ナテグリニドテバ経過措置の満了と処方対応

ナテグリニドテバが経過措置品目となった背景と、経過措置満了後の処方変更や代替薬選択について医療従事者が知っておくべき情報をご存じですか?

ナテグリニドテバの経過措置について

📋 ナテグリニドテバ経過措置のポイント
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経過措置満了日

ナテグリニド錠30mg/90mg「テバ」の経過措置期限は2025年3月31日に設定され、以降は薬価削除となります

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成分重複品統合

同一成分のナテグリニド錠「日医工」への切り替えが推奨されています

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代替薬の選択肢

グリニド系薬剤のレパグリニド、ミチグリニドが主な代替選択肢となります

ナテグリニドテバの経過措置満了の背景

 

ナテグリニド錠30mg/90mg「テバ」は、成分重複品統合により在庫消尽をもって販売中止となり、経過措置品目として指定されました。経過措置とは、医薬品の薬価削除前に一定期間設けられる移行期間で、医療機関が代替薬への切り替えを円滑に行えるよう配慮された制度です。nichiiko+3
ナテグリニド錠「テバ」の経過措置満了日は、90mg錠が2025年3月31日、30mg錠も同日が目安として設定されています。この措置は、日医工株式会社が製造販売する同一有効成分の「ナテグリニド錠30mg/90mg「日医工」」への切り替えを促進するために実施されました。nichiiko+1
経過措置期間は通常最大1年間で、告示された年度の3月末または9月末までとされ、必要に応じて延長申請も可能です。経過措置満了後は当該医薬品コードでの保険請求ができなくなるため、医療機関は期限前に処方変更を完了する必要があります。fpmaj+2

ナテグリニドの供給状況と出荷制限の経緯

ナテグリニド製剤の供給不足は2021年頃から顕在化しました。日医工富山工場での製造販売業停止に伴い、ナテグリニド錠30mg/90mg「日医工」が2021年3月中旬から供給一時停止となり、他社後発品への需要が急増しました。ajhc+2
先発品のファスティック錠についても、他社後発品の供給停止により必要量を供給できなくなり、持田製薬時代から出荷制限が継続されていました。2023年8月からはEAファーマが製造販売を承継しましたが、新規処方を控える依頼が出されるなど厳しい供給状況が続いています。eapharma
日本糖尿病学会も2023年7月より、ナテグリニドの供給量減少に対し、新規患者へのグリニド薬処方の際にはナテグリニド以外の薬剤選択を推奨する案内を出しました。このような供給不安定化を背景に、テバ製品の統合と経過措置設定が進められました。jds+2

経過措置満了後の処方変更手続き

経過措置満了日以降は、該当医薬品での保険請求が不可能となるため、医療機関は期限前に処方変更を完了する必要があります。退院時処方や長期処方で経過措置期限をまたぐ場合、期限後の日数分は査定対象となる可能性があるため、注意が必要です。shirobon+1
具体的な対応として、まずカルテシステムで経過措置品目を使用している患者を抽出し、次回受診時または臨時受診での処方変更を計画します。ナテグリニド錠「テバ」の場合、同一成分の「日医工」製品への切り替えが第一選択となりますが、日医工製品も一時的な出荷停止の履歴があるため、在庫状況の確認が重要です。nichiiko+2
入院患者の場合、DPCでは入院中の処方が包括されるため点数への直接影響は少ないものの、経過措置満了後の医薬品使用は保険診療の原則から望ましくありません。院内採用医薬品の切り替えと並行して、入院患者の処方も速やかに変更する体制が求められます。shirobon
厚生労働省の経過措置品目リストでは、最新の経過措置期限と代替品情報が確認できます(薬価基準収載医薬品の確認に有用)

代替薬としてのグリニド系薬剤の選択

ナテグリニドの代替として、同じグリニド系速効型インスリン分泌促進薬であるミチグリニドとレパグリニドが主要な選択肢となります。これらは膵β細胞のATP感受性K⁺チャネルを閉鎖してインスリン分泌を促進する共通の作用機序を持ちますが、薬物動態や臨床特性に違いがあります。note+3
ミチグリニド(グルファスト)は、通常1回10mgを1日3回食直前に投与し、腎排泄型ですが腎機能障害者にも慎重投与で使用可能です。OD錠の設定があり、ボグリボースとの配合剤も利用できるためアドヒアランス向上が期待できます。低血糖リスクが比較的低いことから、非専門医が処方する際の第一選択薬として推奨する医療機関もあります。shobara.jrc+1
レパグリニド(シュアポスト)は開始用量1回0.25mg、維持用量0.25~0.5mgを1日3回食直前投与します。胆汁排泄型のため腎機能障害患者でも比較的安全に使用でき、透析患者での慎重投与が可能です。血糖降下作用はミチグリニドよりやや強力とされますが、2024年以降シュアポストの販売停止によりジェネリック製品が主流となっています。chukyo.jcho+3

薬剤名 用法用量 代謝・排泄 特徴
ミチグリニド 1回10mg、1日3回食直前 腎排泄 OD錠・配合剤あり、低血糖リスク低
レパグリニド 1回0.25~0.5mg、1日3回食直前 胆汁排泄 腎障害例で安全性高い
ナテグリニド 1回90~120mg、1日3回食直前 主に腎排泄 透析患者は禁忌

ナテグリニドの作用機序と独自の薬理学的特性

ナテグリニドはD-フェニルアラニン誘導体として、膵β細胞膜上のスルホニルウレア(SU)受容体に結合し、ATP感受性K⁺チャネルを閉鎖することでインスリン分泌を促進します。この作用点はSU薬と同じですが、ナテグリニドは結合・解離が速く、食後早期のインスリン分泌を選択的に増強する特徴があります。pharmacista+2
興味深いことに、ナテグリニドは血糖依存性のインスリン分泌促進作用を示します。in vitro研究では、3mMグルコース存在下でのEC50が14μMだったのに対し、8mMでは6分の1、16mMでは16分の1に減少し、血糖値が高いほど強力な作用を発揮することが示されました。この血糖依存性により、空腹時低血糖のリスクが軽減されます。pmc.ncbi.nlm.nih+2
さらにナテグリニドは、K_ATP_チャネル非依存性のインスリン分泌経路も活性化することが報告されています。脱分極細胞においても50~200μMのナテグリニドがグルコース非存在下および存在下でインスリン分泌を誘発し、SU薬とは異なるシグナル伝達経路の存在が示唆されています。この特性により、SU薬に対して脱感作された膵島細胞でもナテグリニドは効果を維持できる可能性があります。pmc.ncbi.nlm.nih+1
ナテグリニドの詳細な作用機序については、薬剤師向け専門サイトで図解付き解説が参照できます(β細胞への作用メカニズムの理解に有用)

医療機関における経過措置品への実務的対応

経過措置品目への対応では、院内の多職種連携が不可欠です。まず薬剤部門がカルテシステムや調剤システムから経過措置品目の使用患者リストを作成し、診療科や外来部門と共有します。このリストには患者ID、処方医、次回受診予定日、残薬日数などを含めると処方変更計画が立てやすくなります。shirobon
電子カルテシステムでは、経過措置品目に自動アラート機能を設定し、処方時に警告表示させることで期限後の誤処方を防止できます。また、経過措置満了1~2ヶ月前に全処方医へ一斉通知を行い、計画的な処方変更を促すことが重要です。shirobon+1
在庫管理の観点では、経過措置品目の新規発注を停止し、在庫を計画的に消費する必要があります。しかし使用期限内の在庫が経過措置満了後に残存すると、廃棄による経済的損失が生じるため、早期の使い切りと代替品への切り替えバランスが求められます。nichiiko
患者への説明も重要で、「薬の効果は変わらないが、制度上の理由で別の製品に変更する」という丁寧な情報提供が必要です。特に同一成分の別メーカー品への変更では、錠剤の外観や添加物の違いから不安を感じる患者もいるため、薬剤師による服薬指導が効果的です。shirobon
💡 実務のポイント

  • 経過措置品目リストの定期更新と全部門への共有
  • カルテシステムでの自動アラート設定による誤処方防止
  • 計画的な在庫消費と代替品への段階的切り替え
  • 患者への丁寧な説明とアドヒアランス維持

グリニド系薬剤の供給不安定化と医薬品政策

グリニド系薬剤の供給問題は、日本の医薬品供給体制全体の脆弱性を反映しています。日本製薬団体連合会の調査によると、2024年3月時点で出荷調整・供給停止となった医薬品は全体の23.9%(4064品目)に達し、特に後発品の供給不安が深刻化しています。toku-seiyakukyo+1
供給不足の背景には多因子的な要因があります。製造工場での品質管理問題による業務停止処分、原薬調達の困難化、採算性の低い品目からの撤退、そして一部製品の供給停止による他製品への需要集中という連鎖反応が起きています。nichiyaku+5
政府は2024年から医薬品供給不安定化対策として、製薬企業に供給情報の速やかな共有を義務付け、担当責任者の設置を求めるなどの措置を講じています。しかし製造能力の根本的な増強には時間を要し、短期的な解決は難しい状況です。m3+2
医療機関側の対応としては、単一薬剤への依存を避け、複数の代替選択肢を持つフォーミュラリの整備が推奨されます。グリニド系では、ミチグリニドとレパグリニドの両方を採用し、供給状況に応じて柔軟に処方変更できる体制構築が望ましいとされています。shobara.jrc+1
日医工の全製品供給状況ページでは、ナテグリニドを含む各製品の最新供給情報が確認できます(リアルタイムの供給状況把握に有用)