「1剤」は、主に内服薬(内服用滴剤を除く)の調剤料・薬剤料を数えるための“所定単位”です。調剤報酬の通知では、1剤とは「調剤料の算定の上で適切なものとして認められる単位」であり、基本は「服用時点が同一であるもの」をまとめて1剤として算定する、と整理されています。
ここで重要なのは、薬の“品目数”ではなく、“服用時点(飲むタイミング)”で束ねる発想です。例えばA錠とB錠がどちらも「1日3回毎食後」なら、2種類でも服用時点が同一なので1剤として扱います(薬袋を分けたとしても、1剤の考え方は変わりません)。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/84c052f950e48e5427c170b798119d09b120f2f7
さらに通知では「服用時点が同一である薬剤は、投与日数にかかわらず1剤」と明記されています。つまり、同じタイミングでも「14日分」と「30日分」が混在していても、1剤カウントそのものは“日数で分裂しない”のが原則です。
一方で、点数表(薬剤調製料の注)には「内服薬(浸煎薬及び湯薬を除く)は1剤につき24点、ただし4剤以上は算定しない」といった上限も示されます。ここは“1剤の考え方”とは別レイヤーで、算定上の上限として押さえる必要があります。
「1調剤」は、言葉どおり“調剤行為ごとの単位”として使われる場面が多く、内服薬でも「内服用滴剤」は1調剤が単位になる、と点数表・通知で整理されています。
また、外用薬は「1調剤につき10点」と記載され、投与日数にかかわらず1調剤で数えるのが基本です(ただし4調剤以上は算定しない)。このように、内服薬=1剤、外用薬=1調剤、という大枠をまず固定すると、迷いが減ります。
浸煎薬・湯薬も「1調剤につき」で数える設計です。特に湯薬は投薬日数に応じて点数が変わる(例:7日分以下190点、29日分以上400点など)ため、日数とセットで“調剤単位”を管理する必要があります。
実務上のコツは、レセコンや監査時に「これは剤数(1剤)で追うのか、調剤数(1調剤)で追うのか」を最初に決め、処方入力・薬袋設計・一包化などの作業を後追いで合わせることです。単位の取り違えは、現場感覚だけで処理すると起きやすいので、点数表の表記(“1剤につき”“1調剤につき”)を最優先の判断材料にします。
「服用時点が同一なら1剤」という原則には、通知で具体的な“みなし”と“例外”が列挙されています。まず“みなし”として、食事を目安にする服用時点は「食前・食後・食間」の3区分で扱い、「食直前」「食前30分」なども調剤料算定上は「食前」とみなして1剤として扱う、と明示されています。
この“みなし”は意外に効きます。たとえば医師が「食直前」「食前30分」と書き分けた処方を見て、現場で「服用時点が違うから別剤では?」と感覚的に分けてしまうと、通知の整理とズレる可能性があります(もちろん処方意図としての違いがある場合は、疑義照会・服薬指導上の整理が必要です)。算定は算定、服薬支援は支援、と頭の中でレイヤーを分けるのが安全です。
次に“例外”です。通知では、服用時点が同一でも別剤として算定できる場合として、少なくとも以下を挙げています。
・配合不適など調剤技術上の必要性から個別に調剤した場合
・内服用固形剤(錠剤、カプセル剤、散剤等)と内服用液剤の場合
・内服錠とチュアブル錠、舌下錠などのように服用方法が異なる場合
この例外の実務的なポイントは、「なぜ別剤にしたのか」を説明できる状態にしておくことです。監査や返戻対応の場面では、単に“薬袋を分けたから別剤”では根拠になりにくく、通知が挙げる理由(配合不適・剤形差・服用方法差)と結びつけて説明できるかが効きます。
さらに通知では「同一有効成分で同一剤形の薬剤が複数ある場合は、その数にかかわらず1剤」とあります。銘柄違い・規格違い等が絡む処方で、つい“品目が複数だから複数剤”と誤認しないよう、成分・剤形ベースで見直す視点が重要です。
意外と混乱が起きる代表が「内服用滴剤」です。点数表の注では、内服用滴剤を調剤した場合は「1調剤につき10点」とされ、内服薬であっても“1剤”ではなく“1調剤”の土俵に乗ることが明確に示されています。
通知側でも、内服用滴剤は「投薬日数にかかわらず、1調剤につき所定点数を算定する」としたうえで、内服用滴剤の定義(内服用の液剤で、1回の使用量が極めて少量で、スポイト・滴瓶等により分割使用するもの)まで言及しています。つまり、剤形の見た目が“液”だからといって一律に滴剤扱いではなく、使用量や投与形態のイメージも踏まえて整理されている点が、実務の判断に役立ちます。
外用薬は「1調剤につき10点」で、投与日数にかかわらず1調剤で数えるのが基本です。しかも「同一有効成分で同一剤形の外用薬が複数ある場合、その数にかかわらず1調剤として取り扱う」と通知にあり、ここも“数”ではなく“成分・剤形”の視点が繰り返し登場します。
なお、外用薬であっても、麻薬・向精神薬・覚醒剤原料・毒薬を調剤した場合の加算は「1調剤につき」といった形で別の単位が絡むことがあります。単位が混在する処方こそ、「どの点数が“1剤”で、どの点数が“1調剤”か」を点数ごとに分解する習慣が事故防止になります。
(このセクションは、検索上位の“定義説明”だけでは拾いにくい、現場の監査・教育で効く観点を独自に整理します。)
1剤1調剤の理解が浅いと起きやすいのは、「算定単位のズレが、業務フロー全体のズレとして連鎖する」ことです。たとえば、受付時点で“本当は同一服用時点で1剤”なのに、薬袋の作りやすさで複数剤として入力し、結果として調剤料の過大計上につながる――このタイプのミスは、後から薬袋を見直しても気づきにくいのが特徴です。
逆に、過小算定もあります。服用時点が同一でも別剤にできる例外(配合不適、固形剤と液剤、服用方法が異なる等)を知らずに“全部まとめて1剤”としてしまうと、調剤技術上の必要性を伴うケースで本来の評価を取り逃がします。例外は乱用するものではありませんが、存在を知らないことが最大のリスクです。
教育の場面では、「レセ入力の操作」より先に、次のチェック観点を共有すると浸透が早いです(薬剤師・事務どちらにも効きます)。
・“1剤”は内服薬(滴剤を除く)の調剤料・薬剤料の単位
・“1調剤”は外用薬、浸煎薬、湯薬、内服用滴剤などで登場しやすい単位
・“服用時点が同一”の判断には、食前/食後/食間の「みなし」ルールがある
・同一服用時点でも別剤にできる例外がある(配合不適、剤形差、服用方法差)
また、監査対応の観点では「根拠が通知にあるか」を即答できるようにしておくと強いです。現場では経験則で判断しがちですが、通知に“みなし”や“別剤の条件”が文章で書かれている以上、そこに立ち戻れる体制が最も再現性の高い防衛策になります。
参考:1剤の定義、服用時点の“みなし”、別剤の例外など(通知の該当箇所の一次情報)
厚生労働省「別添3 調剤報酬点数表に関する事項」(PDF)
参考:薬剤調製料(内服薬は1剤、外用薬は1調剤、点数と上限など)を条文形式で確認
調剤診療報酬点数表「01 薬剤調製料」