ジクアス点眼液(一般名:ジクアホソルナトリウム)は、結膜上皮および杯細胞膜上のP2Y2受容体に作用し、細胞内カルシウム濃度上昇を介して水分とムチンの分泌を促進します。
さらに、角膜上皮の膜結合型ムチンの発現・産生促進作用も有する、と添付文書内の薬効薬理として整理されています。
ここが「人工涙液の代替」というより、「涙液層(特にムチン層を含む眼表面の濡れ)の質を立て直す」方向の薬効として理解しやすい点です。
実務での示唆として、蒸発亢進型ドライアイ(MGD合併を含む)でも、涙液の“量”だけでなく“濡れの安定性”が崩れているケースでは、ムチン分泌促進が効きやすい局面があります。
一方で、作用が「分泌を起こす」方向である以上、点眼直後に患者が感じる体感(しみる、違和感、ねばつき、目やに様)が出やすいのも、この薬のキャラクターとしてセットで説明する必要があります。
ジクアス点眼液3%の効能・効果は「ドライアイ」で、涙液異常に伴う角結膜上皮障害が認められドライアイと診断された患者に使用すること、と効能関連注意に明記されています。
用法・用量は、通常1回1滴を1日6回点眼です。
この「1日6回」が、効果面の強みである一方、外来・薬局・病棟いずれでもアドヒアランスの落とし穴になりやすいポイントです。
医療従事者向けの説明としては、回数を「守れない患者が悪い」で終わらせず、生活導線に落とす工夫が有効です。
例えば、起床直後・朝食後・昼食後・夕食後・入浴後・就寝前のように、日課と結びつけると回数の再現性が上がりやすいです(点眼間隔の厳密性より“継続”を優先して合意形成する、という現場的な設計)。
また、ジクアスは他の点眼剤と併用する場合、少なくとも5分以上間隔をあけるよう指導することが、適用上の注意として示されています。
点眼本数が多い患者ほど「全部まとめて一気に」になりがちなので、5分ルールを“絶対”として押し付けるより、「最低でも5分、難しければ順番を固定して毎回同じ運用にする」と伝える方が継続しやすい場面があります。
ヒアレイン点眼液(一般名:精製ヒアルロン酸ナトリウム)は、フィブロネクチンと結合し、その作用を介して上皮細胞の接着・伸展を促進すると考えられる、とされています。
加えて、分子内に多数の水分子を保持することで優れた保水性を示す、というのが薬効薬理の基本骨格です。
このためヒアレインは、ドライアイの「潤す」だけでなく、角結膜上皮障害(創傷治癒・上皮の状態改善)を視野に入れて使う薬として説明しやすいです。
効能・効果は「下記疾患に伴う角結膜上皮障害」として、内因性(シェーグレン症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群、眼球乾燥症候群(ドライアイ)等)と、外因性(術後、薬剤性、外傷、コンタクトレンズ装用等)まで幅広く記載されています。
参考)https://onlinelibrary.wiley.com/doi/pdfdirect/10.1111/aos.15675
用法・用量は1回1滴を1日5〜6回点眼し、症状により適宜増減、通常は0.1%から開始し効果不十分なら0.3%へ、という“強度設計”が明確です。
この「0.1%→0.3%」の段階設計は、同じ患者でも病期・季節・VDT負荷で症状が揺れるドライアイにおいて、増減の合意を取りやすい実務上の利点になります。
例えば「普段は0.1%で、角結膜上皮障害が強い時期(術後・再発・乾燥環境)だけ0.3%へ」という説明は、患者の納得感を作りやすいです。
ジクアス点眼液では、副作用として眼刺激が5%以上、眼脂・結膜充血・眼痛・眼そう痒感・眼異物感・眼部不快感・眼瞼炎が1〜5%未満などが示されています。
臨床では、この「眼脂(めやに)」が患者にとって不安材料になりやすく、「感染?悪化?」と誤解されることがあります。
したがって、開始時に「一時的に目やに様・ねばつきが出ることがある、強い痛みや視力低下があれば中止して受診」という線引きを先に渡すと、中断や自己判断の抗菌薬使用などを減らしやすいです。
ヒアレイン点眼液でも、副作用は報告されており、承認時までの調査等では総症例4,208例中1.76%に副作用が認められ、眼瞼そう痒感、眼刺激感、結膜充血、眼瞼炎などが主として挙げられています。
頻度分類としては、そう痒感・刺激感・結膜炎・結膜充血、角膜障害、異物感などが0.1〜5%未満、眼脂・眼痛が0.1%未満、とされています。
「どちらが安全か」を単純比較するより、患者が気にする“体感”の違い(ジクアスは刺激や眼脂が話題になりやすい、ヒアレインは粘稠性による見え方・装用感を訴える人がいる)を先に説明すると、継続率が上がることがあります。
医療従事者としては、副作用の頻度だけでなく、患者の行動変容(やめる・回数を減らす・別の点眼を自己追加する)を予測して指導内容を組み立てるのが実務的です。
検索上位の比較記事では「作用機序」「回数」「使い分け」までで止まりがちですが、実臨床で差が出るのは“点眼手技が結果を左右する”部分です。
ジクアスの適用上の注意には、患眼を開瞼して結膜嚢内に点眼し、1〜5分間閉瞼して涙囊部を圧迫させた後に開瞼する、という具体的な手技が書かれています。
これは、局所滞留を高める目的に加え、鼻涙管からの排出を減らして不要な全身曝露を抑える一般的な考え方とも整合します(点眼は量が少なくても鼻粘膜から吸収され得る、という点を患者指導に落とす余地があります)。
ヒアレインでも、容器先端が目に触れないようにして汚染を防ぐ、という基本指導が明示されています。
さらにヒアレインミニでは「開封後は1回きりの使用」など、剤形に応じた運用が求められます。
この“運用の違い”は、薬効そのものよりも、感染リスク・継続性・患者満足度に影響しやすいのに、比較記事で軽く扱われがちなポイントです。
もう1つの現場的な盲点は、複数点眼の順番です。
添付文書にある「併用時は5分以上間隔」を守る前提で、一般に「さらっとした点眼→粘稠な点眼」の順にすると後から入れる粘稠製剤が保持されやすい、と説明されることが多いですが、患者が守れない設計は意味がありません。
そこで、患者の生活で実行できる最小ルールとして「順番固定(毎回同じ順)+最低5分」を合意し、守れなかった日の“リカバリ(次のタイミングで戻す)”まで決めておくと、治療が崩れにくくなります。
(参考リンク:ジクアスの効能・効果、用法・用量、作用機序(P2Y2受容体、水分・ムチン分泌)、適用上の注意(涙囊部圧迫、併用間隔)がまとまっている)
ジクアス点眼液3% 電子添文(JAPIC)
(参考リンク:ヒアレインの効能・効果(内因性・外因性の角結膜上皮障害)、用法・用量(0.1%→0.3%)、作用機序(保水性、上皮接着・伸展)やミニ製剤の注意点がまとまっている)
ヒアレイン/ヒアレインミニ 添付文書(CareNet)