オキシドール(日本で一般に2.5〜3.5%の過酸化水素水として扱われる)は、血液や体組織に触れると、カタラーゼで分解されて酸素を発生し、その泡で異物除去(洗浄)に寄与します。
この「泡=殺菌が強い」というイメージは現場でも患者さんにも根強いのですが、生体(血液・組織)では分解が進みやすく、発泡による洗浄は期待できても、消毒効果そのものは大きくなりにくい点が重要です。
一方で、生体ではなく器具など(カタラーゼが少ない環境)であれば、一般細菌やウイルスを5〜20分、芽胞を3時間で殺滅できるとされ、広範囲の抗微生物スペクトルを示す、という整理になります。
医療従事者向けに言い換えると、オキシドールは「創部での主役が化学殺菌というより、泡による物理的デブリ除去になりやすい」消毒薬です。
患者指導では、「泡が出るから効いている」ではなく「泡は汚れを浮かせる役目が大きい。洗い流しやガーゼで拭き取りもセット」と説明すると、誤解が減ります。
参考:オキシドールの発泡機序、器具消毒での浸漬時間、創傷への適用と「生体では消毒効果が小さい」旨
11.オキシドール(過酸化水素)
オキシドールは、創傷・潰瘍の消毒に「原液または2〜3倍希釈」で用いられる整理がされており、洗口では「10倍希釈」など、目的で濃度が変わります。
つまり、同じ“オキシドール”でも「部位・目的で希釈が前提」になりやすく、ここを曖昧にすると、濃度ミスや刺激のトラブルにつながります。
実務で迷うのは、「外来で小外傷を見たとき、患者が自宅でオキシドールを毎日つける」ケースです。
創傷治癒の観点では、消毒薬全般が細胞毒性を持ち得るため、清潔創へ漫然と使うと治癒遅延につながり得る、という原則を押さえておく必要があります(“感染が疑わしい期間だけ”など条件付き運用が基本)。
この観点は、オキシドールだけでなく、ポビドンヨード等にも共通する「創傷は消毒すれば良い」からの脱却ポイントです。
参考:創傷部位の消毒薬は細胞毒性があり、清潔創で治癒遅延が生じ得る、感染時に限定し5日超を避ける等の考え方
https://www.kenei-pharm.com/medical/countermeasure/choose/body/
一般に「マキロン」は商品名で、代表的な製品ではベンゼトニウム塩化物などの消毒成分を含むタイプが知られています。
オキシドールが“過酸化水素の発泡”という反応型なのに対し、ベンゼトニウム塩化物のような逆性石けん系は、接触による殺菌・消毒を狙う設計で、見た目の派手さ(泡)がなくても目的が違います。
ここで医療従事者が押さえたいのは、「創部に何を塗るか」以前に、創部が“清潔創なのか、汚染創なのか、感染兆候があるのか”の評価が最優先であることです。
評価が曖昧なまま「とりあえずマキロン」という説明になると、患者側は“何度も塗るほど良い”と理解し、結果的に皮膚刺激、湿疹、過度な乾燥、痛みの増悪などにつながることがあります。
参考:人体に対する消毒薬選択(創傷、粘膜など)と、濃度・部位の誤りがショックや重篤障害につながり得る注意
https://www.kenei-pharm.com/medical/countermeasure/choose/body/
オキシドールは強い眼刺激性があり、眼科用器材に用いた場合は「十分なすすぎ(リンス)が必要」とされ、すすぎ不足で強烈な眼刺激につながる“誤った使用例”が明確に挙げられています。
この「すすぎが必要」という設計は、患者指導での“家庭内の誤使用”にも応用できます。たとえば、顔面近くの外傷で勢いよく使う、泡が目に流れ込む、十分に洗い流さない、といった事故は想像以上に起きやすいからです。
さらに、医療の現場では“閉鎖腔・半閉鎖腔への使用”など、適応外・誤使用の重大事故にも注意が必要です。
オキシドールは外用が前提であり、「内服しない」「眼に入れない」といった基本注意が添付文書レベルで強調されています。
現場の指導では、患者が「消毒=とりあえず塗る」と考えがちな点を踏まえ、“使って良い部位・ダメな部位”をセットで伝えると再発防止になります。
参考:オキシドールの眼刺激性、器材使用後のリンス必要性、誤った使用例(すすぎ不足)
11.オキシドール(過酸化水素)
検索上位の記事は「成分の違い」「どっちがいい?」で終わりがちですが、医療従事者にとって価値が出るのは、患者の誤解をほどく“短い言い回し”と、リスクを減らす“行動指示”の具体化です。
ここでは、オキシドールとマキロンの違いを、患者の理解に合わせて言語化するためのフレーズ例を提示します(外来、薬局、訪問の場面でそのまま使える形)。
そして、指導の最後に一言添えると、自己判断の暴走が止まりやすくなります。
たとえば「消毒薬は便利ですが、使い方を間違えると治りが遅れることもあります。今日の傷は“洗浄と保護”が主で、消毒はこの条件のときだけにしましょう」といった形です。
“何を使うか”より“どう使うか”を中心に据えると、オキシドール/マキロンどちらを選んでも事故が減り、結果として患者満足と安全性が両立しやすくなります。
参考:創傷での消毒薬は細胞毒性に配慮が必要、感染時に限定するなどの運用思想
https://www.kenei-pharm.com/medical/countermeasure/choose/body/