徐放性製剤は、有効成分の放出の速度・時間・部位が調節された製剤で、粉砕により設計が破綻します。
特に薬剤名の「L(long)」「LA(long acting)」「R(retard)」「SR(sustained release)」「CR(controlled release)」などは徐放性を示すことがあるため、処方監査・与薬前の“見落とし防止の赤旗”として扱うのが実務的です。
粉砕した徐放性製剤を経鼻栄養チューブ等から投与し、投与後に血圧低下や意識レベル低下、呼吸状態の悪化などの影響が出た事例が報告されています。
現場でのチェック手順(最小構成)を固定すると、属人的な判断ブレが減ります。
「徐放性はダメ」という知識だけでは、実際の事故は防げません。徐放性は“見た目が普通の錠剤”でも成立するため、薬剤名のサフィックス確認を工程に埋め込むことが重要です。
参考リンク(徐放性製剤の粉砕投与で起きた影響・事例、薬剤名の記号、再発防止の注意点)。
https://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_158.pdf
腸溶錠は、胃への負担が大きい薬や胃酸に弱い薬が、腸で溶けるよう表面に特殊なコーティングがされた剤形です。
この設計の核は「胃で溶けない」ことであり、砕く・割る・噛むなどでコーティングが破壊されると、狙った部位での放出が崩れます。
その結果、期待された効果が得られない、あるいは胃部不快などの有害事象リスクが上がる可能性があるため、自己判断での粉砕は避けるべきです。
腸溶性は“患者が飲みにくいから”という理由で手を加えたくなりやすい一方、目的が明確な剤形です。
参考)https://wjbphs.com/sites/default/files/WJBPHS-2023-0159.pdf
嚥下困難でどうしても工夫が必要なときは、まず“同一成分の別剤形”があるか(OD錠・粉薬・液剤など)を検討する流れが安全です。
OD錠(口腔内崩壊錠)は口の中で溶かして服用できる錠剤で、名称の最後に「OD錠」と付くことが多いです。
ここでの落とし穴は、「OD=何をしても大丈夫」と誤解されやすい点で、ODは“崩壊性”の工夫であって、必ずしも“粉砕・噛み砕き・分割の自由”を意味しません。
また、錠剤にはフィルムコーティング錠など、苦味や刺激、吸湿性、光分解などの理由で表面コーティングがあるものもあり、破壊により服薬アドヒアランス低下(苦味・刺激)や品質劣化のリスクが増え得ます。
実務での言い換えとしては、OD錠は「飲み込みの補助」にはなっても、「粉砕してよい」の保証ではありません。
報告された徐放性製剤の粉砕投与事例は、経鼻栄養チューブや腸瘻カテーテルから投与したケースでした。
経管投与では「粉砕して流す」作業が手順化されやすく、患者ごとの薬剤変更・剤形変更が混ざったときに、徐放性が紛れ込むと気づきにくい構造があります。
実際に、ニフェジピンCR錠を粉砕して経鼻栄養チューブから投与し、投与後に血圧が80mmHg台に低下した事例が示されています。
再発防止の観点では、“誰かが詳しい”に依存しない仕組みが必要です。
参考リンク(徐放性を粉砕して経管投与した事例と、確認行動の提案)。
https://www.med-safe.jp/pdf/med-safe_158.pdf
徐放性を示す記号(L/LA/R/SR/CR)は重要な手掛かりですが、記号チェックだけに依存すると、別ルートで抜けが出ます。
たとえば、錠剤の種類には素錠、フィルムコーティング錠、糖衣錠、腸溶錠、OD錠、徐放性錠などがあり、剤形由来の「割る・砕く」可否は薬剤名だけで完全には推定できません。
さらに、患者の「錠剤が大きくて飲みにくい」という訴えは頻出で、現場では“良かれと思って”加工が起こりやすい状況が繰り返されます。
そこで、一覧記事としては「具体的な銘柄羅列」よりも、医療従事者が外してはいけない判断材料を“運用可能な形”に落とすのが安全です。
参考リンク(錠剤の種類と、割ってはいけない錠剤があること、相談・剤形変更の考え方)。
https://www.shizuoka-pho.jp/kokoro/sp/medicine-info/8_5cf63926660ec/index.html