尿路結石は、腎臓から尿管、膀胱、尿道までの尿路のいずれかに結石が形成される疾患です。特に尿管結石は「人生で経験する三大激痛」の一つと言われるほど、著しい痛みを引き起こします。この疾患は10人に1人が一生に一度は経験するとされる「国民病」の一つでもあります。
尿路結石の代表的な症状には以下のようなものがあります。
特に尿管結石の痛みが激しい理由は、尿管には狭窄部が3か所存在し、そこに結石が詰まると尿の流れが阻害され、尿路内圧が急激に上昇するためです。このときの痛みは持続的ではなく、波状に襲ってくる特徴があり、安静にしていても治まらないことが多いです。
痛みの部位は結石の位置によって異なります。
興味深いことに、結石のサイズや位置によっては全く症状がない「無症候性結石」も存在します。しかし、無症状だからといって放置すると、尿路感染症や腎機能障害につながる可能性があるため注意が必要です。特に水腎症(尿の流れが妨げられて腎臓が拡張した状態)を併発すると、腎機能が徐々に低下していくリスクがあります。
尿路結石が形成される根本的なメカニズムは、尿中の物質が過飽和状態となり、結晶化して凝集・成長することです。結石の主な成分としては以下のものが挙げられます。
結石形成のリスク因子は多岐にわたりますが、大きく分けて以下の要素が関与しています。
尿路結石は家族性傾向があり、第一度近親者に結石患者がいる場合、リスクが2.5倍に上昇するという報告もあります。
特に注目すべき食品としては、シュウ酸を多く含むホウレン草、タケノコ、チョコレート、紅茶などがあります。また、動物性タンパク質や砂糖、塩分の過剰摂取も尿中のカルシウム濃度を上昇させるため注意が必要です。
意外なことに、過度なカルシウム制限は逆効果であることが近年の研究で明らかになっています。適切なカルシウム摂取は腸内でシュウ酸と結合し、シュウ酸の吸収を抑制する効果があるためです。このため、現在では結石予防としてカルシウムの極端な制限は推奨されていません。
尿路結石の診断には、症状の聴取と身体診察に加え、複数の検査が組み合わせて行われます。正確な診断は適切な治療方針の決定に不可欠です。
【問診・身体診察】
医師は以下の点を重点的に確認します。
身体診察では、側腹部の叩打痛(CVA叩打痛)や圧痛の有無を評価します。
【画像検査】
尿路結石の診断において最も重要なのが画像検査です。
尿路結石診断の標準的な検査法として確立されています。診断率・特異性ともに高く、ほぼすべての結石を検出できます。また、結石の位置、大きさ、密度などの情報も得られるため、治療方針の決定に有用です。近年は被曝量を低減した低線量CT(low-dose CT)が普及してきています。
非侵襲的で被曝がなく、腎臓結石や水腎症の評価に有用です。特に妊婦や小児に適していますが、中部尿管などの結石は描出が困難なことがあります。感度はCTより劣りますが、5mm以上の結石については感度・特異度とも95%以上とされています。
カルシウム含有結石(レントゲン不透過性結石)の検出に有用ですが、尿酸結石などのレントゲン透過性結石は描出困難です。経過観察には簡便な方法として用いられています。
造影剤を静脈内投与し、尿路の形態や閉塞部位を評価する検査です。現在はCTの普及により実施頻度は減少していますが、上部尿路の閉塞や尿路奇形の評価に有用です。
【尿検査・血液検査】
【結石分析】
排出された結石の成分分析は、結石の種類を特定し、再発予防策を立てる上で非常に重要です。赤外分光分析法やX線回折法などが用いられます。
医療機関では、これらの検査結果を総合的に判断し、結石の大きさ、位置、患者の症状、腎機能などを考慮して最適な治療戦略を立案します。特に結石のサイズと位置は、自然排石の可能性や治療法選択の重要な因子となります。
尿路結石の治療は、結石のサイズ、位置、症状の重症度、腎機能などを総合的に判断して選択されます。治療法は大きく分けて保存的治療と積極的治療に分類されます。
【保存的治療】
小さな結石(特に5mm未満)は自然排石が期待できるため、十分な水分摂取と適切な疼痛管理を行いながら経過観察することが多いです。
10mm未満の結石については、約70%が3-4週間以内に自然排石するとされています。しかし、10mm以上の結石や、4週間以上経過しても排石されない場合、また