市販靴を加工した装具を「オーダーメイド」と偽って申請すると、あなたの証明書が不正文書扱いになります。
平成30年(2018年)4月1日から、靴型装具の療養費支給申請に写真添付が義務化されました。 この制度改正は突然ではなく、数年にわたる不正請求の発覚が直接的な引き金となっています。 city.isesaki.lg(https://www.city.isesaki.lg.jp/material/files/group/31/kutsgatasougunitsuite.pdf)
具体的には、義肢製造業者が市販靴に簡単な加工を施しただけの製品を、正規のオーダーメイド靴型装具として申請するという手口が横行していました。 正規のオーダーメイド靴型装具の価格は市販靴の約3〜4倍に相当するため、差額分が丸ごと不正利益になっていたのです。 kenpo.gr(https://www.kenpo.gr.jp/nskenpo/contents/topics/1911/pdf/191107.pdf)
不正の実態はこうです。
- 市販靴にインソールを挿入しただけで「靴型装具1足」と申請
- 本来は「インソール1足分のみ」が保険対象のところ、装具全体の費用を請求
- 医師の証明書(作製指示・装着証明)にも「オーダーメイドの靴型装具1足」と不実記載 kenporen(https://www.kenporen.com/include/press/2019/20190404.pdf)
つまり不正は業者だけで完結せず、医療従事者側の書類も巻き込まれていたということです。
代表的な事案が、愛知県小牧市の株式会社松本義肢製作所による不正請求です。 同社は約8年間にわたって不正を続け、被害総件数は全国1,642件・不正請求額は約1億1,700万円にのぼると報告されています。 wellness-news.co(https://wellness-news.co.jp/posts/%E3%80%8C%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%89%E3%81%AE%E9%9D%B4%E5%9E%8B%E8%A3%85%E5%85%B7%E3%80%8D%E3%81%A8%E5%81%BD%E3%82%8A%E3%80%811%E5%84%841700%E4%B8%87%E5%86%86/)
これは驚くべき規模です。
被害を受けた保険者の内訳も幅広く、健保組合95組合・協会けんぽ・国保・国保組合・共済など合計145保険者以上に及びました。 医療機関や義肢装具業者が限られた地域で活動していても、保険者を通じて全国に波及するということです。 kenporen(https://www.kenporen.com/include/press/2019/20190404.pdf)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 不正期間 | 2007〜2014年(約8年間) |
| 不正件数(確認分) | 1,163件 |
| 不正額(確認分) | 約6,300万円 |
| 見込み総額 | 約1億1,700万円・1,642件 |
| 被害保険者数 | 145保険者以上 |
wellness-news.co(https://wellness-news.co.jp/posts/%E3%80%8C%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%83%89%E3%81%AE%E9%9D%B4%E5%9E%8B%E8%A3%85%E5%85%B7%E3%80%8D%E3%81%A8%E5%81%BD%E3%82%8A%E3%80%811%E5%84%841700%E4%B8%87%E5%86%86/)
この事案を契機に、厚労省は写真審査の義務化を専門委員会で審議し、平成30年4月施行につなげました。 制度が後手に回った教訓として、医療従事者は写真添付の意義を「単なる手続き」と捉えてはいけません。 kenporen(https://www.kenporen.com/include/press/2019/20190404.pdf)
写真添付の目的は「患者が実際に装着する現物であることの確認」です。 この確認ができない場合、保険者は給付を保留または不支給とする権限を持っています。重要なポイントです。 city.isesaki.lg(https://www.city.isesaki.lg.jp/material/files/group/31/kutsgatasougunitsuite.pdf)
写真が不備として差し戻される典型的な理由は以下のとおりです。
- 装具の全体像が写っていない(一部しか映っていない) anagkenpo(https://www.anagkenpo.com/UploadedFiles/benefit/11_sougu_daishi_sample.pdf)
- 方向が1方向のみ(正面だけ・側面だけ) kenpo.gr(https://www.kenpo.gr.jp/nskenpo/contents/topics/1911/pdf/191107.pdf)
- ロゴ・サイズ表記部分が不鮮明または未撮影 kenpo.gr(https://www.kenpo.gr.jp/nskenpo/contents/topics/1911/pdf/191107.pdf)
- 中敷き(インソール)を靴に挿入したまま撮影している meidensha-kenpo.or(https://meidensha-kenpo.or.jp/contents/shinsei/file/ryoyohi_sougu.pdf)
- 付属品が一部写っていない o-mokuzaikenpo.or(https://www.o-mokuzaikenpo.or.jp/shinsei/pdf/kyuhu/sougu_leaflet.pdf)
差し戻しになると再提出の手間が発生し、患者側の療養費受取りが遅延します。これは避けられるリスクです。
特に見落としが多いのが「中敷きの取り出し撮影」です。靴に挿入するタイプのインソールがある場合は、靴から取り出した状態で別途撮影する必要があります。 装着状態の写真だけでは内部構造が確認できないため、保険者が審査できません。 meidensha-kenpo.or(https://meidensha-kenpo.or.jp/contents/shinsei/file/ryoyohi_sougu.pdf)
また、ロゴやタグ(サイズ表記)がある場合はその部分が明確に読み取れる写真も必要です。 中敷きに注意すれば大丈夫です、と言いたいところですが、ロゴ撮影の漏れも同様に多いので注意してください。 kenpo.gr(https://www.kenpo.gr.jp/nskenpo/contents/topics/1911/pdf/191107.pdf)
正しい写真を一度で揃えれば、申請の手戻りはほぼゼロになります。各健保組合・国保の要件を統合すると、以下の撮影が必要です。 kenpo.gr(https://www.kenpo.gr.jp/yonden-kenpo/contents/sinsei/pdf/ryoyohi_gazo.pdf?1764720000070)
meidensha-kenpo.or(https://meidensha-kenpo.or.jp/contents/shinsei/file/ryoyohi_sougu.pdf)
合計枚数は最低3枚以上が推奨されており、日本製鉄健康保険組合のガイドラインでは「全体・横・後ろ等から3枚以上」と明示しています。 kenpo.gr(https://www.kenpo.gr.jp/nskenpo/contents/topics/1911/pdf/191107.pdf)
撮影前に確認すべき1アクション:申請先保険者の「写真添付台紙」または「撮影ガイドライン」を事前にDLしておくことです。各保険者によって若干の独自要件が追加されている場合があります。 saibo-kenpo.or(https://www.saibo-kenpo.or.jp/UploadedFiles/application/refund04.pdf)
参考として、農薬健保・大王製紙健保・四国電力健保など多くの組合が専用の「写真貼付台紙」を公開しています。台紙と一緒に装具を撮影することで、装具の同一性確認がより明確になります。 saibo-kenpo.or(https://www.saibo-kenpo.or.jp/UploadedFiles/application/refund04.pdf)
以下は、厚生労働省が示した申請書類の一般的な構成です。申請書類の準備漏れを防ぐためのチェック用にご活用ください。
kenpo.gr(https://www.kenpo.gr.jp/nskenpo/contents/topics/1911/pdf/191107.pdf)
写真添付義務化は不正抑止に一定の効果を上げていますが、完全ではありません。意外ですね。
厚労省の通知は「被保険者(患者)の事情等により保険者が困難と認める場合を除く」という例外規定を設けています。 つまり「写真が撮れない事情がある」とみなされれば、現物確認なしで給付が承認される余地が残されています。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000189384.pdf)
また、写真審査は保険者側の人的審査に依存しており、専門的な装具知識を持たない担当者が審査する場合、市販靴との見分けが困難なケースもあります。 不正を見抜くには装具の構造・素材・製造工程への理解が必要であり、「写真があれば万全」とは言いきれないのが現状です。 mhlw.go(https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000192473.html)
医療従事者としての関わり方という独自視点から見ると、医師が作製指示書・装着証明書を発行する段階でのチェックが最大の抑止力になります。指示内容と実際に納品された装具の一致確認は、医師の義務的な行為として認識されるべきです。
実際に不正事案では、医師の証明書に「オーダーメイドの靴型装具1足」と不実記載されており、医師自身が知らないうちに書類を偽造に加担させられた可能性もあります。 知らなかったでは済まないリスクがある、ということです。 kenporen(https://www.kenporen.com/include/press/2019/20190404.pdf)
医師・義肢装具士・医療事務が連携して申請書類を照合する院内ルールを作ることが、制度的な抜け穴への現実的な対策です。確認フローは1アクションで実装できます。たとえば「納品時に義肢装具士が写真を撮影し、医師が指示書と照合するチェックシートに署名する」という運用だけで、証明書の不実記載リスクを大幅に下げられます。
参考リンク(不正請求の背景と写真義務化の経緯)。
厚生労働省による治療用装具に係る不適切請求事案の詳細と、靴型装具への写真審査導入に至る検討内容が確認できます。
厚生労働省|治療用装具に係る療養費の不適切な請求事案について(PDF)
参考リンク(健保連による不正請求事案の全容)。
松本義肢製作所による不正請求の全体像・被害額・被害保険者数・制度改正への流れが詳述されています。
健保連|治療用装具療養費に関する不正請求事案について(PDF)
参考リンク(申請書類と写真要件の実例)。
日本製鉄健康保険組合による写真添付の具体的な要件・撮影注意点・申請書類一覧が確認できます。