GLP受容体作動薬の種類と一覧:特徴比較

現在使用可能なGLP-1受容体作動薬の種類と特徴を詳しく解説。各薬剤の効果や副作用、適応症について医療従事者向けに網羅的にまとめました。どの薬剤を選択すべきでしょうか?

GLP受容体作動薬種類一覧

GLP-1受容体作動薬の概要
💊
2型糖尿病治療薬

血糖コントロールと体重減少効果を併せ持つ

📊
多様な製剤

注射薬から経口薬まで選択肢が豊富

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新規薬剤の登場

GIP/GLP-1デュアルアゴニストも利用可能

GLP受容体作動薬の基本分類と作用機序

GLP-1受容体作動薬は、消化管から分泌されるインクレチンホルモンであるGLP-1の作用を模倣する薬剤群です。天然のGLP-1は血中半減期が約2分と極めて短いため、DPP-4酵素による分解を受けにくく、より長時間作用するよう化学修飾された製剤が開発されています。

 

これらの薬剤は以下の多面的な作用を示します。

  • 血糖依存性インスリン分泌促進:血糖値上昇時のみインスリン分泌を刺激
  • グルカゴン分泌抑制:高血糖時のグルカゴン分泌を抑制し血糖上昇を防止
  • 胃排出遅延:消化管の動きを遅くし満腹感を持続
  • 食欲抑制:脳の満腹中枢に直接作用し食事摂取量を減少

作用時間により短時間作用型と長時間作用型に分類され、投与方法も注射薬から経口薬まで多様な選択肢が存在します。

 

注射製剤GLP受容体作動薬の種類と特徴

現在臨床で使用可能な注射製剤のGLP-1受容体作動薬は、作用時間と投与頻度により以下のように分類されます。
短時間作用型(1日2回投与)

  • バイエッタ(エキセナチド):半減期2.4時間、血糖コントロール効果+
  • リキスミア(リキシセナチド):短時間作用型、食前投与

中時間作用型(1日1回投与)

  • ビクトーザ(リラグルチド):半減期13時間、血糖コントロール効果++、薬価8,434円/キット

長時間作用型(週1回投与)

  • トルリシティ(デュラグルチド):半減期4.7日、血糖コントロール効果+++、薬価2,749-5,498円/キット
  • オゼンピック(セマグルチド):半減期7日、血糖コントロール効果++++、薬価11,151円/キット
  • ウゴービ(セマグルチド)肥満症治療薬として承認、薬価1,923-11,009円/キット

特にセマグルチドは、52週の臨床試験においてHbA1cを約1.8%低下させ、体重を約4.5kg減少させる高い効果が報告されています。週1回投与のため患者のアドヒアランス向上も期待できます。

 

肥満症治療薬に関する詳細情報
厚生労働省 GLP-1受容体作動薬の適正使用について

経口薬リベルサスの特徴と使用法

2021年に登場したリベルサス(セマグルチド経口薬)は、世界初の経口バイオ医薬品として画期的な製剤です。注射への抵抗感がある患者にとって重要な治療選択肢となっています。

 

リベルサスの特徴

  • 有効成分:セマグルチド
  • 用量:3mg、7mg、14mgの3規格
  • 薬価:139.6円/錠(3mg)、325.7円/錠(7mg)、488.5円/錠(14mg)
  • 週1回注射薬と同等の超持効性を経口投与で実現

吸収促進技術SNAC
リベルサスの成功の鍵は、経粘膜吸収促進剤「サルカプロザートナトリウム(SNAC)」の配合にあります。錠剤の約80%をSNACが占める特殊な組成により、通常は消化管で分解されるペプチド医薬品の胃での吸収を可能にしています。

 

特殊な服薬指導が必要

  • 起床時の絶食状態で服用
  • 服用後30分以上の絶食が必要
  • 飲水量は120mL以下に制限
  • 飲料のpHが吸収に影響するため水以外は禁止

これらの条件を遵守することで、注射薬と同等の治療効果を期待できます。

 

経口GLP-1受容体作動薬の詳細
日本薬学会 リベルサス®の開発とSNAC技術

最新GIP/GLP受容体デュアルアゴニストの効果

2023年4月に発売されたマンジャロ(チルゼパチド)は、GLP-1受容体とGIP受容体の両方に作用するデュアルアゴニストとして注目されています。従来のGLP-1受容体作動薬を上回る効果が期待される最新の薬剤です。

 

マンジャロ(チルゼパチド)の特徴

  • 半減期:5日(週1回投与)
  • 血糖コントロール効果:+++++(最高レベル)
  • 用量:2.5mg、5mg、7.5mg、10mg、12.5mg、15mgの6規格
  • 薬価:1,924-11,544円/キット

ゼップバウンド(肥満症治療薬)
同じチルゼパチドを用いた肥満症治療薬として、ゼップバウンドも承認されています。薬価は3,067-11,242円/キットで設定されています。

 

デュアルアゴニストの優位性
GIPとGLP-1の相乗効果により、従来のGLP-1受容体作動薬単独療法と比較して。

  • より強力な血糖降下作用
  • より大きな体重減少効果
  • 心血管保護効果の増強

76試験のネットワークメタ解析では、チルゼパチドがプラセボと比較して最も大きなHbA1c低下効果を示すことが確認されています。

 

将来の展望
現在臨床開発中の新規薬剤として。

  • オルフォルグリプロン(低分子経口薬)
  • ダヌグリプロン(低分子経口薬)
  • レタトルチド(GLP-1/GIP/グルカゴン三重作動薬)
  • カグリリンチド(アミリン受容体作動薬との併用療法)

これらの開発により、さらなる個別化治療の確立が期待されています。

 

GLP受容体作動薬選択における臨床的考慮点

適切なGLP-1受容体作動薬の選択には、患者の病態、ライフスタイル、経済的要因を総合的に考慮する必要があります。

 

薬剤選択の要因
投与頻度による選択

  • 日1回投与希望:ビクトーザ、リベルサス
  • 週1回投与希望:トルリシティ、オゼンピック、マンジャロ
  • 注射回避希望:リベルサス(経口薬)

治療目標による選択

  • 血糖コントロール重視:マンジャロ、オゼンピック
  • 体重減少重視:ウゴービ、ゼップバウンド
  • 心血管保護:セマグルチド、リラグルチド

副作用プロファイル
主な副作用として消化器症状(吐き気、下痢、便秘)が挙げられ、治療開始初期に多く認められます。重篤な副作用として急性膵炎や胆道系疾患の報告もあるため、定期的な経過観察が必要です。

 

経済性の考慮
薬価は製剤により大きく異なり(139.6円/錠から11,544円/キットまで)、患者の経済状況も選択要因となります。

 

腎機能への影響
最近の研究では、GLP-1受容体作動薬がDPP-4阻害薬やSGLT-2阻害薬と比較して優れた腎保護効果を示すことが報告されており、糖尿病性腎症を有する患者での積極的使用が推奨されています。

 

体重減少とは独立した効果
興味深いことに、GLP-1受容体作動薬は体重減少とは関係なくインスリン感受性を改善することが確認されており、単純な減量薬以上の代謝改善効果を有しています。

 

適正使用の重要性
厚生労働省からの通知にもあるように、GLP-1受容体作動薬は2型糖尿病治療薬として承認されており、美容目的での適応外使用は避けるべきです。適切な適応患者への使用と十分な経過観察が求められます。

 

GLP-1受容体作動薬に関する最新ガイドライン
日本糖尿病学会 インスリン製剤・GLP-1受容体作動薬一覧表
現在のGLP-1受容体作動薬は多様な選択肢を提供し、個々の患者に最適化された治療を可能にしています。新規薬剤の登場により、今後さらに治療選択肢が拡大することが期待されます。