薬局間譲渡できない薬と毒薬手順

薬局間での医療用医薬品の譲受・譲渡は便利な一方、法令やガイドラインで「できない薬」や厳格な手順が定められています。毒薬の表示・記録・本人確認まで、現場で迷いやすい要点を整理して事故と指摘を防げますか?

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薬局間の譲受・譲渡で迷う所だけ先に整理
まず「対象外の薬」を切り分ける

ガイドラインの対象は、麻薬や覚せい剤原料など「特段の規制が求められている医薬品」を除いた医療用医薬品です。ここを誤ると手順を踏んでもアウトになります。

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記録は3年間、双方で保存

薬局間譲渡は「書面に必要事項を記載し3年間保存」が基本で、同一法人間でも省略できません。監査で最初に見られるポイントです。

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本人確認と対面が原則

受取者の本人確認を行い、確認できない場合は譲渡しない。さらに、譲渡人の薬局で対面で行うのが原則です。

薬局間譲渡できない薬と麻薬

薬局間の譲受・譲渡を扱う際、最初にやるべきは「その医薬品がそもそもガイドラインの対象か」を確定することです。薬局間における医療用医薬品の譲受・譲渡に関するガイドラインは、医療用医薬品を対象としつつも、麻薬や覚せい剤原料など「譲受・譲渡もしくは取り引きにあたり特段の規制が求められている医薬品」を除外しています。したがって、対象外に該当する薬は、ガイドラインの手順どおりに記録や確認をしても、その枠組みでは処理できません。


現場で「薬局間譲渡できない薬」として話題になりやすいのは、麻薬です。麻薬は、薬局間で不足時に融通したくなる局面がある一方、一般の医療用医薬品とは別の枠組み(麻向法等)での運用・許可・手順が問題になります。ここを“医療用医薬品の譲受・譲渡”と同じ感覚で扱うと、後から説明が付かない形になりやすいのが落とし穴です。


また「できない」の意味を、次の2種類に分けて考えると判断が速くなります。


  • 🚫 法令で譲渡自体が強く制限され、許可や要件がないと実施できない(典型が麻薬など)。
  • ⚠️ 法令違反ではなくても、通知・運用・リスク管理上、実務的に避けるべき(包装単位、登録制、管理手順などが絡むもの)。

「毒薬」はこの中で混同されがちです。毒薬は“危険だから薬局間で動かせない”と誤解されることがありますが、少なくともガイドライン上の除外例として明示されているのは麻薬や覚せい剤原料などであり、毒薬そのものが一律に対象外と書かれているわけではありません。つまり、毒薬は“譲渡の手順・帳簿・表示”の論点で厳しくなるタイプです。


薬局間譲渡とガイドライン

薬局間譲渡の手順を組み立てるときは、まずガイドラインの「順守事項」をそのまま自局の運用に落とし込みます。ポイントは、薬局開設者・管理薬剤師・薬剤師それぞれが順守主体として位置付けられており、個人プレーではなく“薬局の手順”として求められている点です。担当者が替わっても再現できる形にしておくと、監査・指導の局面で説明が通りやすくなります。


ガイドラインの重要ポイントは次のとおりです(現場用チェックとしてそのまま使えます)。


  • ✅ 相手方薬局の確認:譲渡人は譲受人に薬局開設許可証(写)の提供を求め、受取者の本人確認を行う。情報確認できない場合は譲渡しない。
  • ✅ 医薬品の確認:容器・被包の記載事項、添付文書、包装状態、使用期限、製造番号などを双方で確認する。
  • ✅ 書面記録:医薬品名、規格、数量、製造番号、使用期限、年月日、薬局名、連絡先、許可番号等を記載する。
  • ✅ 保存:双方で3年間保存(同一法人でも省略不可)。
  • ✅ 手段・場所:譲渡側薬局で、従事者が対面で実施する。

特に「対面」の原則は、忙しい現場だと“つい配送で”となりがちです。しかし、ガイドライン上は、当該薬局の従事者が対面により譲渡人の薬局で行うとされています。例外運用をする場合は、なぜその形にしたか、同等の確認(受取者の本人確認、品質確認、記録の確実性)をどう担保したかが説明できないと、後で苦しくなります。


加えて、同一法人の薬局間でも順守が必要と明記されています。チェーンやグループ内で「社内だから簡略化でいい」となりやすいところですが、そこを否定しているのがガイドラインの現実的な厳しさです。


薬局間譲渡と毒薬表示

毒薬でまず押さえるべきは「表示」です。医薬品医療機器等法(薬機法)上、毒薬は直接の容器または直接の被包に、黒地に白枠・白字で品名と「毒」の文字を記載しなければならないと定められています。劇薬も同様に、白地に赤枠・赤字で品名と「劇」の文字という規定があります。薬局間譲渡の場面では、この表示の有無や読み取りやすさが「適正流通・品質確保」の説明に直結します。


毒薬で起きがちな事故パターンは、単に保管が甘いというより、譲渡の瞬間に“ラベル確認が抜ける”ことです。譲渡はイレギュラー業務になりやすく、通常の入荷検品の流れに乗らないため、表示確認・添付文書確認が雑になりがちです。ガイドラインは、医薬品の直接の容器・被包の記載事項や添付文書等の確認を求めていますから、毒薬・劇薬はここを「通常より丁寧に」やった痕跡(記録)が重要になります。


毒薬の表示は、患者交付の局面だけの話ではありません。薬局間で動かすときこそ、第三者が見ても“毒薬として適正に表示されていた状態で受け渡した”と説明できることが、トラブル予防になります。


  • 🧪 表示が薄い・汚れ・剥離:受け渡し前に状態を記録、疑義があれば譲受自体を止める判断も検討。
  • 📦 外箱だけが毒薬表示で中が紛らわしい:内外の整合、品名・規格・数量の一致確認を強化。
  • 🔁 返品・再流通の疑いを持たれないように:製造番号・使用期限を記録して追跡性を担保。

薬局間譲渡と書面

薬局間譲渡で現実に一番強い武器になるのは、書面(記録)です。ガイドラインでは、譲受・譲渡の双方が、医薬品に関する情報(製造販売業者、医薬品名、規格、数量、製造番号・記号、使用期限)と、相手方情報(薬局名、連絡先、許可番号、受渡日、受取者等)を記載し、3年間保存するよう整理されています。


実務では「何を書けば足りるのか」が曖昧になりやすいので、監査で説明しやすい最小セットを固定します。ガイドラインの整理に沿うなら、少なくとも次は落とさない設計にします。


  • 🧾 医薬品情報:医薬品名、規格、数量、製造番号・記号、使用期限(有効期間)、製造販売業者。
  • 🏥 相手方情報:薬局名、連絡先、(譲渡側は)薬局開設許可番号。
  • 👤 人の情報:医薬品を渡した者、受け取った者(担当薬剤師または窓口対応者まで含めて残す設計が無難)。
  • 📅 日付:譲受年月日・譲渡年月日(同日でも“どちらの記録か”が分かるように)。

「書面」は紙に限定されていませんが、重要なのは“改ざん防止と追跡性”です。たとえば電子保存でも、誰がいつ入力し、後から修正したら履歴が残る仕組みだと説明力が上がります。逆に、口頭依頼→メモ→後日転記、のような流れは、トラブル時に弱いので、譲渡業務の入口で必ず記録を開始するのが安全です。


さらに、ガイドラインは「情報を確認できない場合には譲渡は行わない」と明確です。忙しさや関係性を理由に“あとで許可証をもらう”をやると、最も説明不能な状態になります。相手先の許可証(写)を事前に受領し、受取者の本人確認を実施し、記録に落としてから動かす。この順番が崩れないように運用します。


薬局間譲渡と独自視点

検索上位の多くは「何ができないか」「法令上どうか」に寄りがちですが、現場の事故予防に効くのは“品質と説明責任”を同時に満たす設計です。独自視点としておすすめは、薬局間譲渡を「緊急時の調達」ではなく「監査対応まで含む一つの標準業務」として、チェックリストと役割分担を固定することです。


具体的には、次のように“3点セット”で組むとブレが減ります。


  • ✅ 入口(受付基準):対象外医薬品(麻薬等)を最初に除外、相手方許可証(写)未提出なら受付しない。
  • ✅ 実施(対面と本人確認):受取者の身分確認、譲渡側薬局で対面を原則化、例外時の代替措置(いつ・誰が・どう確認したか)を事前に定義。
  • ✅ 出口(記録と保管):ガイドラインの記録事項で書面完成、双方で3年保存、ファイル場所を固定(監査時に即出せる)。

ここに「毒薬」を組み込むなら、もう一段だけ踏み込みます。毒薬・劇薬は表示規定が明確なので、受け渡しの時点で表示・包装・添付文書の状態確認を記録に残すと、後日の疑義(本当に適正流通だったのか、入れ替わりがなかったか)に強くなります。毒薬は“危ないから触らない”ではなく、“触るなら手順で守る”のが薬局としての実装です。


最後に、現場での言い回しも重要です。相手薬局から急ぎで依頼が来たとき、断り方が曖昧だと押し切られます。判断基準をテンプレ化しておくとストレスが減ります。


  • 📌 「その品目はガイドライン対象外の可能性があるので、まず分類と根拠を確認します」
  • 📌 「許可証(写)と受取者の本人確認ができないと譲渡できません」
  • 📌 「対面が原則なので、受取は譲渡側薬局でお願いします」

有用:薬局間の譲受・譲渡の対象外(麻薬等)や、本人確認・対面・記録事項・3年保存など手順の根拠がまとまっている
https://secure.nippon-pa.org/mail/img/790.pdf
有用:毒薬・劇薬の表示(「毒」「劇」の表示要件)など、薬機法の条文構造を確認できる
https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000145