痙縮と固縮の違いをわかりやすく評価

痙縮と固縮はどちらも「手足がかたい」と表現されますが、抵抗の出方や原因、評価法が異なります。臨床で迷いやすいポイントを短時間で整理し、患者説明にも使える見分け方までまとめますが、あなたの現場ではどこで判断に迷いますか?

痙縮 固縮 違い わかり やすく

痙縮と固縮を「触って」見分ける要点
痙縮は速度依存

速く動かすほど抵抗が強く、ゆっくりなら抵抗が減りやすいのが基本。

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固縮は速度に左右されにくい

速くても遅くても抵抗が比較的一定で、鉛管様や歯車様として触れる。

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評価は目的で使い分け

痙縮はMASなどで段階づけ、固縮は錐体外路症状として他徴候も含めて総合判断。

痙縮:速度と反射で変わる筋緊張をわかりやすく

痙縮は、脳や脊髄の障害で「筋肉を収縮させる指令」と「筋肉を緩ませる指令」のバランスが崩れ、意思と関係なく筋肉が収縮しやすくなる状態として説明されます。
臨床で一番使える特徴は、他動運動の「速さ」によって抵抗が変わる点です。
具体的には、関節を速く動かそうとすると緊張(抵抗)が増し、ゆっくり動かすと緊張が弱くなりやすい、という速度依存性が痙縮の見分けポイントになります。
患者さんへの説明では、「急に動かすと筋肉が反射で身構える」「ゆっくりなら力が抜けやすい」と言い換えると伝わりやすいです。


参考)https://www.mdpi.com/2075-1729/13/4/911/pdf?version=1680170008

ただし現実のベッドサイドでは、痙縮だけでなく拘縮(関節が物理的に動かない要素)などが混在し、単純に速度だけでは割り切れないことが少なくありません。

そのため“速度依存があるか”を起点にしつつ、「どの角度で引っかかるか」「繰り返すと抵抗が変わるか」も合わせて観察すると、判断の精度が上がります。

痙縮:MAS(改訂アシュワース)で評価をわかりやすく

痙縮の代表的な臨床評価として、修正(改訂)アシュワーススケール(MAS)が広く用いられています。
MASは特別な道具を必要とせず、背臥位などでリラックスした状態にして四肢を他動的に伸張したときの抵抗感で段階づけする、という「簡便さ」が利点です。
一方で、評価者の主観や経験に左右されやすく、微細な変化が見逃されやすい点がデメリットとして挙げられています。
実務でのコツは、「同じ肢位・同じスピード・同じ回数」をチーム内で揃えることです(条件が揃わないと“患者の変化”なのか“手技の違い”なのかが曖昧になります)。


参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC5793755/

またMASは「抵抗の強さ」を見ているため、痙縮の反射要素だけでなく、軟部組織が硬くなっている要素が混ざるとスコアが上がりやすい、という落とし穴も意識が必要です(だからこそ、ROMや痛み、関節の終末感もセットで記録します)。


現場では、MASの数値だけを単独で追わず、「介助量」「歩容」「更衣のしやすさ」など生活場面の指標と並べると、上司・他職種への説明が通りやすくなります。

参考:痙縮の定義・固縮/拘縮との鑑別、MASの概要と治療(リハ/内服/ボツリヌス/ITBなど)がまとまっています
日本定位・機能神経外科学会:痙縮(痙性麻痺)
参考:MASの使い方、メリット/デメリット、看護での活かし方(転倒リスク等)が整理されています
ナース専科:修正アシュワーススケール(MAS)

痙縮:固縮との違いを触診でわかりやすく

固縮は、速く動かしてもゆっくり動かしても抵抗が変わらない、または途中でガクンと抜けるような抵抗を感じることがある、と説明されています。
この「速度にあまり左右されない」「全可動域にわたって比較的一定の抵抗」という触り心地が、痙縮との大きな違いです。
パーキンソン病に関連した“動かしにくさ”が固縮の代表例として挙げられます。
ベッドサイドのミニ手順としては、まず患者さんに「力を抜いてください」と声かけし、同じ関節を“ゆっくり”→“速く”で動かし、抵抗の変化が出るかをみます。

速さで抵抗が増えるなら痙縮を疑い、速さで変わらず一定なら固縮寄り、と一旦あたりをつけます。

ただし、痛みや不安、寒さで随意的に力が入っていると、痙縮でも固縮でもないのに「かたい」ので、観察時は表情・呼吸・筋の共同収縮も同時にチェックしておくと安全です(ここを落とすと判断がズレます)。

痙縮:拘縮も混ざる“見かけの違い”をわかりやすく整理(独自視点)

臨床で混乱を生む最大の理由は、「痙縮か固縮か」を二択で考えた瞬間に、拘縮(関節が物理的に動きにくい要素)が視界から消えることです。
拘縮は、他者がどんなにゆっくり頑張って動かそうとしても関節可動域そのものが狭く、動く範囲が制限される状態とされます。
つまり、速度を落としても抵抗が抜けない場合、固縮だけでなく拘縮の可能性も同時に上がる、という整理が重要です。
ここで“意外に効く”のが、評価と同時に「いつから硬くなったか(発症直後か、長期臥床後か)」「日内変動があるか(朝だけ強い等)」を聞き取って記録することです。


痙縮は神経学的要素が中心で、治療(リハ、内服、ボツリヌス、ITBなど)により変化し得る一方、拘縮が進むとストレッチやポジショニングだけでは戻りにくく、目標設定が変わります。


この“可逆性の見立て”を先に置くと、同じ「硬い」でも介入優先度(まず痙縮コントロールか、まず拘縮予防か)が整理でき、チーム連携が急にスムーズになります。


実務で使える簡易整理(入れ子なし)

  • ⚡ 速く動かすと急に抵抗が増える:痙縮を疑う(速度依存)。​
  • 🧱 速くても遅くても抵抗が一定:固縮を疑う(速度非依存)。​
  • 🔒 ゆっくりでもROM自体が伸びない:拘縮の混在を疑う(構造要素)。​
  • 🧾 数値化するなら:痙縮はMASで段階づけし、評価条件を揃えて追跡。​

表:ベッドサイドでの「違い」早見(文章で説明できるように)

























項目 痙縮 固縮 拘縮
他動運動の速度で抵抗が変わる? 変わる(速いと強い、ゆっくりで弱い) 変わりにくい(一定、または途中でガクン) 変わりにくい(そもそもROMが狭い)
代表的な背景 脳・脊髄の障害で指令バランスが崩れる パーキンソン病の動かしにくさが代表 どんなにゆっくりでも動く範囲が狭い
評価の入口 MASなどで抵抗感を段階評価 速度非依存の抵抗を触れて確認 ROM制限と終末感、経過で確認