コリン作動薬の種類と一覧
コリン作動薬の基本分類
🔄
間接型作動薬
コリンエステラーゼ阻害により作用する薬剤群
⚕️
受容体別分類
ムスカリン受容体・ニコチン受容体への選択性
コリン作動薬の直接型薬剤一覧
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直接型コリン作動薬は、アセチルコリン受容体に直接結合して副交感神経様作用を示す薬剤群です。これらの薬剤は主にムスカリン受容体に作用し、臓器別に異なる効果を発揮します。
コリンエステル系薬剤 🧪
- ベタネコール塩化物(ベサコリン散)
- M3受容体選択性
- 膀胱収縮作用による排尿障害治療
- 薬価:8.8円/g
- カルバコール
- 全ムスカリン受容体およびニコチン受容体の一部に作用
- 緑内障治療に使用
- 長時間作用型
- メタコリン
- 全ムスカリン受容体に作用
- 気管支喘息の診断に使用
植物アルカロイド系薬剤 🌿
- ピロカルピン塩酸塩(サンピロ点眼液)
- M3受容体選択性
- 緑内障・高眼圧症治療
- 薬価:94.8-141.8円/瓶
- アレコリン
- M1、M2、M3受容体に作用
- 研究用途が中心
- ムスカリン
- ムスカリン受容体の名称由来物質
- 現在は臨床使用されない
これらの直接型薬剤は、コリンエステラーゼによる分解を受けやすいため、一般的に作用時間が短いという特徴があります。ただし、植物アルカロイド系は分解されにくく、比較的長時間作用を示します。
コリン作動薬の間接型薬剤一覧
間接型コリン作動薬は、コリンエステラーゼを阻害することでアセチルコリンの分解を防ぎ、結果的にコリン作動性作用を増強する薬剤群です。可逆的阻害薬と不可逆的阻害薬に大別されます。
可逆的コリンエステラーゼ阻害薬 🔄
不可逆的コリンエステラーゼ阻害薬 ⚠️
- エコチオパート
- 緑内障治療用点眼薬
- 長期間作用持続
- イソフルロフェート
- 有機リン系化合物
- 現在は臨床使用されない
これらの間接型薬剤は、作用時間が長く、全身への影響も大きいため、使用時には細心の注意が必要です。特に高齢者では、コリン作動性クリーゼのリスクが高まります。
ムスカリン受容体作動薬の特徴
ムスカリン受容体は副交感神経系の主要な受容体であり、M1からM5までのサブタイプが存在します。臨床的に重要なのはM1、M2、M3受容体です。
M1受容体(神経型) 🧠
- 主な分布:中枢神経系、胃
- 生理作用。
- 学習・記憶の促進
- 胃酸分泌促進
- 認知機能改善
- 関連薬剤。
- アレコリン(M1選択性)
- 認知症治療薬の多くがM1受容体を介して作用
M2受容体(心臓型) ❤️
- 主な分布:心臓、平滑筋
- 生理作用。
- 心拍数減少(陰性変時作用)
- 心収縮力低下(陰性変力作用)
- 房室伝導抑制
- 臨床的意義。
- 過度のM2刺激により徐脈や房室ブロックのリスク
- 心疾患患者では特に注意が必要
M3受容体(腺・平滑筋型) 💧
- 主な分布:外分泌腺、平滑筋、内皮細胞
- 生理作用。
- 唾液・涙腺分泌促進
- 膀胱収縮・排尿促進
- 気管支収縮
- 消化管蠕動促進
- 瞳孔収縮
- 代表的薬剤。
- ベタネコール(M3選択性)
- ピロカルピン(M3選択性)
- セビメリン(エボザック)
ムスカリン受容体作動薬の選択においては、目的とする臓器への選択性と副作用プロファイルを十分に検討する必要があります。特にM2受容体への作用による循環器系への影響は、高齢者や心疾患患者において重要な考慮事項となります。
コリン作動薬の副作用と注意点
コリン作動薬の使用において最も重要な副作用は、コリン作動性クリーゼです。これは体内のアセチルコリンが過剰になることで生じる重篤な状態で、適切な対処が必要です。
コリン作動性クリーゼの症状 ⚠️
- 初期症状。
- 下痢、腹痛
- 縮瞳
- 呼吸困難
- 発汗過多
- 唾液分泌過多
- 徐脈
- 進行期症状。
- 線維束攣縮
- 意識障害
- 呼吸不全
- 痙攣
- 筋力低下
薬剤別副作用プロファイル 📊
| 薬剤名 |
主要副作用 |
頻度 |
重篤度 |
| ベタネコール |
下痢、腹痛、発汗 |
高 |
軽~中 |
| ドネペジル |
下痢、嘔気、不眠 |
中 |
軽~中 |
| ジスチグミン |
コリン作動性クリーゼ |
低 |
重篤 |
| ピロカルピン |
縮瞳、頭痛、発汗 |
中 |
軽 |
高リスク患者群 👥
- 高齢者(60歳以上)
- 薬物代謝能力の低下
- 多剤併用による相互作用
- 脱水リスクの増大
- 心疾患患者
- M2受容体刺激による不整脈リスク
- 徐脈による血行動態悪化
- 呼吸器疾患患者
- 気管支収縮による呼吸困難
- 分泌物増加による気道閉塞
対処法と予防策 🛡️
- 即座の対応。
- 薬剤投与の即座の中止
- アトロピン硫酸塩水和物の投与(拮抗薬)
- 重篤例では人工呼吸管理
- 予防的モニタリング。
- 定期的な症状聞き取り
- コリンエステラーゼ値の測定
- 用量調整の慎重な実施
臨床現場では、患者・家族への十分な説明と、前駆症状出現時の早期受診指導が極めて重要です。特に在宅医療では、訪問時の詳細な観察と家族への教育が欠かせません。
臨床現場でのコリン作動薬選択指針
実際の臨床現場において、コリン作動薬の選択は患者の病態、年齢、併存疾患、そして期待される治療効果を総合的に評価して決定する必要があります。ここでは、実践的な選択指針を疾患別・患者特性別に整理します。
疾患別選択指針 🎯
認知症治療
- 軽度アルツハイマー型認知症。
- 第一選択:ドネペジル 3mg/日から開始
- 消化器症状が強い場合:リバスチグミンパッチに変更
- 興奮・攻撃性がある場合:ガランタミンを検討
- 中等度~重度認知症。
- ドネペジル 10mg/日まで増量可能
- リバスチグミンパッチは最大18mg/日
- 併用療法(メマンチンとの組み合わせ)を検討
排尿障害治療
- 神経因性膀胱。
- 軽症:ベタネコール 15-30mg/日 分3
- 重症:ジスチグミン 5-10mg/日(慎重投与)
- 高齢者:ベタネコール低用量から開始
緑内障・高眼圧症治療
- 開放隅角緑内障。
- ピロカルピン点眼液 1-4% 1日3-4回
- 他剤との併用により眼圧下降効果を増強
- 夜間視力低下に注意
患者特性別選択指針 👤
高齢者(75歳以上)
- 開始用量は通常量の1/2から
- 2週間ごとの症状評価
- 脱水・電解質異常の定期監視
- 多剤併用による相互作用チェック
肝機能障害患者
- 肝代謝型薬剤(ドネペジル等)は用量調整
- 腎排泄型薬剤(ネオスチグミン等)を優先
- Child-Pugh分類による投与可否判定
腎機能障害患者
- eGFR 30-60: 用量調整または投与間隔延長
- eGFR <30: 原則として使用禁忌
- 透析患者では除去率を考慮した投与設計
薬物相互作用への対策 🔄
- CYP2D6阻害薬との併用。
- パロキセチン、フルオキセチン等のSSRI
- ドネペジル、ガランタミンの血中濃度上昇リスク
- 抗コリン薬との併用。
- 相互に作用が相殺される
- 認知症患者での過鎮静リスク
- β遮断薬との併用。
- 相加的な徐脈作用
- 心電図モニタリングが必要
治療効果判定指標 📈
- 認知症治療。
- MMSE、HDS-Rスコアの改善
- ADL(日常生活動作)の維持・改善
- 介護負担度の軽減
- 排尿障害治療。
- 残尿量の減少(超音波測定)
- 排尿回数・尿失禁の改善
- QOLスコアの向上
- 緑内障治療。
- 眼圧値の目標達成(通常20%以上の下降)
- 視野欠損の進行抑制
- 眼圧日内変動の安定化
この選択指針に基づいた個別化治療により、コリン作動薬の有効性を最大化し、副作用リスクを最小化することが可能になります。定期的な治療効果判定と安全性評価を通じて、患者にとって最適な薬物療法を提供することが重要です。
コリンエステラーゼ阻害薬による治療効果判定と安全性評価に関する詳細情報
https://www.jstage.jst.go.jp/article/chiikiigaku/37/8/37_29/_pdf/-char/en
日本版抗コリン薬リスクスケールとコリン作動性薬剤の評価方法
https://www.jsgp.or.jp/wp/wp-content/themes/jsgp/assets/pdf/7-4_2_%E5%AF%84%E7%A8%BF_%E8%8C%82%E6%9C%A8%E5%85%88%E7%94%9F.pdf
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