調剤薬局の「配達=違法」と断定されがちですが、行政整理としては、服薬指導後の薬剤配送は患者の了承を得たうえで、一定の条件の範囲で実施可能とされています。
ポイントは「配送できる/できない」ではなく、薬剤師が患者へ直接授与したのと同視できる程度に、品質保持と本人授与の確実性を担保できているか、という設計思想です。
厚労省の事務連絡では、オンライン服薬指導後に薬局の薬剤師が調剤した薬剤を、品質を確保した状態で速やかに患者に届けさせること、そして郵送・配送を行う場合は手順を定め必要な措置を講ずることが示されています。
参考)https://www.mhlw.go.jp/content/000998582.pdf
さらに、配送後に確実に患者に授与されたことを電話等で確認する(配達記録やアプリ等による受領確認も含む)ことまで明記されており、ここが現場で抜けやすい「違法リスクの芯」になります。
「配送は便利だから」と仕組みだけ先行させ、受領確認や品質管理の設計が曖昧だと、結果として“薬を渡したことになっていない”状態を作りかねません。
医療従事者向けに言い換えるなら、配送は“物流”ではなく、調剤・交付プロセスの延長として監督責任が残る業務だと理解しておくのが安全です。
参考:厚労省の事務連絡(配送の基本的考え方、受領確認、温度管理や麻薬等の取扱い、盗難紛失対策、ロッカー利用時の留意点)
https://www.mhlw.go.jp/content/000998582.pdf
違法になりやすい典型は、「服薬指導の実施」と「本人授与の確実性」が弱い運用です。
厚労省は、配送等を行う場合に、患者本人への確実な授与がなされることを確保するために手順を定めること、配送後に確実に授与されたことを確認することを求めています。
現場で事故が起きやすいのは、次のようなパターンです。いずれも“違法と評価されうる穴”が残ります。
厚労省は「受取予定日を超えて受領の確認ができない場合の運用について、事前に患者と合意を得ておくこと」や「患者との合意について記録を取っておくことが望ましい」としています。
ここは監査・指導の場面で説明責任が問われやすい部分なので、SOP(手順書)と記録様式(同意・配送方法・受領確認・未受領時対応)を一体で作っておくのが実務的です。
厚労省は、品質保持(温度管理を含む)に特別の注意を要する薬剤や、早急に授与する必要のある薬剤、麻薬・向精神薬等、毒薬・劇薬等のように流通上厳格な管理を要する薬剤については、適切な配送方法の利用、薬局従事者が届ける、来局を求める等の工夫を示しています。
つまり「すべて同じ箱で発送」ではなく、薬剤特性ごとに配送方式を分けることが、適法性と安全性の両面で重要です。
また、配送等の過程での盗難・紛失等の事故を防ぐ観点から、必要に応じて封かん等の対応を行うことも留意点として明記されています。
封かんは単なる“テープで閉じる”ではなく、開封痕跡が残る資材を使い、誰がいつ封かんしたかを作業記録に残すと、インシデント時の説明が通りやすくなります。
宅配ロッカーの利用も「考えられる」とされますが、ロッカー内の環境(清潔性、温度、湿度等)を考慮し、適切なロッカーを使用することが求められます。
ロッカーは便利な一方で、夏季の温度上昇や受領遅延が起きやすいので、薬剤ごとの可否判断(例えば「遮光」「高温注意」「冷所」表示など)を“配送可否マトリクス”として薬局内に持つと運用が安定します。
麻薬、向精神薬、覚醒剤原料を配送等する場合について、厚労省は盗難・紛失等の事故防止の観点から、麻薬小売業者等の責任として患者へ確実に授与し、患者が受け取ったことを必ず確認することを求めています。
この「必ず確認」という強い表現は、一般薬よりも運用ハードルが高いことを示しており、通常の宅配フローを流用すると一気に危険になります。
医療現場の感覚では、麻薬等は「薬歴・帳簿」や「在庫管理」を重視しがちですが、配送を絡めると“最終的な受渡しの確実性”が法令実務上の焦点になります。
具体的には、受領者の特定(本人か、事前同意のある代理受領者か)、未受領時の即時対応(回収・再交付・関係者連絡)、配送委託先との役割分担(受領サイン、本人確認の扱い)を手順書で固めるのが安全です。
「誰が持っていくか」だけでなく、「受け取ったことをどう証明し、どう記録し、未受領をどう扱うか」までをセットで設計しないと、違法性以前に事故リスクが高くなります。
検索上位では「合法か違法か」の二択に寄りがちですが、現場で差が出るのは配送後フォローの品質です(ここは医療安全・服薬アドヒアランスの領域でもあります)。
厚労省は配送後の受領確認を電話等で行うことを求めており、これは単なる形式ではなく、トラブル早期発見のチャンスとして活用できます。
例えば、受領確認の通話やメッセージを「到着しましたか?」で終わらせず、短時間で終わるチェック項目にしておくと、ヒヤリ・ハットの芽が拾えます。
さらに、未受領時の運用を事前合意しておくことが求められているため、患者説明を“法令対応”で終わらせず、「受け取れないときの連絡先」「再配達の締切」「保管できない薬の扱い」まで説明すると、クレームよりも先にリスクが下がります。
医療従事者としては、配送の仕組みを「来局困難者のアクセス改善」として評価しつつ、交付の責任が弱まらないように、SOP・記録・フォローアップを三点セットで整備するのが最短ルートです。