見当識とは、現在の時刻、日付、場所、人物、周囲の状況などを総合的に判断して自分が今置かれている状況を理解する能力を指します。この能力は、自分の置かれている状況を認識する基本的な認知機能として、日常生活を営む上で欠かせない要素です。job-medley+2
見当識は大きく時間、場所、人物の3つの種類に分類されます。これらの見当識が失われる順番は一般的に「時間→場所→人物」とされており、認知症の進行度合いを評価する重要な指標となっています。sagasix+2
アルツハイマー型認知症では物忘れに続いて見当識障害が起こりやすく、レビー小体型認知症では物忘れよりも見当識障害が目立つことがあります。見当識障害は記憶障害とともに認知症の初期段階から発生する中核症状の一つです。kmw+2
時間の見当識障害は、最も早期に現れる見当識障害として知られています。日付や時刻がわからなくなるだけでなく、夏や冬などの季節、1日の朝・昼・夜の認識もあやふやになってしまいます。sagasix
時間の見当識が障害されると、約束の時間が守れなくなったり遅刻したりする行動が見られるようになります。夜に仕事に出かけようとする、夜中に知人に電話をかける、真夏にセーターを着るといった季節感のない服装をするなどの症状が現れます。anshinkaigo.asahi-life+1
時間感覚が薄れるため、約束の時間に合わせて準備をすることや、長時間待つことが難しくなります。また、自分の年齢がわからなくなったり、朝食をとったかどうかもあやふやになってしまうケースもあります。sagasix+2
場所の見当識障害は、時間の見当識障害に続いて現れることが多い症状です。今いる場所がわからなくなり、認知症が進行することで馴染みのある場所でも迷子になる場合があります。anshinkaigo.asahi-life+1
場所の見当識は「場の見当識」と「所の見当識」に細かく分類することができます。「場の見当識」は公的な場か私的な場か、天気・温度・湿気などの基本状況の把握を指し、「所の見当識」はどこの県や市、建物の何階かといった地理的な位置の把握を意味します。tsuusho
自宅内のトイレの場所がわからない、いつも食事を摂っている場所がわからない、通い慣れた道で迷う、近所に出かけたら自分の家に戻ってこられないといった症状が現れます。昔過ごした期間が長い場所や変化の少ない場所は見当が保たれやすく、最近かかわるようになった場所や変化する場所では見当が障害されやすいという特徴があります。kmw+3
地誌的見当識障害として、対象物同定の視覚認知機能は保たれるものの、物と自己との空間的位置関係を認識する能力が障害される場合もあります。地理的障害、地誌的失見当、広義の地誌的失認なども同義の概念として扱われます。jstage.jst+2
人物の見当識障害は、時間や場所の見当識障害に比べて比較的後期に現れる症状です。自分の名前や生まれ育った場所に関する認識を失い、家族や友人などの人間関係のつながりもわからなくなります。cogniscale+2
完全にその人のことがわからないというわけではなく、見覚えがある顔だと思っていても、相手と自分がどんな関係なのか思い出せないという状態になります。毎日会っている家族は認識できても、親戚や友人を見ても誰だか認識できないといった症状が現れます。sagasix+1
顔についての情報の中では、個人の弁別や同定、表情の認知、視線方向の検出が重要とされています。相貌失認や記憶錯誤などを伴うこともあり、見覚えのある顔でも関係性がわからなくなることが特徴的です。cogniscale+1
見当識の評価には、時間・場所・人に関することを口頭で質問し、回答してもらう方法が一般的に取られます。医療機関では見当識障害の程度を確認するために、長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)やMMSE(ミニメンタルステート検査)などの検査を実施します。kaigo.homes+2
MMSEは、認知症の疑いがあるときに行う神経心理検査で、認知機能の低下を点数で客観的に計測可能な世界各国で用いられている検査方法です。MMSEには11の評価項目があり、時間に関する見当識では季節や日付などを測定する問題が出されます。anshinkaigo.asahi-life+1
時間に関する見当識は1点×5個で評価され、場所に関する見当識も1点×5個で評価されます。MMSEの点数評価は、27~30点が正常値、22~26点が軽度認知障害の疑い、21点以下が認知症の疑いとされます。allabout+2
日本老年医学会による認知機能評価法の詳細ガイド
認知機能検査の実施方法や評価基準について、専門的な情報が掲載されています。
長谷川式簡易知能評価スケール改訂版(HDS-R)は、日本で最も多く用いられている評価法で、運動性検査はなく9つの項目について口頭にて質問形式で実施します。年齢、日付、場所で自己・日時・場所の見当識を確認し、満点は30点で20点以下は認知症疑いとされます。allabout
HDS-Rの評価項目は見当識や記憶など9つで構成され、見当識や様々な質的に異なる記憶に関する項目が含まれています。MMSEとHDS-Rの主な違いは、MMSEが図形の模写や文章記述など高次脳機能障害(失語・失認)の評価項目を含む点です。medicalconsulting+2
見当識障害の看護では、体調不良や服装に注意をし、適宜環境を変えたり、時には冷静な対応をして身体的・精神的な苦痛を緩和していくことが重要です。見当識障害は対処的な看護しかないため、日々の生活の中で進行を抑制することが大切です。mcsg
時計やカレンダーを使用する方法として、毎朝見えやすい場所のカレンダーに今日の日付に印をつけていくことが推奨されます。このとき日付を声に出して読むと頭に残りやすく、時計を何度も確認してもらい「もうすぐお昼ご飯ですね」など時間がわかるような声かけをすることも大切です。info.ninchisho+1
散歩はリハビリになるほか気分転換に有効的で、脳への刺激が入り病状の進行抑制につながります。日光に当たることによって昼夜の区別もつくようになりますが、散歩をする際は看護・介護に関わる人が目を離さず一緒につくようにすることが重要です。mcsg
トイレを失敗してしまう時には、排泄のパターンを把握し「そろそろトイレにいきませんか?」などと声掛けをして一緒についていくことが効果的です。トイレの場所がわからなくなる場合もあるため、わかりやすく表示をするなどの環境設定も必要です。info.ninchisho+2
見当識障害の看護ケアに関する実践的なガイド
医療従事者向けに、見当識障害への具体的な看護アプローチと日常ケアの方法が詳しく解説されています。
見当識障害を含む様々な認知症の症状に対応する際は、本人の不安を取り除き良好な関係を築くことを心がけることが重要です。否定的な言動や行動を抑え、本人の心に寄り添った対応が求められます。as-heim
見当識障害の方は自分が孤独だと感じやすいので、介護者が常に近くにいる状況をつくることが大切です。外の環境に対する管理能力が乏しくなるので、服装を含めた体温調節や季節特有の対策をしてあげるようにしましょう。sagasix
徘徊や家に出ると戻れなくなるからといって屋外の刺激を断つと、逆に症状を進行させてしまいます。自分の足で歩いたり、歩いたときの景色の変化、季節の変化を感じたりすることが脳にはよい影響をもたらします。sagasix
リアリティオリエンテーション(現実見当識訓練)として、日常会話の中で日時や場所、周囲の状況などを伝える働きかけを行うことも有効です。意識的な質問や環境設定により、見当識を刺激・活用する方法が推奨されます。tsuusho+1
職員による補完、環境による補完、安心できる環境づくりなど、見当識を補完する多角的なケアが必要とされます。リロケーションダメージ(住環境の変化による心身への悪影響)にも注意を払う必要があります。tsuusho
見当識障害の改善は難しいとされていますが、周囲の配慮や対応の仕方によっては進行を遅らせたり穏やかに過ごすことも可能です。医療従事者は患者の認知機能の状態を正確に評価し、個別の症状に応じた適切な看護介入を提供することが求められます。imairumo+1
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