医療従事者が「篩過(ふるい)」という言葉に触れる場面は、調剤室の粉砕・混和だけではありません。病院内製剤、注射薬の調製、医薬品製造の見学や監査対応、さらには生薬や漢方製剤の品質話題でも登場します。にもかかわらず、現場では「とりあえず茶こし」「目の細かい篩で一回通す」といった“作業”として扱われ、工程設計としては言語化されないことがあります。
まず押さえるべきは、篩過工程の定義です。日本漢方生薬製剤協会の用語では、篩過(しか)工程は「一定の大きさのものを選り分ける工程」であり、原料生薬で切度を揃える、顆粒剤などの製剤化工程で粒度を揃える場面に用いられるとされています。ここで重要なのは「工程」と明記されている点です。つまり、篩過は“後片付け”ではなく、品質を作り込む工程条件の一部として扱うべき操作です。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/45b9c82c01dbdc613ac7eea35081fe1490ccdcc8
医療現場に引き寄せると、篩過は次の2種類の目的に整理できます。
この整理ができると、篩過の設計で問うべき項目(目開き、ふるい時間、振とう条件、前処理の粉砕程度、静電気・吸湿対策)が自然に決まります。篩過は単独で完結するのではなく、粉砕・混合・造粒・乾燥など前後工程のブレを吸収または増幅し得る“調整弁”のような役割を持ちます。
参考:篩過(ふるい)の定義(篩過工程の意味)
日本漢方生薬製剤協会|篩過(しか)工程/sieving(process)
製造寄りの話に見える「整粒工程」ですが、医療従事者にとっても学びが多い領域です。なぜなら、整粒は“粒度を揃えると何が起きるか”を工程学的に説明してくれるからです。大阪府の「固形製剤:整粒工程」資料では、整粒工程は造粒品に機械的な衝撃・篩過、または人手による篩過などにより、所定の粒度分布の顆粒にする工程と説明されています。
さらに、整粒の目的として、顆粒剤では収率よく所定粒度に揃えること、打錠用顆粒では流動性・臼への充填性・圧縮成形性の向上を図ることが示されています。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/94577ce0bfb34ffc7cf50755488f867d821bacd5
この「流動性」「充填性」は、病院での自動分包機・散薬瓶からの計量・秤量、さらには患者宅での取り扱いにまでつながる概念です。粒度が不揃いだと、比重差や形状差で偏析が起きやすくなり、混和しても“見た目は混ざっているが、局所的には濃淡がある”状況が生まれます。
整粒工程の変動要因として資料に挙げられている項目は、医療現場での「なぜ再現しないのか」を説明するヒントになります。
これを病院内の篩過に置き換えると、同じ「目開き」でも、粉砕直後で帯電している、吸湿して団粒化している、混合前後で密度が変わっている、といった条件で通過性が大きく変わり得ると理解できます。つまり、篩過は“目の大きさ”だけで語ると事故ります。
参考:整粒工程における篩過と粒度分布(工程の定義と変動要因)
大阪府|バリデーションの考え方と実施例(固形製剤:整粒工程)
篩過を語るとき、臨床側では「粗い・細かい」で止まりがちですが、製造や品質管理の世界では「粒度分布」という言葉で管理します。大阪府資料でも、整粒工程の主要な品質(アウトプット)として粒度分布やかさ密度が挙げられています。
ここでのポイントは、粒度分布は“平均”ではなく“分布”で評価するということです。同じ平均粒径でも、微粉が多い・粗粒が多いでは挙動が逆になることがあります。
資料には、実例として「ふるい分け法」で粒度分布を評価し、判定基準を設定する例が示されています。例では、30号ふるい(500μm)残留10%以下、119号ふるい(125μm)通過20~50%など、複数のふるいを組み合わせて分布を規定しています。
この“複数点で縛る”考え方は、医療現場の院内製剤や粉砕散の品質確認でも応用できます。例えば「患者に飲みにくい」と言われる粉は、粗粒だけでなく微粉の比率が高く、口腔内でまとわりつく・水に浮きやすいといった要因が隠れている場合があります。
また、ふるい分けは操作条件で結果が変わりやすい検査でもあります。大阪府資料は、連続式工程であるため開始・中間・終了など時系列で採取すること、スクリーン交換や清掃があるならそのタイミングも考慮して採取する必要があると記載しています。
医療現場でここまで厳密にやることは少ないですが、「最初の数包だけ粒度が荒い」「最後の方が粉っぽい」といった現象が出るなら、同じ“時系列”の視点で原因を疑う価値があります。
篩過を“検査”として扱うか、“工程条件”として扱うかで、現場の再現性は大きく変わります。工程として扱うなら、最低限、ふるいの型番(目開き相当)、振とう時間、前処理(粉砕条件、乾燥・吸湿対策)を記録するだけでも、翌月のトラブル解析が楽になります。
篩過の現場トラブルで厄介なのが、目詰まり・固着・団粒化です。大阪府資料では、低融点成分が含まれる場合、整粒操作に伴う装置の発熱でスクリーンや回転体への固着が発生し、粒度に影響することがある、と明確に述べられています。
さらに、固着がある場合は一定処理時間または処理量で装置清掃やスクリーン交換が必要になる場合がある、と続きます。
医療現場でも構造は同じです。粉砕した錠剤の粉末は、賦形剤やコーティング片、吸湿性の成分、静電気などの影響で、ふるいの網に張り付いたり、粉が団子状になって通らなかったりします。結果として、同じ力で“押し通す”と粗粒が増え、無理に“こする”と微粉が増えるという、真逆の品質ブレが起こり得ます。篩過は「やったか/やらないか」ではなく、「どうやったか」が品質に直結します。
意外に見落とされるのが「水分」です。大阪府資料は、残留水分含量の変動により顆粒強度が変化し粒度に影響することがある、と述べています。
これを調剤に置き換えると、同じ薬を粉砕しても、保管環境や開封後の時間で吸湿状態が変わり、粉砕時の割れ方や篩過の通り方が変わる、という現象に相当します。冬と梅雨で再現性が変わるのは“手技の問題”ではなく、材料物性が動いている可能性が高いわけです。
現場での対策は、派手な設備投資よりも「判断基準の言語化」が効きます。
「ふるいは全部通せばOK」ではなく、「ふるいを通る状態に材料を整える」が工程設計の本質です。
検索上位で多いのは、篩過の定義、粒度調整、装置やメッシュの話ですが、医療従事者の実務では“記録の設計”が盲点になりやすいと感じます。ここを独自視点として掘ります。篩過は「その場の熟練」で成立しやすい一方、異動・夜勤・委託化・新人教育で一気に品質が崩れやすい作業でもあります。だからこそ、工程管理の考え方を小さく移植すると効果が出ます。
大阪府資料が示す整粒工程の考え方は、医療現場にもそのまま転用できます。たとえば、工程の稼働状況を把握するために、評価項目として選定しなかった項目を参考項目として持つことが望ましい、とされています(例:収量・収率、安息角など)。
病院でこれをやるなら、「篩過で残った割合(目視でもよい)」「粉のまとまり具合」「分包機での詰まり有無」「患者からの飲みにくさ訴え」などを“参考項目”として簡単に残す発想です。数値化できなくても、チェックボックス化するだけで改善が回り始めます。
現場向けの最低限の記録テンプレ(例)を置きます(入れ子なし)。
「書類が増える」と感じる場合は、まず“事故が起きたときに原因を戻れる情報だけ”に絞るのがコツです。篩過は小さな工程ですが、粉体は小さな差が大きな差になって返ってきます。工程の考え方を持ち込み、記録で再現性を作ることが、医療現場の篩過を一段上の品質に引き上げます。

Zxyler ステンレス製小麦粉ふるい|ベーキング専用細かいメッシュふるい|超微粉用フィルターメッシュ|丸型手持ふるい|ベーキングパウダー・小麦粉過篩ツール