眼軟膏は「目に使う薬」なので、皮膚用の軟膏よりも清潔管理の影響が大きく、まず手をせっけんと流水でよく洗うことを徹底します。手指衛生が不十分だと、綿棒やチューブ、まぶた周囲を介して不必要な汚染を起こしやすく、患者の安心感も下がります。参天製薬の患者向け解説でも、使用前の手洗いを最初に強調しています。
綿棒は「清潔な綿棒」を選ぶことが前提です。患者説明では、個包装の綿棒を推奨すると伝わりやすく、家庭内の保管環境による汚染リスクを減らす意図も説明できます(“新品・清潔”という言葉だけでなく、どれが清潔かの基準まで示すのがコツです)。綿棒を置いたトレーやティッシュも清潔である必要があり、うっかり素手で綿球部を触れないよう促します。
チューブ先端は、まぶた・まつ毛・眼球に触れさせないのが重要です。参天製薬は、軟膏を下まぶた内側につける場面で「チューブの先がまぶたやまつ毛、目に触れない」よう注意喚起しています。 ここは患者が一番やりがちな失敗で、接触すると先端が汚れて次回以降の使用にも影響するため、実施手技の“目的”として説明すると守られやすいです。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10236409/
また意外と見落とされるのが「キャップの扱い」です。キャップ内側に触れたり、洗面台や枕元に直置きしたりすると、清潔操作の流れが崩れます。参天製薬でも、使用後にチューブ先端が不潔にならないよう注意してふたをすることが示されています。 患者の生活導線(夜間、暗い場所、急いでいる)を想定した声かけが、実地では効きます。
参考:綿棒使用時の手順(下まぶた内側に塗る、塗布後に閉眼して待つ、溢れた軟膏の拭き取り等)
参天製薬:目薬(点眼液・眼軟膏)の使い方
綿棒を使う基本手順は、(1)手洗い→(2)清潔な綿棒にチューブから軟膏を少し取る→(3)下まぶたを軽く下にひいて、薬をつける、の流れで整理すると教えやすいです。参天製薬は「清潔な綿棒にチューブから軟膏を少し取り、下まぶたを軽く下にひいて薬をつける」と具体的に記載しています。 患者には「先に綿棒に取ってから、目元へ」という順序を強調すると、チューブ先端の接触事故が減ります。
下まぶたを引く強さは「軽く」で十分です。強く引くと恐怖心や反射的な瞬目が出やすくなり、結果として塗布が雑になります。鏡を使うと安定しやすいので、患者が自宅で行う場合は“洗面所の鏡”など具体的な場面を示すとイメージが固まります。
「少し」の量は、製剤や処方意図で変わるため、現場では医師指示(例:何cm、米粒大など)に合わせるのが基本です。ただ、患者は量を増やして安心しがちなので、「多いほど効くわけではない」「溢れても効果が増えるわけではない」ことを先に言っておくと、過量使用による不快感(べたつき、視界のかすみ)を減らせます。
塗布部位が「下まぶたの内側(結膜嚢)」の場合、綿棒先端が角膜に当たると痛みや恐怖につながるので、綿棒は“押し付けない”が原則です。参天製薬の説明に沿って、下まぶたを軽く下げて「置く」イメージでつけるよう伝えると、安全側に寄せられます。
眼軟膏は「どこに使うか」で手技が変わります。中村眼科は、使用目的を3つに分け、ものもらい等で「まぶたの縁につける」場合は「綿棒の先に軟膏を出し、まぶたの縁に塗る」と明確にしています。 この分類を先に提示すると、患者説明でもスタッフ教育でも混乱が減ります。
まぶたの縁に塗るときは、上まぶたか下まぶたかで牽引方向が逆になる点がポイントです。中村眼科では、上まぶたなら上に引き上げ、下まぶたなら引き下げるとつけやすいと説明しています。 患者は「目の中に入れるのが怖い」ケースが多いので、縁塗布のときは“皮膚に塗る”感覚に近いことを伝えつつ、眼に入る可能性があるから眼軟膏(無菌製剤)を使うという位置づけを補足すると納得されやすいです。
参考)https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acsami.4c15089
ものもらい(麦粒腫など)の患者では、痛みでまぶたを触られること自体がストレスになります。そこで、医療従事者側は「綿棒で最小限の接触面で塗れる」ことをメリットとして説明し、患者の不安を下げます。塗布の際の声かけは「今から端にそっと乗せます」「押しません」を定型文にすると、介助者が変わっても品質が揃います。
一方で、まぶたの縁は皮脂や涙で滑りやすく、綿棒の摩擦で発赤が増えることがあります。繰り返し擦らない、必要量を“置く”ように塗る、痛みが強いときは無理に広げない、といった注意点もセットで伝えると、トラブル対応が減ります。
参考:眼軟膏の「皮膚」「まぶたの縁」「まぶたの中に入れる」を分けて説明、綿棒使用の具体例
中村眼科:眼軟膏の使い方
塗布後は、すぐにまばたきせず、まぶたを閉じて軟膏が溶けて広がるまで少し待つのが基本です。参天製薬でも「まばたきをせずにまぶたを閉じ、軟膏が溶けて全体に広がるまでしばらく待つ」と説明されています。 患者が焦って瞬目すると、軟膏が外へ押し出され、効果が安定しにくくなります。
溢れた軟膏は、清潔なガーゼやティッシュで軽く拭き取ります。参天製薬は「清潔なガーゼやティッシュで軽くふき取ってください」としており、“こすらない”ことがポイントです。 ここで強く擦ると、まぶたの縁や眼周囲皮膚に刺激が加わり、炎症が長引く原因にもなりえます。
患者が訴えやすい副反応として「見えにくさ(かすみ)」があります。軟膏は油性基剤が多く、塗った直後は視界が一時的にぼやけることがあるため、車の運転や危険作業の前後に使うタイミング調整を案内しておくと安全です(医療従事者としては、“危険作業前は避ける”の一言を添えるだけでも事故リスクの説明責任が果たしやすくなります)。
保管と再使用の品質を左右するのが、使用後のキャップ締めと先端清潔です。参天製薬は「使用後はチューブの先が不潔にならないように注意して、ふたをしましょう」と明記しています。 患者の現実行動として、夜間に枕元で使う・暗い中でキャップを落とすなどが起こるので、可能なら明るい場所、手元にティッシュを用意してから開始、という段取りも一緒に提案すると再現性が上がります。
検索上位の説明は「清潔な綿棒を使う」で止まりがちですが、実務では“どんな綿棒か”で失敗率が変わります。綿球が毛羽立ちやすいタイプだと、微細な繊維が目周囲に残って不快感の訴えにつながりやすいので、患者には「表面がなめらかな清潔綿棒」「個包装」を推奨し、家庭用の開封済み綿棒の使い回しは避けるよう指導します。中村眼科でも、まぶたの縁に塗る際に綿棒使用を明確に推奨しています。
次に、チューブ先端の“最初の一押し”で量が暴発するケースがあります。寒い季節や保管状況で硬さが変わり、いきなり押すと想定外に多量が出るため、患者には「まず少し出して量を確認してから綿棒に取る」という動作を教えると失敗が減ります(この一手間は、過量塗布→溢れ→拭き取り摩擦→刺激、という負の連鎖を止める効果があります)。
さらに、綿棒塗布は“チューブ先端を眼に近づけない”メリットがある一方で、“綿棒先端を眼に近づける”という別のリスクに置き換わります。具体的には、患者が怖くて急に顔を引く、介助者の手がぶれる、という行動が起きやすいので、実施前に姿勢を固定する工夫(肘をテーブルに置く、鏡の前で座る、介助者が肩を支える等)を指導すると安全側に寄ります。参天製薬が示す「下まぶたを軽く下にひいて薬をつける」というシンプルな動作を、ブレない姿勢づくりで再現できるようにするのが現場のコツです。
最後に、医療従事者向けのポイントとして、患者説明は「手順」より先に「禁止事項」を短く伝えると事故が減ります。例えば、以下を“最初に3つだけ”言うと定着しやすいです。
✅やってよい(患者に伝えやすい)
・🧼 手を洗う(開始前に必ず)
・👁️ 下まぶたは軽く下げる(強く引かない)
・⏳ 塗ったら閉眼して待つ(すぐ瞬目しない)
❌やらない(事故を減らす)
・🚫 チューブ先端をまつ毛・まぶた・目に触れさせない
・🚫 綿棒を使い回さない(清潔な綿棒を使う)
・🚫 こすって拭かない(軽く拭き取る)