未開封のインスリン製剤は、原則として冷蔵庫の2~8℃で保管し、凍結を避けることが基本です。
ここで重要なのは「冷蔵庫に入れてさえいれば安全」ではなく、冷気の吹き出し口やフリーザー付近など、局所的に温度が下がりやすい場所を避けることです。
ノボノルディスクの注意喚起では、冷蔵室を「強冷」に設定すると凍結することがある点や、凍結を避けるためドアポケット等を勧める点が具体的に示されています。
また、凍結したインスリンは薬液が変化して効果が発揮できなくなり得るため、「一度でも凍った可能性があるものは使用しない」方針が明確です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6437255/
凍結のサインとして、カートリッジのひび割れ、ゴム栓の膨らみ、大きな気泡などが挙げられており、外観確認を患者指導の一部に組み込む価値があります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10245305/
未開封保管でも遮光が推奨され、光による品質影響を避ける姿勢が一貫しています。
実務では「冷蔵庫のどこに置くか」を具体化すると事故が減ります。例えば、患者に伝えるときは次のように言語化すると通りやすいです。
使用中(開封後)のインスリン製剤は、室温(30℃以下)で保管し、使用開始後の使用期限内に使う、という整理がメーカー情報として明示されています。
「開封後は冷蔵庫に戻した方が長持ちしそう」という直感はよくありますが、現場では“温度の出し入れ”が問題を起こし得るため、一定の温度帯で管理する方が安全側になる場面があります。
日本薬剤師会資料でも、使用中の注入器は室内の涼しい場所に保管し、(少なくともカートリッジ製剤やキット製剤では)冷蔵庫で保存しない運用が示されています。
開封後に「室温へ切り替える理由」を、医療従事者向けに分解すると主に3系統あります。
さらに、メーカーは「使用中は室温30℃以下」としつつも、持ち歩きでは30℃を超えない工夫が必要だが、工夫をしても常に30℃以下を保証できるわけではない、と注意を促しています。
この“保証できない”という表現は、患者指導で「保冷バッグに入れているから絶対大丈夫」という過信を修正するのに使えます。
つまり、開封後の室温保管は「冷やさない」ではなく「30℃以下で安定させる」ことが要点で、熱と凍結の両方を避ける設計思想だと整理できます。
ペン型注入器では、注射後に針をつけたままにしない指導が重要で、その理由は“空気混入”と“液だれ”など複数あります。
日本薬剤師会資料では、注射後に針を外さないとカートリッジ内に空気が入ったり、針先からインスリンが漏れ出す恐れがあるため、注射後は針を外すように指導する、と明確に書かれています。
また、日本糖尿病学会の災害時情報でも、針を付けたままだと液だれと空気混入が生じやすいとされています。
“針を外す”は単なる清潔操作ではなく、投与精度にも直結します。空気混入は注入精度を低下させ得るため、患者が「いつも通り打っているのに効きが悪い」と訴える背景要因になり得ます。
参考)「インスリン自己注射を行っている方へ」|公益社団法人日本糖尿…
加えて、針を付けたまま保管すると、針内部でインスリンが結晶化して詰まり、注射できなくなる可能性も示されています。
したがって、患者指導では「針は毎回交換」「終わったら必ず外す」をワンセットにし、理由もセットで伝えると行動変容につながりやすいです。
現場でそのまま使える説明例を置きます。
インスリンは保管時に遮光が推奨され、メーカーは使用中でもキャップ等で遮光して保管するよう案内しています。
遮光は「直射日光=高温」問題と絡むため、温度管理の一部として理解させると説明が簡潔になります(“光”と“熱”をまとめて避ける)。
また、使用前に外観で異常がないか確認すること、空打ちで異常がないことを確認することが推奨されています。
意外と見落とされるのが「凍結・熱・衝撃の影響は、まず外観に出ることがある」という点です。
凍結が原因でカートリッジにひび割れが生じたり、大きな気泡ができたりする可能性が示されており、外観確認を“ルーチン化する意味”があります。
さらに、日本薬剤師会資料では新しいカートリッジ使用前にひび割れや大きな気泡の確認を求め、空打ちが空気排出と装着ミス発見のために必要と説明しています。
患者向けには、チェック項目を短く固定すると実行されやすいです。
保管方法の説明は“知識の伝達”より、“誤使用の予防設計”として組むと強くなります。
日本薬剤師会資料では、院外処方の増加に伴いインシデント事例や事故事例が増えつつあること、調剤・指導の不十分さが重大事故につながる可能性が高いことが背景として述べられています。
つまり、保管指導は「室温・冷蔵・遮光」を言うだけでなく、患者の生活導線に合わせて“間違えにくい運用”に落とし込むのが安全文化として重要です。
独自視点としておすすめなのは、患者の行動を“3つの場面”に分け、各場面での一言を定型化することです(医療者側の説明ブレを減らす)。
最後に、医療従事者の指導で効く“小さな工夫”を挙げます。
保管方法は患者の自己管理の中核なので、「なぜそうするのか(理由)」まで含めて伝えるほど遵守率が上がり、結果として血糖変動や“効かない気がする”訴えの鑑別にも役立ちます。
保管管理の根拠として(温度管理・使用中の扱い・凍結サインなど)。
日本薬剤師会「インスリン製剤の調剤にあたっての留意事項」:保管管理、使用開始後の保管、針の取り外し理由(空気混入・液漏れ)まで網羅
メーカーが示す「使用開始前は2~8℃」「使用中は室温30℃以下」「針は外す」など実務直結の要点。
ノボノルディスク「製剤の保管・保存・廃棄に関する注意点」:冷蔵庫内の凍結リスク、室温保管、持ち歩きの工夫と限界を具体的に説明

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