ビクトーザ(一般名:リラグルチド)は、2型糖尿病に対して1日1回の皮下注で使用するGLP-1受容体作動薬です。添付文書情報として、通常成人は「0.9mgを維持用量」とし、朝または夕に1日1回皮下注射します。ただし初回は1日1回0.3mgから開始し、1週間以上の間隔で0.3mgずつ増量します。0.9mgで効果不十分な場合は、1週間以上の間隔で0.3mgずつ、最高1.8mgまで増量可能です。
医療従事者が患者指導で最初に押さえたいのは、「増量の目的は効かせるためだけではなく、消化器症状(悪心など)を出にくくするためでもある」という説明の仕方です。用量設定を“我慢の期間”にしないために、導入期は食事量・水分摂取・便通状況の聞き取りをセットにして、症状が強い場合は増量を急がない(あるいは一段階戻す)という共有が役立ちます(実際の調整は主治医判断)。副作用頻度として悪心、便秘、下痢、嘔吐、腹痛などが挙がることは、添付文書情報にも整理されています。
併用療法では、スルホニルウレア剤やインスリン製剤と併用すると低血糖リスクが増えるおそれがあるため、減量検討や血糖モニタリングが重要、という基本線をチームで統一します。さらに、SU剤と本剤の投与タイミングを朝に揃えると低血糖が起こりやすくなることがある、という記載は、外来指導の実務上かなり有用です。
参考:添付文書相当(用法用量・併用時の低血糖注意など)
KEGG医薬品情報:ビクトーザ(禁忌、用法用量、重要な基本的注意、相互作用)
ビクトーザの自己注射でトラブルになりやすいのは、薬液そのものより「針の取り扱い」と「空打ち(プライミング)」です。ペン型注入器では、針をゴム栓にまっすぐ刺して止まるまで回して装着し、空打ち目盛に合わせて気泡を上に集め、薬液が出ることを確認してから本注射に進む、という流れが図示されています。
現場で起きやすい失敗は次のとおりです(患者の“あるある”として先回りして説明すると再受診が減ります)。
参考)https://shibuya-hifuka.jp/sidemenu/Victoza_HowtoUse_Digest.pdf.coredownload.inline.pdf
参考)ビクトーザは1本何日分?
「針は毎回交換」が原則です。針の使い回しは感染リスクや注射時の痛み増大、皮膚トラブルにつながりやすく、医師は基本的に1回ごとの交換を推奨する、という整理は患者への説明に使いやすい表現です。
参考)インスリン注射器の使い方と廃棄方法|衛生管理の基本 - 神戸…
また、使用済み針の処理は、頑丈な容器(専用回収容器や厚手ボトル等)に入れて医療機関で回収、という運用が望ましい、という実務的提案があります。
参考)使用済み針は、どのような処理が望ましいと思いますか?
参考:針の衛生管理・廃棄(患者指導の言い回しの参考)
糖尿病ネットワーク:使用済み針の処理(回収の考え方)
保管方法は、患者の生活動線(冷蔵庫、外出、職場保管)に直結するため、医療者側が具体的に説明しないと事故が起きます。患者向け情報では、使用開始前は凍結を避けて冷蔵庫内(2〜8℃)に保存し、使用開始後は冷蔵庫に入れず光を避けて室温で保管し、30日以内に使用する、と明記されています。
同様に、未開封は凍結を避けて2〜8℃、開封後(使用開始後)は室温で30日という整理は、医療者向けのまとめでも確認できます。
意外と見落とされるのが「0.3mgで計算上は1本が長持ちするが、使用開始後30日を超えて使えない」という点です。ノボノルディスクの患者向け資材では、0.3mg使用だと42日で1本計算になり得る一方で、使用開始後30日を超えて使用できない、と注意喚起されています。
参考)https://www.novonordisk.co.jp/content/dam/nncorp/jp/ja/products/how-to/injection/victoza/pdfs/AID6658victoza_what_kind_of_medicine.pdf
この一文は、患者が節約目的で“長期使用”を試みるのを止める根拠になり、特に指導が必要なポイントです。
保管指導の実務Tips(外来での声かけ例)。
参考)くすりのしおり : 患者向け情報
参考:患者向け「保管・期限」が明記された情報(そのまま渡しやすい)
くすりのしおり(ビクトーザ):保存(2〜8℃、使用開始後は室温・30日以内)
打ち忘れは、患者の罪悪感を刺激しやすいテーマなので、「安全のためのルール」を短く提示し、追加の自己判断(まとめ打ち)を止める言い方が重要です。ある医療機関の説明では、数時間以内なら注射、それ以上経過していればその日は注射せず翌日に1日分を注射し、2日分を一度に注射してはいけない、と案内されています。
また同ページには、次の投与は8時間以上あけて行うよう指導、という記載があり、スケジュールを立て直す際の具体的な安全幅として使えます。
ただし、打ち忘れ対応は施設・医師の方針や患者背景(腎機能、併用薬、低血糖既往)で微調整が必要です。したがって、現場の標準化としては「打ち忘れに気づいたら、自己判断で2回分を打たず、当日分をどうするかは“何時間たったか”を伝えて相談する」という一本化が事故予防に効きます(患者の行動設計として)。
参考)ビクトーザ – Welcome to 佐野内科ハ…
患者説明の文章例(口頭でも紙でも使える形)。
検索上位の“使い方”記事は、注射手技・副作用・保管を網羅していても、「0.3mg導入=本来は増量前提」という設計思想まで言語化していないことがあります。導入量の0.3mgは、単に弱い量ではなく、増量を前提にした“慣らし”の位置づけで、患者が「ずっと0.3mgで節約」へ走ると、効果不足だけでなく、使用開始後30日以内という使用期限のルールとも衝突しやすくなります(計算上は0.3mgで長く持つが、30日超は不可)。
ここを説明する時は、薬理や理屈だけで押すより、現場の誤解パターンに沿って言い換える方が伝わります。例えば、
参考)医療用医薬品 : ビクトーザ (ビクトーザ皮下注18mg)
さらに医療者向けの実務ポイントとして、残量不足で当日分が打てない事態を避けるため、「次回受診までに何本必要か」を用量(0.6/0.9/1.8mgなど)と30日ルールから逆算して説明する運用が有効です。ノボノルディスク資料には用量の増量ステップ(0.3mg→0.6mg→0.9mg等)がまとまっており、患者と一緒に“見える化”して確認しやすいです。