエネルギー状態を持っています。chem-station+1
一重項酸素は、光増感反応によって生成されることが多く、紫外線や可視光によって励起された光増感物質がエネルギーを酸素分子に移動させることで生じます。一重項酸素は不飽和脂肪酸、アミノ酸、核酸などの生体分子と反応し、酸化的損傷を引き起こします。体内で生成される活性酸素の代表的な種類はスーパーオキシド、一重項酸素、ヒドロキシラジカルであり、特に活性酸素の中で毒性が強いものはヒドロキシラジカルとされています。tyojyu+1
活性酸素種の化学的性質と分類についての詳細な解説(ケムステ)

活性酸素のフリーラジカルと非ラジカル種の違い

活性酸素種は、不対電子の有無によってフリーラジカルと非ラジカル種に分類されます。フリーラジカルとは、原子核の周りにある電子の数が1個の活性酸素のことを指し、通常2個の電子がペアになっている安定分子とは異なる性質を持ちます。secondopinion-japan+3
スーパーオキシドとヒドロキシラジカルはフリーラジカルであり、不対電子を持つため非常に不安定で反応性が高い特徴があります。一方、過酸化水素と一重項酸素はフリーラジカルではなく、比較的安定した分子構造を持っています。フリーラジカルは失った電子を2個にしようとして、安定分子から電子を奪うという働きを始めてしまうため、体に「酸化」という悪影響を及ぼします。weblio+4
広義の活性酸素には、一酸化窒素(- NO)、二酸化窒素(- NO₂)、ペルオキシナイトライト(ONOO⁻)、オゾン(O₃)、過酸化脂質なども含まれます。これらの活性酸素種は、活性窒素種(Reactive Nitrogen Species: RNS)とも呼ばれ、スーパーオキシドと一酸化窒素が反応してペルオキシナイトライトが生成されるなど、相互に関連しています。med.toaeiyo+2

活性酸素種 分類 化学式 主な特徴
スーパーオキシド フリーラジカル O₂⁻ 最初の還元体、他のROSの前駆体
過酸化水素 非ラジカル H₂O₂ 比較的安定、金属イオンで分解
ヒドロキシラジカル フリーラジカル - OH 最も反応性が高く、強力な毒性
一重項酸素 非ラジカル ¹O₂ 励起状態の酸素分子

東邦大学による活性酸素種と生体内レドックス反応の解説

活性酸素のミトコンドリア発生源とエネルギー代謝

ミトコンドリアは、細胞内における活性酸素の主要な発生源であり、生体内の主な活性酸素種発生源と考えられています。ミトコンドリア内膜上にある呼吸鎖複合体において、酸化還元反応を利用したエネルギー代謝によりATPを産生する過程で、副産物として活性酸素が生成されます。toho-u+3
呼吸鎖(電子伝達系)複合体は、複合体Iから複合体IVまでの4つの主要な酵素複合体から構成されています。複合体IではNADH、複合体IIではコハク酸をそれぞれ酸化することで、ユビキノンを還元してユビキノールにし、複合体IIIでユビキノールを酸化することでシトクロムcを還元します。複合体IVでシトクロムcが酸化され、酸素分子に電子を伝達することで水に還元されますが、この過程で電子伝達鎖から漏れ出る電子が酸素分子を還元し、スーパーオキシドが産生されます。pmc.ncbi.nlm.nih+3
ミトコンドリアの電子伝達系は一般に細胞の酸素消費の90%以上を占め、そのうち1~5%が活性酸素種に変換されるとされ、細胞内最大の活性酸素発生源であると考えられています。ミトコンドリアでATPを作る時、酸素を使いますが、この酸素が生体にとっては害となる活性酸素を数%生むことになり、しかも活性酸素の90%はミトコンドリア内で発生しています。jbsoc+1
ミトコンドリアによる活性酸素産生機序の詳細(NIH論文)

活性酸素の抗酸化酵素による消去システム

生体には、過剰に発生した活性酸素を無毒化する抗酸化防御機構が備わっており、主要な抗酸化酵素としてSOD(スーパーオキシドジスムターゼ)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼが知られています。これらの酵素は、活性酸素を段階的に消去することで、細胞を酸化ストレスから保護する役割を果たしています。jstage.jst+3
SODは、毒性のあるスーパーオキシドを過酸化水素と酸素に変換する酵素であり、体内で合成される代表的な抗酸化酵素です。ミトコンドリアにはMn-SOD(マンガンを含んだSOD)が存在し、ミトコンドリアでエネルギーを作る時に発生する活性酸素を処理しています。カタラーゼとグルタチオンペルオキシダーゼは、SODによって生成された過酸化水素を水と酸素に分解する酵素であり、過剰に発生した活性酸素を無毒化する役割を担います。shinyakoso+4
抗酸化物質N-アセチル-L-システイン(NAC)は、間葉系幹細胞におけるグルタチオンを増加させることで、細胞内の活性酸素の働き(酸化ストレス)を阻止することが報告されており、気管支炎の治療薬や解毒剤としてすでに臨床応用されています。また、シリコンベースの抗酸化剤は、有害な活性酸素種を特異的に除去し、生理学的に有益なROSと反応しない性質を持つことから、新規抗酸化療法として期待されています。pmc.ncbi.nlm.nih+1

抗酸化酵素 作用機序 存在部位
SOD スーパーオキシドを過酸化水素に変換 細胞質、ミトコンドリア
カタラーゼ 過酸化水素を水と酸素に分解 ペルオキシソーム
グルタチオンペルオキシダーゼ 過酸化水素を水に還元 細胞質、ミトコンドリア

活性酸素の疾患への影響と病態形成機序

体内で活性酸素が増えると老化が進行し、シワやシミが生じるだけでなく、免疫機能の低下や動脈硬化の進行、がんの発症につながる危険があります。活性酸素による酸化ストレスは、細胞や組織を攻撃し、免疫機能を低下させることで、風邪やインフルエンザなどの感染症にかかりやすくなります。mediage.lotte
活性酸素は脂質と反応し「過酸化脂質」という物質に変化し、これが体のサビとして様々な健康障害を引き起こします。活性酸素が免疫機能に影響して炎症やアレルギー反応を活性化させ、自己免疫疾患やアレルギー性疾患を引き起こすことが報告されています。第1位のがん、第2位脳血管障害、第3位の心疾患などは体を錆びつかせる活性酸素の影響が大きいと言われています。re-so+2
糖尿病合併症の発症・進展にはミトコンドリア由来活性酸素が関与しており、高血糖状態によってミトコンドリアでの活性酸素産生が増加することが明らかになっています。また、虚血性不整脈、心筋梗塞、高血圧、急性胃粘膜障害、胃潰瘍、大腸炎、膵炎、脂肪肝、腎不全などの多様な疾患において、活性酸素・フリーラジカルが病態形成に関与することが知られています。semanticscholar+3

活性酸素の臨床検査法と測定技術

活性酸素の測定には複数の方法が開発されており、臨床現場での酸化ストレス評価に活用されています。血液採取によるOS-APtest(d-ROMsテスト)では、活性酸素によってダメージを受けた脂質・タンパク質・アミノ酸・核酸などの有機物が変化したヒドロペルオキシド(ROOH)の値を測定することにより、体内の酸化ストレス度(サビつき度)を評価します。son-clinic+2
尿採取による8-OHdG(8-ヒドロキシ-デオキシグアノシン)測定では、活性酸素により遺伝子が損傷を受けて生成される物質の量を測定することで、遺伝子が酸化により損傷を受けている程度を知ることができます。サビた遺伝子は直ぐに修復を受け、不要となった8-OHdGは血液を経由して尿中に排出されるため、尿中の8-OHdG量が酸化ストレスのバイオマーカーとして利用されています。son-clinic
電子スピン共鳴(ESR)法を用いた活性酸素種の検出技術も開発されており、二酸化チタン光触媒における活性酸素種の検出や、歯科臨床応用への新しい可能性が検討されています。また、ニトロキシル・ラジカルは造影剤としての効果に加えて放射線防護の性質を持つため、放射線治療の前に頭部に塗布することで治療後の脱毛を防ぐ薬品として臨床研究が進められています。semanticscholar+2
活性酸素検査の詳細と受診方法(サンクリニック)

活性酸素研究の最新動向と医療応用

近年の研究では、活性酸素が単なる有害物質ではなく、細胞内シグナル伝達や生体防御において重要な役割を果たすことが明らかになっています。活性酸素は記憶学習に必要であることが報告されており、抗酸化物質の過剰摂取には注意が必要であるという知見が得られています。tmghig
分子状水素による水素療法は、活性酸素種による障害を軽減する新たな治療法として注目されています。水素は組織や細胞の中に迅速に拡散し、酸化還元反応系を乱すこともなく、活性酸素種によるシグナル伝達を妨げずに有害なヒドロキシラジカルを選択的に消去する特性を持つことが示されています。seikagaku.jbsoc+1
銅単原子ナノザイムは、天然のスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)の電子的・構造的特性を模倣した人工抗酸化酵素として開発され、敗血症治療における早期抗酸化介入として有益であることが報告されています。また、ルテニウムドープ層状複水酸化物(Ru-hydroxide)を用いた人工抗酸化酵素は、細胞内抗酸化防御システムの反応機構に着想を得て設計され、効率的なレドックスホメオスタシスと顎顔面骨再生に成功しています。pmc.ncbi.nlm.nih+1
活性酸素と記憶学習の関係についての最新研究(東京都健康長寿医療センター)

活性酸素と酸化ストレスマーカーの臨床的意義

酸化ストレスの評価には、生体の酸化ストレス度(d-ROMs)と抗酸化力(BAP)を同時に測定する方法が用いられています。d-ROMsは活性酸素・フリーラジカルによる酸化的傷害の程度を示し、BAPは活性酸素・フリーラジカル除去能力を表すマーカーとして臨床応用されています。akasaka-odayaka
酸化ストレスの測定は、がんや心筋梗塞、老化促進などを招く危険性の評価に有用であり、サビつき度の検査値が標準より高ければ、適切な抗酸化療法の介入が必要となります。老化を促進し、がんや動脈硬化などの要因になる「サビつき=酸化」の程度を調べることで、疾病の予防や早期介入が可能になります。kenkoin+1
MCI・認知症で生ずる活性酸素種の同定と抗酸化物質による臨床応用可能なスクリーニングの準備のための臨床的基盤が整えられています。優れた抗酸化物質としてビタミンCのMCI・認知症への効果が確認されており、今後の臨床応用が期待されています。活性酸素除去およびエネルギー状態改善による脳および心筋虚血の治療薬の開発も進められており、5アミノレブリン酸投与により生じるポルフィリン、ヘム代謝物の臨床応用が検討されています。semanticscholar+1

 

 




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