薬局実務で「5年」が最も明確に文章化されているのが、厚生労働省が案内する「電子処方箋保存サービス」です。ここでは保存期間がはっきり「薬局において調剤された日から5年」とされています。さらに重要なのが、その後「3か月の猶予期間」を経過した時点で、保存対象データが電子処方箋管理サービスから自動削除される点です。つまり、保存サービスに任せ切りにすると「5年で永久に残る」わけではなく、5年+猶予のタイミングで“消える設計”になっています。
この仕様は、監査対応や医療安全の振り返りで「過去の処方内容を見たい」となった時に効きます。たとえば、疑義照会の経緯や剤形変更、後発品変更などを説明する必要が出た場合、保存期間内に確実に取り出せる状態であることが、結果的に現場の負担を減らします。逆に言うと、削除前に「必要に応じてダウンロードして取得すること」とされているので、施設内の運用として“誰が・いつ・何を・どこへ退避するか”を決めておかないと、肝心なときに参照できないリスクが残ります。
また、保存サービスは電子処方箋だけでなく、紙処方箋を含めた調剤結果データも5年間保存できる「希望制の有償サービス」と説明されています。年額2,500円/施設という費用感も示され、調剤報酬支払額から控除される運用が書かれているため、導入判断はコストよりも「保存の一元化」「災害対策」「原本として扱えるデータ」の価値で評価するのが実務的です。
電子処方箋保存サービスの「いつから」を言い換えるなら、患者の受診日でも、処方箋の交付日でもなく、薬局側で“調剤した日”が起点です。ここを混同すると、保存期限の計算がズレます。たとえば、月末に交付された処方箋を翌月初に調剤した場合、起算は翌月初(調剤日)になります。紙の管理でも電子の管理でも、まずは“起算の基準を1つに固定する”ことが、保存期限ミスを減らす最短ルートです。
電子処方箋保存サービスの趣旨や、保存期間(調剤日から5年)、猶予期間(3か月)、削除前のダウンロード注意点がまとまっています。下記が一次情報です。
電子処方箋保存サービスの保存期間・猶予期間・削除の扱い(第2の(3))
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001261422.pdf
「いつから」を混乱させる要因は、現場に“日付が3種類”あることです。具体的には、(1)処方箋の交付日、(2)薬局の調剤日、(3)保存サービスへの登録日(調剤結果登録日)です。厚労省の案内では、保存サービスは「保存開始日以降に保管登録があった」調剤済み処方箋が対象となり、保存は「調剤年月日から5年間」と整理されています。つまり、サービスの利用開始(保存開始日)より前の分は、原則として保存対象に入りません。
さらに、見落としやすい実務ポイントとして「既に調剤した処方箋も、調剤結果登録日から100日以内であれば保管可能」と明記されています。ここは誤解が起きやすく、「100日以内なら過去分が5年全部いける」と短絡しがちですが、実際には“登録できる猶予が100日”という意味合いに近く、運用設計としては「調剤後すぐ登録されるフロー」を前提にしておくべきです。忙しい店舗ほど、登録漏れが起きた時に100日を超えて救済できないケースが出ます。
また、保存サービスの説明には「保存した電子処方箋の調剤結果データは原本として扱うことができ、監査等の際に取り出すことも可能」とあります。ここは“紙の原本を捨てていいか”の話と混同されがちですが、少なくとも行政・監査対応の観点では「原本性(改ざんされていないことの担保)」が重要で、タイムスタンプや電子署名の考え方が絡みます。紙を捨てる/捨てないの前に、監査時に「いつ、誰が、どう保存し、どう取り出せるか」を説明できるかをチェック項目にしてください。
実務でおすすめなのは、保存期限の“計算”を人に任せず、ルールを固定してシステム化することです。たとえば、管理台帳やシステムの項目に「調剤日」「保存期限(調剤日+5年)」「削除予定(+5年+3か月)」を持たせます。こうすると「交付日」「受付日」「入力日」が混じっても、最終的に“期限を決めるのは調剤日”と統一できます。
電子処方箋保存サービスの対象、保存開始日、100日以内の扱い、原本として取り出せる点がまとまっています。
紙処方箋を含む調剤結果の5年保存、100日以内登録など(メリット欄)
https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/001231540.pdf
検索上位で頻出するのが、「処方箋は3年?それとも5年?」という論点です。制度としては、薬局における処方箋保存は長らく3年が基本線として扱われてきました。一方で、実務では5年保存を選ぶ薬局も多く、これは“単に長く持てば安心”という感覚論だけではなく、監査・返戻・再請求などの保険請求業務や、公費負担医療の要件などと結びついて語られることが多い領域です。
ただし、ここで大切なのは「あなたの施設が今、どの根拠で5年と言っているか」を言語化することです。なぜなら、同じ「5年」でも、起算日が「完結の日」と書かれている文脈と、「調剤日」と書かれている文脈が混在しやすいからです。起算が違えば、保存期限が数日〜数か月ズレることがあり、監査や問い合わせ対応で説明がブレます。特に複数店舗や複数システムがある法人ほど、誰が見ても同じ計算結果になるルールが必要です。
現場に落とし込むと、次のように整理すると運用が安定します。
また、直近の行政動向として、保存期間を3年から5年へ見直す検討が進んでいることが報じられています(医療機関の保存年限との不整合解消、電子化で保管が容易、などの背景)。この流れは、薬局が“5年保存に寄せた運用”をとることを後押しする材料になりますが、法改正が完全に実施されるタイミングや経過措置の扱いは別途確認が必要です。記事を書く場合は、「現時点で確定している運用(例:保存サービスの仕様)」と「検討・方針段階の話」を混ぜずに書くと、読者の誤解を減らせます。
保存期間の議論は年数が注目されがちですが、監査やトラブル対応で本当に問われるのは「取り出せるか」「説明できるか」「改ざんされていないか」です。厚労省資料でも、電子処方箋では電子署名、タイムスタンプ付与、電子処方箋管理サービスでの登録・返却といった流れが示されています。ここから逆算すると、薬局が押さえるべきは“電子データの原本性”と“運用の証跡”です。
おすすめの管理ポイントを、現場で使える形にまとめます。
意外と盲点なのが「削除前に退避する」運用です。保存サービスに乗せた瞬間に安心してしまい、5年後に初めて“自動削除”を知る、という事故が起きがちです。実務上は、5年を超えて参照する可能性がゼロでない(訴訟、長期の監査対応、再発防止の教育資料など)なら、削除前の退避条件を定めておく価値があります。ここは施設のリスクプロファイル次第なので、“退避は例外対応に限定し、基本は削除でよい”でも構いませんが、例外条件だけは先に決めてください。
検索上位は「何年保存?」「法令は?」に寄りがちですが、現場で多いのは“年数ではなく日付ズレ事故”です。特に「いつから」のズレは、日々の入力や運用の小さな違いから発生します。ここでは、薬局・医療機関の双方に関係しやすい、実務的なチェック項目をまとめます(独自視点の関連内容として、監査・問い合わせ時に刺さるポイントに寄せます)。
日付ズレが起きやすいパターン(要注意)
対策はシンプルで、「起算日の定義を1行で言えるようにする」ことです。例。
この1行があるだけで、店舗内の会話も、監査時の説明も、システム設定も、全部が揃いやすくなります。
さらに、厚労省資料で明示されている“調剤日から5年”と“猶予3か月”の仕様は、院内研修や新人教育に組み込みやすい題材です。新人が最初につまずくのは「保管=倉庫」「保存=サーバ」など用語の揺れですが、ここも「調剤日基準」と「削除前退避」で統一すると、言葉のブレが実害に直結しにくくなります。業務マニュアルに落とすなら、期限計算の例(具体的日付)を1つだけ載せるのが効果的です(例:2026/1/29に調剤→2031/1/29まで、さらに3か月猶予の考え方、など)。
最後に、施設の方針として「紙をいつ廃棄できるか」は別論点です。保存サービスが「原本として扱える」と説明している一方、通知文書では保存対象の範囲や、紙処方箋は当該薬局で保存する旨の注意も書かれています。紙の廃棄判断は、法令・ガイドライン・監査実務・自治体指導の運用で差が出やすいので、必ず施設の責任者判断とセットで運用化してください。