届出なしでPRP療法を実施すると、50万円以下の罰金が科されます。
PRP療法(Platelet-Rich Plasma:多血小板血漿療法)は、自身の血液から抽出した高濃度の血小板を濃縮し、患部に注入する再生医療です。美容領域では、しわ・たるみ・ほうれい線・目の下のクマ・ニキビ跡などの改善を目的として広く活用されています。
料金相場が「幅広すぎる」と感じる医療従事者は多いでしょう。実際、1回あたりの費用は施術部位・使用するPRPキットの種類・クリニックの規模によって大きく異なります。
部位別の一般的な相場は以下のとおりです。
費用の内訳には、血液採取料・血液感染症検査費用・PRP作成費用・施術料・麻酔代金が含まれます。これが原則です。患者さまの症状の重さによっては、手技料として別途費用が発生するケースもあります。
比較として知っておきたいのが、ヒアルロン酸注入との費用比較です。顔全体にヒアルロン酸を注入する場合は必要量が非常に多くなるため、総額が100万〜150万円に及ぶこともあります。PRP療法の顔全体施術が20〜50万円であることと比べると、コストパフォーマンスの面ではPRP療法が優位に立つ場面も少なくありません。
効果持続期間も料金評価の重要な要素です。血小板のみを使用するタイプで約1年間、成長因子(FGF等)を添加したプレミアムタイプで約3〜5年間の持続効果が報告されています。これは使えそうです。
なお、同一施術でもクリニックによって料金設定に2〜3倍の価格差が生じることがあります。この背景には、PRP精製キットの品質差・医師の技術料・設備維持コストの違いがあります。安すぎる料金設定には、衛生管理や手技の質に課題がある可能性も否定できません。料金の適正さを評価する目を持つことが条件です。
参考:PRP療法の部位別費用相場・料金内訳の詳細(Z Clinic公式)
PRP療法(再生医療)とは?費用や効果など徹底解説 - Z Clinic
医療従事者にとって最重要の知識がこれです。PRP療法は「再生医療等の安全性の確保等に関する法律(再生医療安全確保法)」の規制対象であり、美容目的で提供する場合も例外なく法的義務が発生します。
PRP療法は同法における「第3種再生医療等技術」に分類されます。第3種とはリスクが比較的低いとされるカテゴリですが、だからといって届出が不要なわけではありません。
実施前に必要な手続きは以下のとおりです。
これらの手続きを行わず無届けでPRP療法を実施した場合、50万円以下の罰金が科されます。さらに第1種再生医療(幹細胞移植など)では1年以下の懲役・100万円以下の罰金、緊急命令に従わない場合は3年以下の懲役・300万円以下の罰金という重い刑罰規定もあります。厳しいところですね。
2017年には複数の医療機関に対して厚生労働省が緊急命令を下した事例もあります。「自院内でPRPを作っているから届出は関係ない」という誤解が、法律違反につながるケースが実際に発生しています。
また、2026年2月には「プレミアムPRP皮膚再生療法」を受けた患者3名が、合計1,850万円の損害賠償を求めて提訴した訴訟がメディアで報じられました。しこり・膨らみなどの副作用に対し医師が失敗を認めなかったとされる事案であり、説明義務(インフォームド・コンセント)の徹底も今後ますます問われます。
届出状況は厚労省の公開リストや再生医療情報提供サイトで確認可能です。自院の届出状況を今一度確認することを強くお勧めします。
参考:再生医療安全確保法の手続きと届出義務(厚生労働省公式)
再生医療・遺伝子治療等について|厚生労働省
参考:美容クリニック向けの再生医療安全確保法の実務解説
美容クリニックは要注意!再生医療等安全性確保法の基本と届出義務 - ネクスパート法律事務所
「同じPRP療法なのに、なぜA院は15万円でB院は50万円なのか」——この疑問は患者さまからよく出てきます。価格差の背景を正確に説明できることは、医療従事者として信頼獲得に直結します。
価格差を生む主な要因は3つです。
要因①:使用するPRP精製キットの品質差
現在、国内で使用されているPRP精製キットには複数の種類があり、血小板濃縮率・純度・安全基準がそれぞれ異なります。高性能なキットを使用するほどコストが上がるため、施術料金に反映されます。1回の遠心分離で済む簡易キットと、二重遠心分離で高純度PRPを作る精密キットでは、製造コストに2倍以上の差が生じることもあります。
要因②:成長因子(FGF等)の添加有無
単純なPRPに加え、bFGF(塩基性線維芽細胞増殖因子)などの成長因子を添加した「プレミアムPRP」は、通常のPRPより高い効果を期待できる一方、料金も大幅に上昇します。ただし、FGF添加には組織の過剰増殖リスク(しこり・膨らみ)があり、2026年現在も訴訟に発展している事例があるため、リスク説明が必須です。
要因③:医師の技術料と設備維持費
再生医療に習熟した専門医による施術は、単価が高くなります。日本再生医療学会や日本美容外科学会などの専門学会に所属する医師が在籍するクリニックは、相応の技術料が加算されていることが多いです。これは安心のコストとも言えます。
施術一般的な相場感を再整理すると、「1クリニックあたり15万〜60万円の幅」があると考えておくと現実的です。安すぎる価格帯(数万円台)のPRP療法には、遠心分離の回数削減や衛生管理の簡略化などのリスクが潜む可能性があります。患者さまへの情報提供時は、価格の安さだけで選ばないよう促すことが原則です。
「PRP療法も医療費控除が使えますよね?」——この質問に正確に答えられることが、患者さまの信頼獲得と後々のトラブル防止につながります。意外ですね、実は目的によって扱いが全く異なります。
医療費控除の適用可否は「治療目的か美容目的か」によって分かれます。
| 目的 | 対象可否 | 具体例 |
|------|----------|--------|
| 治療目的 | ✅ 対象 | 変形性膝関節症・半月板損傷・腰椎椎間板ヘルニアへのPRP療法 |
| 美容目的 | ❌ 対象外 | しわ・たるみ・ほうれい線改善・ニキビ跡改善目的のPRP療法 |
つまり「容ぼうを美化する」ことが主たる目的の場合は医療費控除の対象外です。
ただし、注意が必要なケースもあります。例えば「ニキビ跡の治療」は、皮膚疾患の治療として捉えられるかどうかで判断が変わる場合があります。最終的には税務署の判断となるため、患者さまには「個々のケースは税務署への確認をお願いする」形での説明が安全です。
また、整形外科でのPRP療法と美容クリニックでのPRP療法を同年に受けた患者さまが、「全部まとめて控除できる」と誤解しているケースも散見されます。整形外科分は控除対象、美容分は対象外と個別に分けて申告する必要があることを伝えるのが正確な対応です。
患者さまへの説明時は「美容目的は控除対象外になることが多い。詳細は税務署に確認を」と案内しておくのが実務上もっとも安全です。控除対象外という点だけ覚えておけばOKです。
参考:再生医療の医療費控除適用条件の詳細解説
再生医療の費用は控除できる?医療費控除の正しい知識 - knee-cell.com
PRP療法は自己血を用いた比較的安全な再生医療ですが、実際にはトラブル事例が増加しています。2026年2月には患者3名が合計1,850万円の損害賠償を請求した訴訟が提訴されており、医療従事者として適切なリスク説明体制を整備しておくことが急務です。
起きやすいトラブルとその発生背景を整理します。
| トラブル種別 | 発生原因 | 予防策 |
|---|---|---|
| しこり・膨らみの形成 | PRP濃度の過剰設定、注入層の誤り | 適切な濃度設定・解剖学的知識に基づく注入層の選択 |
| 感染症リスク | 血液処理工程における不衛生な操作 | 認定された無菌操作プロトコルの遵守 |
| 効果不足・無効 | 個人差(血小板機能の差)・技術不足 | 事前の血液検査による血小板機能確認 |
| FGF添加による過増殖 | 成長因子の過剰添加 | FGF使用の際は十分なインフォームド・コンセント |
特に「しこり・膨らみ」は、施術後数ヶ月〜数年後に顕在化することがあります。これは患者さまが「失敗」と認識しやすい症状であり、説明不足があった場合は訴訟リスクに直結します。
PRPの注入部位としては皮膚の真皮層〜皮下が適切ですが、浅すぎると膨らみが目立ち、深すぎると効果が薄れます。1ccあたりの誤差が数ミリ単位の判断に依存する施術であるため、施術医の経験・技術量が直接結果に影響します。東京ドームの内野グラウンド1面分(約13,000㎡)の広さで言えばイメージしにくいですが、注入量1ccは角砂糖1個よりも少ない量だという点で、いかに精密な手技が求められるかが伝わるでしょう。
インフォームド・コンセントで必ず伝えるべき内容は以下のとおりです。
これらを事前に文書化し、患者さまのサインを得ておくことがリスク管理の基本です。インフォームド・コンセントの徹底が原則です。
参考:PRP療法の失敗事例とリスク管理の解説
PRP療法の具体的な失敗例とは?治療のメリットと注意点を徹底解説 - ヒロクリニック
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自己血由来の成長因子を用いた再生療法PRFと自己トロンビンを使用したPRPの生成方法とその臨床応用[歯科 DE124-S 全2巻]