内側型変形性膝関節症の患者に歩行訓練を急いで行うと、関節の破壊を加速させてしまうことがあります。
つまり、KAMが高いほど内側の軟骨・軟骨下骨への負担が増し、変形が進みやすいということです。
医療従事者として最初に押さえておくべきは「歩行の速さや歩数」ではなく「KAMの大きさ」という視点への転換です。 歩行速度が遅くても、体幹・足部のアライメントが崩れていればKAMは高止まりします。 評価の軸を変えることが、患者への介入精度を大幅に上げることに直結します。 yamanopt(https://yamanopt.com/knee-osteoarthritis-knee-adduction-moment-gait-modification/)
歩行周期において、変形性膝関節症の患者では膝関節の内反モーメントが立脚初期と立脚後期の2回ピークを形成することが知られています。 このダブルピーク構造を理解せずに単純な「歩くリハビリ」を指示すると、介入が逆効果になりかねません。 注意が必要ですね。 podiatry(https://podiatry.tokyo/kam/)
参考リンク(KAMの基礎概念と膝OAの関係について)。
膝内反モーメント(KAM)の基礎を丁寧に解説。内転モーメントが2回ピークを示す理由と歩行評価への活用方法がわかります。
歩行分析で特に重要なのが「荷重応答期(Loading Response:LR)」です。 内側型膝OA患者のLR期では、膝関節屈曲角度変化量(KFE)と外部膝関節屈曲モーメント(KFM)が健常者と比較して有意に低下しており、適切な衝撃吸収がなされていない可能性が示唆されています。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390021857378170752)
衝撃吸収の失敗が問題です。
さらに同研究では、膝OA側でVarus Thrust(VT)の増大と下腿矢状面角速度ピーク値の低下が確認され、これが膝関節周囲筋の共同収縮(co-contraction)の増大を反映している可能性が指摘されています。 注目すべき点は、「膝関節伸展筋力」には患側と健側で有意差が認められなかったという結果です。 つまり、大腿四頭筋の筋力測定だけでは歩行障害の本質を捉えられない場合があるということです。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390021857378170752)
立脚終期が消失している症例も報告されており、推進力の低下・歩幅の減少・歩行速度の低下につながっています。 歩幅が狭くなる原因を単純に「痛み回避」と片付けず、立脚終期の消失という運動学的変化として捉え直すことが精度の高い評価に役立ちます。 これは使えそうです。 kansetsu-saisei(https://kansetsu-saisei.com/blog/871/)
| 歩行周期フェーズ | 内側型膝OAで起きる変化 | 臨床的意義 |
|---|---|---|
| 荷重応答期(LR) | KFE・KFM低下、VT増大 | 衝撃吸収不全→内側コンパートメント過負荷 |
| 立脚中期 | KAM増大(2回ピーク第1峰) | 内側軟骨への圧縮荷重が最大化 |
| 立脚後期 | KAM増大(2回ピーク第2峰)、立脚終期消失 | 推進力低下・歩幅縮小・歩行速度低下 |
| 遊脚期 | 膝屈曲角度の減少 | つまずきリスク上昇 |
参考リンク(歩行周期と変形性膝関節症の関係を詳しく解説)。
歩行分析システムの観点から、変形性膝関節症の歩行特徴・歩行周期の変化・分析手法をわかりやすく解説しています。
歩行修正(gait modification)は、手術を行わずに内側コンパートメントへの負荷を減らせる有効な保存療法戦略です。 具体的な方法としては、①toe-out歩行(つま先外向き)、②体幹外側傾斜歩行、③ステップ幅拡大の3つが代表的です。 yamanopt(https://yamanopt.com/knee-osteoarthritis-knee-adduction-moment-gait-modification/)
それぞれ効果が異なります。
① toe-out歩行は、足部を外側に向けて歩く方法で、立脚後期のKAMを有意に低下させます。 2群間の変化量の差として-0.26(p<0.001)という有意な効果が確認されており、指導しやすい方法としても実臨床で広く取り入れられています。 yamanopt(https://yamanopt.com/knee-osteoarthritis-knee-adduction-moment-gait-modification/)
② 体幹外側傾斜歩行は、カナダ・ブリティッシュコロンビア大学のTakacs氏らの研究で、体幹を最大10度外側に傾けた歩行が内側コンパートメントの生体力学的指標を有意に低下させることが示されています。 注意点は、体幹傾斜角6°・9°・12°すべてで立脚初期・後期のKAMが有意に低下する一方、VO2が平均9.5%・心拍数が平均5.3回/分増加するという体への負担も確認されていることです。 体力低下のある高齢患者へ指導する場合は、心肺機能への影響も考慮が必要です。 carenet(https://www.carenet.com/news/general/carenet/37676)
③ ステップ幅拡大は、ロボット歩行システムを用いた研究で、ステップ幅を広げると歩行時の膝内転モーメントのピーク値が減少することが示されています。 3つの方法は組み合わせることで相乗効果が期待できます。 これは使えそうです。 academia.carenet(https://academia.carenet.com/share/news/6fb4ac7a-f2ca-4e7a-8986-557c413e7222)
重症度によってKAMの低減メカニズムが異なることも2026年1月の研究で明らかになっており、軽症・重症で歩行修正の戦略を変える必要性が示唆されています。 一律に同じ指導をすることの危険性に気づくことが大切です。 academia.carenet(https://academia.carenet.com/share/news/17f04a20-040b-4794-a2c5-3a0e30b27bc6)
参考リンク(歩行指導の具体的な方法とエビデンスをまとめた記事)。
変形性膝関節症への歩行指導(toe-out・体幹側屈・ステップ幅変更)の方法と最新エビデンスを詳細に解説しています。KAM低減戦略の実践に役立ちます。
歩行修正指導と並行して有効なのが、装具・インソールによる外的な荷重補正です。 足底挿板(インソール)は足の外側を高くすることで体重の内側への偏りを補正し、KAMを低減させる効果があります。 clinic.adachikeiyu(https://clinic.adachikeiyu.com/8006)
ただし一人ひとりへのフィッティングが肝心です。
インソールは、患者の足の形・変形の程度・歩行パターンに合わせて個別に作成するのが原則です。 市販の既製品では補正角度が不十分な場合があり、評価なしで処方するとかえってアライメントを乱すリスクがあります。 clinic.adachikeiyu(https://clinic.adachikeiyu.com/8006)
膝サポーターは、膝関節のぐらつき(Varus Thrust)を抑制し安定化させる目的で用います。 保温効果のあるソフトタイプから支柱付きの硬性タイプまであり、VTの大きさや活動量に応じて使い分けます。 歩行中に支柱付きサポーターを使うと、外側へのコンパートメント圧が物理的に分散されるため、内側への過負荷を直接的に軽減できます。 clinic.adachikeiyu(https://clinic.adachikeiyu.com/8006)
また、裸足歩行が内側型膝OA患者の下肢関節負荷を軽減するという研究も存在します。 裸足歩行では通常靴に比べてストライド長が減少しケイデンスが増加しますが、関節の運動範囲や足角にも変化が生じることが報告されています。 意外ですね。 jspt.or(https://www.jspt.or.jp/eibun/2012/1207_2.html)
インソールや装具の選択は「歩行分析の結果」→「どのフェーズでKAMが最大化しているか」→「補正アイテムの選定」という順で判断するのが正しい進め方です。装具の種類を先に決めてから患者に当てはめる逆のアプローチは、効果が不十分になる可能性があります。
参考リンク(装具・インソール・保存療法の具体的な内容)。
内反変形に対する足底挿板・膝サポーターの目的と選び方、物理療法・運動療法との組み合わせ方を詳しく解説しています。
多くの医療従事者が持ちやすい思い込みとして「歩行速度や歩幅を増やす訓練=膝への良い介入」というものがあります。 しかし重症度の高い内側型膝OAでは、ステップ長とKAMの間に負の相関関係が確認されています。 つまり、ステップが大きくなるほどKAMが増大するという逆説的な関係が生じうるのです。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001205572893312)
これは、見逃すと危険な知識です。
ステップ長は骨盤の回旋・前足と後足各関節の角度によって規定されるため、単純に「大股で歩かせる」指導がKAMを高め、内側コンパートメントへの負荷を増やす可能性があります。 特に重症例では歩行訓練の内容設計を慎重に行うことが大切です。 cir.nii.ac(https://cir.nii.ac.jp/crid/1390001205572893312)
また、足角(toe-out angle)を意識的に増加させる戦略や体幹を立脚下肢側に傾ける戦略は、膝OA患者が代償的に自然と行っている場合がある、という報告もあります。 患者が自分でKAMを下げる補償戦略を取っているケースでは、そのパターンを否定せず上手に活かすアプローチが有効です。 膝OA患者の「変な歩き方」を安易に矯正することが、むしろ病態を進行させるリスクがあることを覚えておけばOKです。 jspt.or(https://www.jspt.or.jp/eibun/2010/1008_2.html)
股関節外転筋の強化も忘れてはなりません。 股関節外転筋力が向上すると、歩行中の体幹側屈角が安定し、KAMの長期的な軽減に貢献します。 膝だけを診るのではなく、股関節・足部・体幹を含めた「歩行連鎖全体」を評価する視点が、内側型膝OAのリハビリ戦略の核心です。 jspt.or(https://www.jspt.or.jp/eibun/2010/1008_2.html)
🔑 医療従事者が持つべき歩行評価チェックリスト(内側型膝OA)。
参考リンク(変形性膝関節症の理学療法と生活指導の根拠)。