超音波法で骨密度を測定しても、病名が「骨粗鬆症」でなければ保険算定が全額査定されます。

超音波骨密度測定(QUS法)の保険点数は、D217骨塩定量検査の区分「4 超音波法」として80点に設定されています。これは令和6年版の診療報酬点数表でも変更はなく、現行の区分の中で最も低い点数です。
各測定法の点数を整理すると、次のようになります。
| 測定法 | 保険点数 | 主な測定部位 |
|---|---|---|
| DEXA法(腰椎撮影) | 360点 | 腰椎・大腿骨 |
| DEXA法(大腿骨同時加算) | +90点 | 腰椎+大腿骨同日算定 |
| REMS法(腰椎) | 140点 | 腰椎・大腿骨 |
| REMS法(大腿骨同時加算) | +55点 | 腰椎+大腿骨同日算定 |
| MD法・SEXA法等 | 140点 | 中手骨・前腕骨など |
| 超音波法(QUS法) | 80点 | 踵骨・脛骨など |
患者負担に換算すると、超音波法80点は「1点=10円」の計算で800円(3割負担なら240円、1割負担なら80円)です。これはコンビニのコーヒー1杯程度の負担額と同水準です。
算定に際して必須となる要件は明確に定められています。骨塩定量検査(超音波法を含む)は、「骨粗鬆症の診断及びその経過観察の際のみ」算定できます。つまり、骨量低下や骨折リスクのスクリーニング目的だけでは算定できません。これが条件です。
レセプト上で査定されやすい代表的なパターンは、病名欄に「骨密度低下」や「骨量減少」のみが記載されているケースです。「骨粗鬆症(疑い含む)」の病名が紐付いていることが最低条件となります。担当事務スタッフへの周知も含めて、病名管理を徹底することが大切です。
参考リンク(D217骨塩定量検査の点数・算定条件・通知の全文)。
今日の臨床サポート|D217 骨塩定量検査(算定要件・通知・点数全文)
超音波法(QUS法)は、踵骨や脛骨に超音波を照射し、骨内を伝わる音速(SOS)や超音波減衰係数(BUA)から骨の硬さや強度を間接的に推定する方法です。放射線被曝がゼロであることが最大の特徴で、電源があれば小型の装置でも測定できるため、地域健診や整形外科以外の診療所でも広く導入されています。
ただし、ガイドライン上の制限は非常に重要です。QUS法は骨粗鬆症の「確定診断」にも「治療効果の判定」にも使用できません。日本骨粗鬆症学会のガイドラインでも、DXA法との相関係数は測定部位や装置によって0.35〜0.72と幅があり、判定精度の信頼性に限界があるとされています。QUS法はあくまでスクリーニング専用です。
具体的な臨床場面で困るのは、「QUS法で正常範囲と出たから大丈夫」と患者が思い込んでDXA精密検査を拒否するケースです。QUSと腰椎DXAの結果が一致しない例は珍しくなく、QUS正常でもDXAで骨粗鬆症と診断される患者が存在します。意外ですね。
この「見逃しリスク」を防ぐため、QUS法で測定した患者に対して結果を説明する際は、「この検査はあくまで骨の状態の目安を調べるものです。確定診断が必要な場合は、X線を使った精密検査(DXA法)をご紹介します」という一言を添えることが現場での標準対応として推奨されます。DXA対応施設への紹介ルートをあらかじめ整備しておくことが、スクリーニング陽性患者の見逃し防止に直結します。
参考リンク(QUS法の原理・ガイドライン上の位置づけ・保険適用の解説)。
日本シグマックス整形外科医療情報サイト|QUS(定量的超音波測定法)とは
令和8年度の診療報酬改定は、超音波骨密度を含む骨塩定量検査の算定ルールを大きく変えました。これは、医療機関の収益に直接影響する内容です。
改定の骨子は次の1点に集約されます。
この改定の背景は、学会ガイドラインとの乖離です。「骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2025年版」では、一般的に治療開始1年後、治療法が確立された後は1年以上の間隔でよいとされています。現行の「4月に1回」はガイドラインより頻繁であり、今回の改定はそれを是正するものです。
医療機関の経営上の影響は無視できません。例えば、骨粗鬆症で治療中の患者が100人いる診療所を想定した場合、治療開始から1年以上経過している「安定期患者」が50人いたとすると、その50人分の骨密度検査の算定回数が年3回から年1回に減少します。超音波法80点で計算しても、50人×80点×2回分=8,000点(8万円相当)の診療報酬が年間で減少する計算になります。骨密度検査数の多い施設には痛いですね。
この改定に対応するために重要なのは、例外条件(ア〜カ)を正確に把握し、該当患者には引き続き4月に1回の算定根拠を適切にカルテに記録しておくことです。「骨粗鬆症治療開始日」や「新規骨折の発生日」「新たな危険因子の追加日」などをカルテに明記する習慣が、査定リスクを減らします。
参考リンク(令和8年度改定・骨塩定量検査の見直し内容の詳細解説)。
整形外科コンサルタント解説|令和8年度診療報酬改定 骨塩定量検査の見直しについて
令和6年度の診療報酬改定で新たに保険収載されたREMS法(Radiofrequency Echographic Multi-Spectrometry:超音波多周波数エコグラフィー)は、超音波を使いながらも腰椎と大腿骨を測定できる新しい技術です。QUS法との違いを理解しておくことは、今後の装置選定や算定方針に直結します。
REMS法の保険点数は「腰椎:140点」で、同日に大腿骨も測定した場合は「大腿骨同時検査加算:55点」を加算できます。つまり両部位を同日測定すると195点になります。従来の超音波法(80点)と比べると2.4倍以上の点数です。これは大きな差ですね。
REMS法がQUS法と決定的に異なる点は、腰椎と大腿骨という「骨粗鬆症で骨折リスクが最も高い部位」を測定できることです。QUS法は踵骨や脛骨など末梢骨のみが対象であり、腰椎・大腿骨の評価は行えません。
ただし、REMS法の臨床的位置づけはまだ発展途上です。令和6年時点では、ガイドライン上REMS法は「DXAの補助的位置づけ」にとどまっており、確定診断の主たる根拠として使用することには慎重な姿勢が求められます。つまりREMS法で陽性でも、必要に応じてDXA法での確認が求められます。
装置の選択を検討している施設には、次の観点から整理することをおすすめします。
参考リンク(REMS法の特徴・令和6年保険収載の算定点数・DXAとの比較)。
東洋メディック|2022年度診療報酬改定:骨塩定量検査の変更について(REMS法収載の経緯・EchoSシステム)
実務で見逃されやすいのは「検査頻度の管理」と「算定可能病名の確認」の2点です。どちらも査定の直接原因になります。
まず検査頻度の管理について。骨塩定量検査は「検査の種類にかかわらず」患者1人につき1年に1回(例外時は4月に1回)という制限があります。超音波法とDXA法を別々に算定できると思っている医療事務担当者も少なからずいますが、それは誤りです。超音波法を行った月に同じ患者にDXA法を施行しても、片方しか算定できません。つまり同月に2法は算定不可です。
次に、レセプト病名の管理について。前述のとおり、骨塩定量検査は「骨粗鬆症の診断及びその経過観察」にのみ算定できます。しかし実際の現場では、患者が「健診で骨密度が低いと言われた」という理由で来院し、病名欄に「骨量低下」や「健診異常精査」のみで請求されるケースがあります。これは審査で通らない可能性があります。
健診後の精査来院であれば、DXA法の結果を受けて「骨粗鬆症(疑い)」という病名を付記するタイミングが重要です。来院当日に超音波法で測定しつつ「骨粗鬆症の診断目的」という位置づけであれば算定根拠になります。「骨量低下」だけで請求するのは避けるべきです。
令和8年度改定後の実務対応として、医療事務と医師の間で確認すべき項目をまとめると、次の3点に集約されます。
実際の査定事例を踏まえると、「4月に1回の制限を知らずに毎月算定していた」「複数の測定法を同月に算定していた」という誤算定が整形外科クリニックで散見されます。事務担当者が改定内容を十分把握できていないことが根本原因として挙げられます。年度改定後は必ず院内勉強会で算定ルールを共有することを強くおすすめします。
厚生労働省が公表している「令和8年度診療報酬改定の個別事項」の骨密度検査に関するページを定期的に参照することが、算定ミスを防ぐ最も確実な方法です。
参考リンク(骨塩定量検査のレセプト算定・査定事例・骨粗鬆症病名管理の解説)。
しろぼんねっと|令和6年 D217 骨塩定量検査(医科診療報酬点数表・通知・算定Q&A)
参考リンク(令和8年度改定の骨密度検査に関する厚生労働省公式資料)。
厚生労働省|中医協総会(第638回)個別事項(その20)骨粗鬆症と骨密度検査(PDF)