偏頭痛は一次性頭痛の代表で、日常生活に大きな支障を来しうる疾患です。日本の疫学調査では、15歳以上の片頭痛有病率は疑い例を含め8.4%とされ、成人男性3.6%、成人女性12.9%という性差も示されています。男性は「少数派」に見えるため、本人も周囲も「ただの頭痛」として扱いやすく、受診の遅れにつながりやすい点が臨床上の落とし穴です。
症状の典型は「片側性」「拍動性」「中等度〜重度」「日常動作で増悪(階段昇降や歩行で悪化)」で、発作は4〜72時間持続しえます。随伴症状として悪心・嘔吐、光過敏、音過敏があり、これらを系統立てて問診で拾うことが診断の近道になります。さらに、におい過敏などの感覚過敏が強い患者もいて、「刺激に弱い体質」という言い方だけで片付けられているケースもあります。
医療従事者向けに強調したいのは、偏頭痛の重症度は痛みの強さだけでは測れない点です。例えば「仕事は何とかできる」が、実際には集中が落ち、会議や対人コミュニケーションが破綻し、回復に丸1日以上かかる例もあります。男性患者では「我慢できるから大丈夫」という表現が出やすい一方、ADL/IADLの損失は積み上がるため、生活影響を具体的に質問する(欠勤・早退、家事育児の代替、パフォーマンス低下)ことが重要です。
「天才に多い」という話題が出やすい背景の一つに、偏頭痛の前兆(オーラ)があります。頭痛発作の前に、閃輝暗点(ギザギザの光、チカチカ、視野欠損が移動する感覚)が出る人がおり、本人にとっては強烈な知覚体験になります。臨床では、この前兆が「眼の病気」と誤解され、眼科→異常なし→放置、というルートをたどることがあります。
前兆の機序として、皮質拡延性抑制(CSD:cortical spreading depression)が関与すると考えられてきました。国内でも、片頭痛前兆と考えられるCSDをリアルタイム光学計測で捉えた研究が報告されており、前兆の時間変化とCSDの伝播が整合する点が示されています。こうした「神経活動の波」が、痛みのフェーズだけでなく知覚のフェーズを作るため、患者は「脳がいつもと違う状態に入る」感覚を言語化しやすくなります。
ここでの注意点は、閃輝暗点=必ず偏頭痛、ではないことです。突然の視野障害、神経脱落症状、普段と違う強烈な頭痛(いわゆる雷鳴頭痛)、初発高齢などは二次性頭痛や血管イベントも鑑別に上がるため、医療者はレッドフラッグを必ず確認します。一方で「典型的な前兆のパターン」を患者が説明できる場合、偏頭痛の診断精度が上がり、不要な不安も減らせます。
前兆を持つ患者に対しては、発作日誌で「前兆→痛み→随伴症状→回復まで」を時系列で記録してもらうと、本人の自己理解が進み、急性期治療のタイミングも合わせやすくなります。
前兆の理解(CSDの話)に役立つ国内研究の参考。
理研:片頭痛発作の前兆をリアルタイム光学計測で可視化(CSDと閃輝暗点の関連)
診断は、国際頭痛分類(ICHD)の考え方に沿って「一次性頭痛として整合するか」と「二次性頭痛の除外が必要か」を同時に進めるのが実務的です。偏頭痛(前兆のない片頭痛)の特徴として、4〜72時間持続、片側性、拍動性、中等度〜重度、日常動作で増悪、悪心/嘔吐、光過敏/音過敏などが整理されています。問診では、患者が「頭が痛い」を一言で済ませがちなため、こちらから特徴を選択式に近い形で引き出すと情報がそろいます。
医療者が現場で使いやすい質問例を、外来でそのまま使える形で並べます。
男性患者は「痛み止めが効くかどうか」だけを強調することがありますが、偏頭痛は急性期治療の最適タイミングが重要で、我慢してから飲むほど効きにくくなりがちです。また、頻回の市販薬使用が続くと、薬物乱用頭痛(MOH)を合併し、かえって頭痛頻度が増えることがあるため、使用回数(1か月の服薬日数)を必ず確認します。
さらに、群発頭痛は男性に多いとされ、偏頭痛と混同されると治療戦略がずれます。片側の眼窩〜側頭部の激痛、流涙や鼻閉、じっとしていられない落ち着かなさ、夜間に規則的に起こるなどがあれば群発頭痛も念頭に置き、専門医紹介や治療経路の確認が必要です。
ICHDに基づく片頭痛の特徴整理(日本語資料として使いやすい部分)。
レジデント(2014):片頭痛の有病率・特徴(片側性/拍動性/光過敏/音過敏など)
治療は大きく「急性期治療」と「予防治療」に分かれ、患者の生活影響と頻度でバランスを取ります。急性期治療では、NSAIDsやトリプタンなどの位置づけを整理し、服薬タイミング・過量使用のリスク・併用禁忌を説明できると、治療満足度が上がります(薬剤の選択は既往・併存疾患・他剤との相互作用で変わるため、個別化が前提です)。予防治療は、発作頻度が高い、急性期治療が効きにくい、副作用で継続できない、生活障害が大きい場合に検討し、近年はCGRP関連薬が普及してきたことも含めて「選択肢が増えた」事実を伝えると受診動機になります。
男性患者で特に問題になりやすいのが、「市販薬で回している」状態の固定化です。日本の調査では、片頭痛患者の多くが医療機関で治療を受けておらず、医師の診断を受けていない割合が81.0%だったという報告もあります。また、市販薬使用が中心で、処方薬使用が少ないという結果も示されています。医療者から見ると、これは「治療機会の損失」であると同時に、薬物乱用頭痛や慢性化へ移行する温床になりえます。
患者説明で使える、受診を促す論点をまとめます。
日本の「未治療の多さ」「診断未取得の多さ」に触れられる参考。
CareNet:日本における片頭痛の有病率と治療状況(未診断・未治療が多い点)
検索上位の記事は「片頭痛は天才に多い?」のようにキャッチーな見出しになりがちですが、医療現場では“神話”の扱い方が成果を左右します。ポイントは、患者の自己理解を助けつつ、誤った自己正当化(治療回避)に落とさないことです。つまり「あなたは天才だから痛いのは仕方ない」ではなく、「脳が刺激に敏感な特性を持つ可能性がある、その特性は創造的作業にプラスにもマイナスにも働くので、マイナスが強い局面を治療で減らす」という枠組みに変換します。
一部の解説では、片頭痛と創造性の関係は現時点で決定的に裏付けられていない一方、感受性・刺激への敏感さ、内省傾向などの“天才型”と親和性のある特徴が語られることがあります。ここを医療者が扱う際は、患者の体験(感覚過敏、前兆、集中の波)を否定せず、医学的には「症状のコントロールが第一」であることを明確にします。
職場の支援にもつながる、説明のテンプレ(例)を提示します。
現場で意外に効くのが、「合理的配慮」の言葉を出す前に“環境調整”として提案することです。たとえば、ディスプレイ輝度の調整、耳栓・ノイズキャンセル、香料の強い環境の回避、会議の照明席の選択、発作時の一時離脱ルールを事前合意する、などは医療者の助言として現実的です。偏頭痛を「才能の証明」にせず、「症状を制御して能力を安定して出す」方向へ言語化できると、男性患者の受診継続率が上がることがあります。
「天才に多い?」を扱う際の注意(断定せず、関係性の可能性を述べるスタンスの参考)。
薬剤師C:片頭痛は天才に多い?(科学的根拠は限定的、という注意点を含む)

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