膝外側靭帯損傷テーピングの選択と巻き方の実践ガイド

膝外側靭帯(LCL)損傷に対するテーピングの種類選択・手順・注意点を医療従事者向けに解説。急性期から復帰期まで段階別に適切なテーピング法を知っていますか?

膝外側靭帯損傷のテーピングで知るべき選択・手順・注意点

テーピングをしっかり巻いても、腓骨神経を圧迫すると足先のしびれが翌日まで残ります。


この記事の3ポイント要約
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LCL損傷は複合損傷が多い

外側側副靭帯(LCL)の単独損傷はGrade Ⅰに限られることが多く、Grade Ⅱ〜Ⅲでは後外側支持機構(PLS)や前十字靭帯との複合損傷を想定した評価とテーピング設計が必要です。

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テープ選択は損傷グレードで変える

急性期はホワイトテープ75mm主体の非伸縮固定、亜急性期〜復帰期はキネシオロジーテープへの切り替えが基本です。誤った素材選択はかえって回復を遅らせます。

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腓骨神経への圧迫に要注意

LCL損傷には腓骨神経麻痺が合併しやすく、テーピングの巻き方次第で神経圧迫を悪化させるリスクがあります。腓骨頭周囲へのテープ通過に特別な注意が必要です。


膝外側靭帯損傷(LCL損傷)の解剖と特徴を再確認する



外側側副靭帯(Lateral Collateral Ligament:LCL)は、膝の外側に位置する円筒状の靭帯で、太さは5〜7mm程度です。はがきの短辺の約1/3ほどの細さしかありませんが、膝関節の内反(O脚方向へのぐらつき)を主に制御する重要な構造物です。


LCL損傷の受傷機転として代表的なのは、ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツで膝の内側から外力が加わる場面、あるいは交通事故での膝部直撃です。内反強制が主体です。


医療従事者として特に覚えておきたいのが「単独損傷の少なさ」という特徴です。


LCLのGrade Ⅰ(軽度の靭帯伸張)は単独で起こることがありますが、Grade Ⅱ(部分断裂)〜Grade Ⅲ(完全断裂)では、後外側支持機構(PLS:膝関節後外側複合体)を含む複合損傷となるケースがほとんどです。さらに重篤なケースでは前十字靭帯(ACL)や後十字靭帯(PCL)との合併損傷も起こります。


複合損傷を見逃すと、テーピングによる固定方向が不適切になり、靭帯治癒を妨げる可能性があります。これが原則です。


また、LCL損傷には腓骨神経麻痺が合併しやすいという点が、テーピング施行上の大きなリスクになります。腓骨神経は腓骨頭(膝外側の骨の出っ張り)のすぐ後方を走行するため、LCL損傷に伴う炎症・血腫、あるいはテーピングの過剰な圧迫が腓骨神経を障害することがあります。足背のしびれ、足関節の背屈困難(下垂足)などの症状が現れた場合は、即座にテープを外して神経学的評価を行う必要があります。




























グレード 病態 不安定性 テーピング方針
Grade Ⅰ 靭帯伸張(微細損傷) なし〜軽微 キネシオテープ主体。機能的固定
Grade Ⅱ 部分断裂 中等度 ホワイトテープ+伸縮テープ。内反制限
Grade Ⅲ 完全断裂 高度 テーピングは補助。装具・手術適応の検討


LCL損傷の評価には内反ストレステストが基本です。膝30°屈曲位と完全伸展位の2通りで実施し、完全伸展位でも動揺性がある場合はPLS・十字靭帯の合併損傷を強く疑います。


参考:LCL損傷のグレード分類・症状・テーピングについて詳しく解説されています
膝外側側副靱帯損傷(LCL損傷)について - CHANGE鍼灸整骨院


膝外側靭帯損傷テーピングに使うテープ素材の選び方

テープ素材の選択を誤ると、固定力が不足して治癒を遅らせるか、逆に過剰な固定で血行障害を招くリスクがあります。これは使えそうな情報ですね。


主に使用するテープは大きく2種類に分類されます。非伸縮テープ(ホワイトテープ)と伸縮テープ(キネシオロジーテープ・エラスチコン)です。


🩹 非伸縮テープ(ホワイトテープ)


幅38mm・50mm・75mmが代表的なサイズです。LCL損傷では75mm幅が関節の安定化に向いています。伸びないため、内反方向への動きを強く制限できます。急性期(受傷後数日間)の固定に適しており、スパイラルテープやXサポートの基材としても使います。ただし通気性が低く、長時間の使用で皮膚トラブルが起きやすいという側面があります。


🩹 伸縮テープ(キネシオロジーテープ・エラスチコン)


キネシオロジーテープは伸縮率が約130〜140%程度あり、皮膚・筋肉に近い弾力性を持ちます。感覚入力(固有受容感覚)の改善や疼痛緩和を目的に使われ、亜急性期から復帰期のサポートに向いています。エラスチコン(75mm幅)はホワイトテープよりも伸縮性がありながら固定力も高く、アンカーやスパイラルの最終固定に使われることが多いです。


🩹 アンダーラップ


テープを直接皮膚に巻く前に使う保護材です。皮膚への摩擦・刺激を軽減し、テープ剥離時の皮膚損傷を予防します。LCL損傷のテーピングでは必ず使うことが原則です。


急性期か否かの判断基準は「腫脹・熱感・著明な疼痛」の有無です。これらがある間はホワイトテープによる非伸縮固定を選択し、症状が落ち着いてきたらキネシオロジーテープへ切り替えます。





























テープ種類 主な用途 使用場面
ホワイトテープ(38〜75mm) 強固な固定・内反制限 急性期・スポーツ復帰初期
キネシオロジーテープ(50〜75mm) 疼痛緩和・感覚入力改善 亜急性期〜慢性期
エラスチコン(75mm) 固定力+伸縮性の両立 スパイラル最終固定・復帰期
アンダーラップ 皮膚保護・滑り止め 全ての場面


膝外側靭帯損傷テーピングの具体的な手順と巻き方

ここからは、LCL損傷(主にGrade Ⅱ程度)に対するホワイトテープを用いた基本的なテーピング手順を解説します。目的は「下腿の内反・内旋を制限すること」です。


【準備するもの】
- アンダーラップ
- ホワイトテープ 38mm(アンカー用)
- ホワイトテープ 75mm(スパイラル・サポート用)
- 伸縮テープまたはエラスチコン 75mm(最終アンカー用)


【手順】


① ポジショニングと皮膚の準備


患者を仰臥位にし、膝関節を約30°軽度屈曲位に保ちます。必要に応じてタオルなどで膝下を支えます。汗・油分・毛があると粘着力が低下するため、アルコール綿でのクレンジングと必要に応じた除毛を行います。


② アンダーラップを巻く


下腿遠位(アンカー部位)から大腿遠位(アンカー部位)にかけて、シワが入らないよう均等な張力で巻きます。腓骨頭の直上付近は特に薄めに、かつ丁寧に巻くことがポイントです。ここが圧迫されると腓骨神経障害が起きます。


③ アンカーテープを貼る(2か所)


- 下腿近位部(膝下約5〜8cm)にホワイトテープ38mmで1〜2周巻く
- 大腿遠位部(膝上約10〜12cm)に同様に巻く


アンカーは後続のテープが剥がれないよう固定する土台です。強く巻きすぎると循環障害の原因になるため、指が1本入る程度の余裕を残します。


④ スパイラルテープを巻く(2方向)


下腿内側のアンカー部位から始め、膝窩部を通過して大腿外側へ向かって螺旋状に引き上げながら貼ります(1本目)。次に逆方向(下腿外側→膝窩→大腿内側)でもう1本貼ります(2本目)。


この2本のスパイラルが交差することで、下腿の内反・内旋の動きを立体的に制限します。つまり、LCL損傷の再損傷防止に直接機能します。


⑤ 外側縦サポートとXサポートを貼る


75mmホワイトテープを膝外側に縦方向に貼り、LCL走行に沿った直接的なサポートを加えます。さらに腓骨頭(外側側副靭帯の付着部付近)を中心にXサポートを貼ることで、外側の安定性が高まります。


⚠️ このステップで腓骨頭を強く圧迫しないよう注意が必要です。


⑥ 仕上げアンカーを巻く


伸縮テープまたはエラスチコンで上下のアンカー部分を再度固定し、テープの端がめくれないようにします。これで完成です。


【貼り終えたら確認すること】
- 患者に足趾の感覚・動かしやすさを確認してもらう
- 足背〜足趾のしびれ・チアノーゼがないか視診する
- 膝の屈伸が可能な範囲で行えるか確認する


参考:日本スポーツ協会(JSPO)によるテーピング総論・膝関節外側側副靭帯テーピングの解説
テーピング a.総論(日本スポーツ協会アスレティックトレーナーテキスト)PDF


腓骨神経麻痺リスクと膝外側テーピングの安全な施行ポイント

LCL損傷のテーピングにおける最大の落とし穴が腓骨神経への圧迫です。これは他の靭帯損傷のテーピングにはない、LCL特有のリスクです。


腓骨神経(総腓骨神経)は坐骨神経から分岐し、大腿後面を下行した後に腓骨頭後方を回り込むように走行します。腓骨頭の後内側の骨溝は神経の走行が皮膚に最も近い部位で、外からの圧迫に非常に弱い構造になっています。


LCL損傷の受傷時点ですでに炎症による腓骨神経の圧迫が起きているケースがあります。


そのような状況でテーピングを追加すると、圧迫が二重になります。これを知らずに「しっかり固定しよう」と強めに巻いてしまうと、足背の感覚低下や足関節背屈の困難(下垂足様の症状)が出現することがあります。


腓骨神経麻痺合併を疑う症状チェックリスト:


- 🔍 足背・第1〜2趾間の感覚が鈍い・しびれる
- 🔍 足関節を背屈しようとすると力が入りにくい
- 🔍 歩行時につま先が地面に引っかかる感覚がある
- 🔍 足首から先が垂れ下がった状態(下垂足)に近い


これらの所見が1つでもある場合は、テーピングを施行する前に神経学的評価を優先します。また、テーピング施行後に上記症状が新たに出現した場合は即座にテープを除去します。


安全なテーピングのための具体的な対策として、腓骨頭周囲にアンダーラップを厚めに巻く(2〜3層)、テープが腓骨頭を直接横断しないようにライン調整する、という2点が重要です。


テーピング後30分以内に患者の感覚・運動状態を再確認することも欠かせません。腓骨神経に注意すれば問題ありません。


参考:LCL損傷に合併する腓骨神経麻痺の症状・機序について詳述されています
膝外側側副靱帯損傷(LCL損傷)について - CHANGE鍼灸整骨院


急性期から復帰期まで段階別にみる膝外側靭帯損傷のテーピング戦略

LCL損傷のテーピングは「受傷直後に1回貼って終わり」ではありません。回復フェーズに合わせて目的・素材・テンションを変えることが、スポーツ復帰を最短化するうえで重要です。


📌 急性期(受傷後〜48〜72時間)


この時期の最優先事項はPOLICE処置です(Protect・Optimal Loading・Ice・Compression・Elevation)。テーピングはCompression(圧迫)として機能しますが、この時期に最も注意が必要です。炎症による組織の腫脹が続いており、テープが締め付けすぎると急速に循環障害を招きます。


ホワイトテープによる軽度の内反制限固定を行いつつ、30分ごとに感覚・循環確認を行うことが安全です。


📌 亜急性期(3日目〜2〜3週間)


腫脹・熱感が落ち着き始めたら、キネシオロジーテープへの移行を検討します。この時期のテーピング目的は「疼痛軽減」と「固有受容感覚の再教育」です。


キネシオロジーテープを膝外側に沿って貼ることで、皮膚の感覚受容器を刺激し、膝の位置感覚の改善に貢献するとされています。貼り付けテンションは25〜50%程度(テープ自然長に対してわずかに伸ばす程度)が目安です。


📌 回復・復帰期(3週間〜スポーツ復帰まで)


筋力が回復し、基本的な歩行が安定してきたら、段階的なスポーツ動作訓練に移行します。この時期にコンタクトスポーツへ復帰する場合、再受傷予防のためにホワイトテープ+エラスチコンを組み合わせた機能的テーピングが有効です。


リハビリテーション上の研究では、スポーツ復帰の初期段階でテーピングや硬性装具を使用することで、再受傷リスクを下げる効果が認められています(J Jpn Rehabil Med, 2019)。


復帰期のテーピングは、単なる外固定ではなく「感覚フィードバックの補助」として意識することが重要です。筋力強化(特に中殿筋・ハムストリングス・大腿四頭筋)と組み合わせることで、テーピングなしでも安定した膝機能を取り戻せるようになります。



  • 🏃 急性期:ホワイトテープによる内反制限固定 + POLICE処置の補助(30分ごとに循環チェック)

  • 🩹 亜急性期:キネシオロジーテープで疼痛緩和と固有受容感覚の再活性化

  • 復帰期:ホワイト+エラスチコンによる機能的テーピング + 筋力強化訓練の同時実施


参考:スポーツにおける膝外傷・障害リハビリテーションのエビデンスについて詳しく掲載されています


膝外側靭帯損傷テーピング施行時の見落とされがちな禁忌と注意事項

他のサイトでほとんど触れられていない視点として、「テーピングそのものが治療を遅らせるケース」があります。


LCL損傷に対するテーピングの禁忌・相対禁忌を整理すると、以下のケースでは注意が必要です。


禁忌・相対禁忌のチェックリスト:


- ❌ 皮膚に開放創・びらん・活動性の皮疹がある: テープが創部を覆うと感染リスクが増大します
- ❌ 著明な腫脹(膝全体が球状に腫れているレベル): 圧迫による血流障害のリスクが高く、整形外科的精査が先決です
- ❌ Grade Ⅲ損傷で手術適応が疑われる: テーピングによる固定だけで活動を継続させることは、損傷の拡大や再建術後の予後悪化につながります
- ❌ テープアレルギーの既往: アクリル系粘着剤へのアレルギーがある場合は代替品(シルク素材テープ等)の使用を検討します


また、見落とされがちな点として「テーピングによる疼痛マスキング」があります。


テーピングにより痛みが緩和されると、患者が本来制限すべき動作を行ってしまう危険性があります。Grade Ⅱ以上の損傷で「痛みが楽になったからスポーツに復帰したい」という患者への指導は慎重に行う必要があります。靭帯の組織学的な治癒(コラーゲン線維の再配列)には数週間〜数か月を要するためです。痛みの消失=治癒ではないということです。


もう1つの注意点は、テーピングの連続使用による廃用性萎縮のリスクです。テーピングで外部から安定性を補い続けると、本来なら膝を安定化すべき筋肉(特にハムストリングスや中殿筋)の筋力回復が遅れる可能性があります。テーピングはあくまで回復期を支援するツールであり、筋力トレーニングとのセットが条件です。


テーピング中の皮膚管理も重要です。1回の使用時間の目安は運動中の最大4〜6時間程度とし、就寝中は外すことが推奨されます。長時間貼り続けると皮膚が蒸れ、かぶれ(接触性皮膚炎)が起きると次の施行ができなくなり、治療の継続性が失われます。



  • 💡 テーピング前:皮膚状態・腓骨神経症状・損傷グレードの確認

  • 💡 テーピング中:腓骨頭周囲の圧迫を避け、循環確認を30分後に実施

  • 💡 テーピング後:痛みの消失を治癒と誤認させない患者教育を徹底する

  • 💡 長期管理:筋力強化と組み合わせ、テーピング依存を回避する


参考:LCL損傷の治療期間・保存療法・手術適応について整理されています
膝外側側副靱帯(LCL)損傷 | 医療法人社団豊正会 大垣中央病院






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