ペースメーカー死ぬとき波形と心電図スパイク

ペースメーカー装着患者さんが「死ぬとき」、モニターに何が映り、何が映られないのかを医療従事者向けに整理します。スパイクやQRS、PEAや心静止の考え方を臨床の観察ポイントでつなぐと、誤認のリスクはどこにあるのでしょうか?

ペースメーカー死ぬとき波形

ペースメーカー死ぬとき波形:この記事で掴む要点
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「スパイクがある=生存」ではない

心電図のスパイクはジェネレーターの刺激であり、心筋の収縮(拍出)を保証しません。

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波形は「ペーシング」「センシング」を分けて見る

スパイクの有無、スパイク後のQRSの有無、設定周期どおりかで、異常の切り分けができます。

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終末期は「捕捉できない」ことが起こる

虚血・アシドーシス・電解質異常などで閾値が上がり、スパイクが出てもQRSが出ない状況があり得ます。

ペースメーカー死ぬとき波形:心電図スパイクとペーシング波形の基本

ペースメーカーの「ペーシング波形」は、心電図上で見える刺激(スパイク)と、それに続くP波やQRS波の並びで理解します。
スパイクは「ペースメーカーが刺激を出した痕跡」であって、必ずしも「心筋が反応した(捕捉した)」ことを意味しません。
臨床でまず押さえるべき観察は、①設定心拍数(周期)どおりにスパイクが出ているか、②スパイクの直後にQRS波が出ているか、の2点です。


参考)ペースメーカー装着患者の観察ポイント

とくにVVIなど心室ペーシングでは、スパイクの後に幅広いQRS波が続くのが典型で、ここが崩れると「刺激は出ているのに心室が興奮していない」状況を疑います。


参考)ペーシング波形【ナース専科】

現場では「スパイクが見えない」こと自体が直ちに異常とは限らず、誘導や出力・フィルタで目立たないケースもあるため、規則正しい幅広QRS(ペーシングQRS)が出ているかも合わせて見ます。

この“スパイクを見る/QRSを見る”の二段階に分けるだけで、終末期に起こる誤解(スパイク=生存など)をかなり減らせます。

ペースメーカー死ぬとき波形:スパイクだけ残る「ペーシング不全(捕捉不全)」の見え方

スパイクが規則正しく並んでいるのに、後ろにQRS波が続かない状態は、典型的に「ペーシング不全(捕捉不全)」として説明されます。
看護roo!の解説では、スパイクは出ているがQRS波がない例を示し、補充調律による自己心拍が時々混ざることもある、と整理しています。
終末期や急変時は、リード位置の問題だけでなく、心筋虚血・低酸素・アシドーシス・高K血症などで刺激閾値が急に上がり、「普段は捕捉できていた設定でも捕捉できない」方向へ振れやすい、というのが臨床感覚として重要です。

このときモニター上は「スパイクはある」ため、心電図だけ見ていると“動いているように見える”のが落とし穴になります。

対応の考え方として、体外式なら接続・リード位置確認、植込み型なら循環器へ連絡しつつ、少なくとも「スパイクの有無」ではなく「スパイク後のQRS(捕捉)の有無」で緊急度を判断するのが基本線です。

一方で心肺停止が疑われる状況では、心電図の整合性よりも、患者の反応・呼吸・脈の評価を最優先する、という原則がさらに上位に来ます。


参考)心肺停止(CPA)の心電図波形

ペースメーカー死ぬとき波形:PEAと心静止、死亡確認での波形の限界

心肺停止(CPA)の心電図波形としては、VF、無脈性VT、心静止(asystole)、PEAが教科書的に並びますが、PEAは「この波形がPEA」という固定形がない点が重要です。
看護roo!は「たとえ心電図が正常に見えても、患者が心肺停止状態ならそれはPEA」という趣旨を明確に述べており、波形だけで生死を決めない姿勢を強調しています。
ペースメーカー装着患者さんでは、この“PEAに固定波形はない”という事実が、さらに混乱を呼びます。

つまり、モニターにスパイクや整ったリズムが出ていても、実際に拍出がなければ(触知脈がなく、呼吸がなく、反応がないなら)「心肺停止として扱う」判断が求められます。

医療従事者向けに言い換えると、ペースメーカー関連の急変では「電気(ECG)」「機械(脈・血圧)」「臨床(意識・呼吸)」を必ず分離して評価し、電気がある=機械がある、を決めつけないことが安全策です。

また、死亡確認やDNAR下の観察では施設ルール・医師指示が前提ですが、少なくとも「モニター上のスパイク残存」自体は死亡を否定する根拠にならない、という理解は共有しておく価値があります。


ペースメーカー死ぬとき波形:アンダーセンシングとオーバーセンシングが終末期で紛らわしくなる理由

ペースメーカーの異常は大きく「ペーシング異常(出す/捕まえる)」と「センシング異常(感知する)」に分けると整理できます。
センシング異常では、自己QRSを感知できず不要なスパイクが出る「アンダーセンシング」と、T波やノイズなどまで感知して必要な刺激が出にくくなる「オーバーセンシング」が基本概念です。
終末期・急変時は、体動や筋電図、低灌流に伴う波形の変形、電極不良などが重なり、「機械側が誤って感知しているだけなのに、心臓の状態変化のように見える」状況が起きます。

逆に、心筋の電位が小さくなって自己QRSの検出が難しくなると、アンダーセンシング様に見えて“規則正しくスパイクが出続ける”ため、これも「まだ動いている」錯覚を生みやすいです。

したがって終末期のモニター観察では、波形診断を詰める前に、次の最低限のチェックを先に行うのが実務的です。


・電極の浮き、皮膚発汗、ケーブル断線、誘導の取り違えをまず潰す。

・スパイクの規則性(設定周期に近いか)と、スパイク後QRSの有無(捕捉の有無)をセットで見る。

・患者の呼吸・反応・触知脈を確認し、疑わしければCPA対応の原則に戻る。

ペースメーカー死ぬとき波形:独自視点として「モニター表示の設計」と教育で事故を減らす

ここからは検索上位に多い「波形の読み方」から一歩進めて、医療安全の観点で“モニターに何が表示されると人は誤認するか”を意識します。
ペースメーカー患者の終末期では、心電図に「スパイク」という視覚的に強い記号が残り得るため、スタッフの注意がスパイクへ吸い寄せられ、脈・呼吸の確認が遅れる、というヒューマンファクター上のリスクが潜みます。
対策は、個人の経験則に依存させず、チームで再現性を持たせるのが現実的です。


・申し送りの定型句を作る:例「ペースメーカーあり。急変時はスパイクより触知脈・呼吸を優先」。

・教育の焦点を変える:波形暗記より「電気と機械の乖離(PEA)」を最初に叩き込む。

・記録の書き方を統一する:例「スパイクあり/捕捉なし(QRS追従なし)」のように、スパイク単体で表現しない。


また、波形教育の“意外な盲点”として、ペースメーカーのスパイクは小さく見えないこともある一方、ノイズやフィルタでスパイク様に見える線が増えることもあり、表示=実体ではない点を新人ほど誤解しやすいです。

だからこそ、終末期の「死ぬとき波形」を扱う記事は、波形の名前当てではなく、観察→切り分け→対応の順に書いておくと、現場の行動が揃いやすくなります。


ペーシング波形(スパイク)とQRSの関係、ペーシング不全、センシング不全という3点セットを、急変時の優先順位(人を見よ)と結びつければ、ペースメーカー装着患者さんの終末期で起こりがちな誤認をかなり抑えられます。


ペーシング波形(スパイク、AAI/VVI/DDDの基本、異常の読み取り)についての定義と整理。
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