処方欄の先頭でよく見る「Rp.」は recipe(処方)の略として紹介されることが多く、処方のまとまり(指示の単位)を示す記号として理解しておくと読みやすくなります。
同様に「R」「Rp.」を recipe(処方せよ)とする整理もあり、処方の“開始点”の目印として機能します。
「p.r.n.」は pro re nata(必要により)で、頓用・疼痛時・発熱時など「症状に応じて」使用する指示で出会う代表例です。
一方「do(Do処方)」は「前回と同じ内容」を示すことがあり、患者が同一薬を継続している前提で処方が書かれると、薬歴・前回処方・併用薬との照合が重要になります(Doだから安全、ではありません)。
参考)薬剤師は覚えておきたい処方箋の略語一覧【新人必見の完全ガイド…
Doが付いた処方は「変更なし」を意味することが多い反面、患者側の状況は変わり得るため、直近の腎機能・体重変化・副作用訴えなど“薬以外の変数”も意識して確認すると実務で役立ちます(例:NSAIDs頓用の頻回化、眠剤の追加希望など)。
なお、略語は省スペースで便利ですが、施設・地域・診療科で慣習差があるため「見慣れた略語=同じ意味」と決め打ちしない姿勢が安全につながります。
参考)https://www.kpa.or.jp/docs/download/bbc70cd6c9dd4b0516acb3cc0aaa230b-1.pdf
服薬タイミング系の略語は、患者説明の核になるため最優先で押さえる価値があります。
食前は v.d.E a.c.(ante cibos)、食後は n.d.E p.c.(post cibos)、食間は z.d.E i.c.(inter cibos)、就寝前は v.d.S h.s.(hora somni)として一覧化されています。
さらに、食直後を sofort n.d.E / stat.p.c. とする整理もあり、「食後」と「食直後」が同一視されると薬効・副作用の出方が変わる薬もあるため注意が必要です。
参考)https://www.semanticscholar.org/paper/d66efb653ef0d161330513abafe9ef2c782740bf
例えば、食直後指定は“飲み忘れ対策”の意味で使われることがあり、患者の生活リズムや食事内容(そもそも朝食を抜く等)まで踏み込むと、遵守率が大きく改善することがあります。
用法・用量の記載は「1回あたり使用量」「1日あたり使用回数」「使用時点」「投与日数(回数)」を明確にすることが重要だとされ、略語を読む側もこの要素が揃っているかをチェックすると見落としが減ります。
参考)https://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/06/dl/s0622-4d.pdf
外用(点眼・吸入など)では特に「使用量」「使用回数」「使用部位」を明記する重要性が繰り返し示されており、略語だけで完結させない運用が推奨されます。
参考:処方せん記載の基本(医薬品名・分量・用法用量の考え方)
厚生労働省資料:処方せんの記載方法について(薬剤師の立場から)
頻度・回数の略語は、飲み方の骨格(間隔)に直結します。
代表的には s.i.d.(1日1回)、b.i.d.(1日2回)、t.i.d.(1日3回)、q.i.d.(1日4回)が一覧化されており、処方鑑査では「回数」だけでなく「間隔が等分か」「食事と結びつくか」まで確認すると安全です。
また q.6.h. は quaque 6 hora(6時間ごと)で、1日4回相当になり得ますが、起床時間や就寝時間の制約で現実の投与間隔は崩れやすい点が落とし穴です。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC3932450/
「1日4回」と「6時間ごと」は似て非なるもので、抗菌薬や鎮痛薬などで“等間隔投与”の意味合いが強い場合、患者説明では「朝昼夕寝る前」ではなく「6時間おき」を具体的にどう実装するか(例:起床後、昼、夕、就寝前、夜間は無理しない等)をすり合わせる必要が出ます。
隔日を dieb.alt.(diebus alternis)、3日毎を dieb.tert. とするような、周期系の指示もまとめられています。
この手の周期指示は、カレンダー服薬や一包化ラベルの工夫で事故が減りやすい一方、略語のまま患者に渡ると誤解が起きやすいので、調剤側で“自然文への翻訳”を徹底するのが実務的です。
参考:内服薬の「1回量」記載の考え方(検討会報告)
WAM NET:内服薬処方せんの記載方法の在り方に関する検討会報
剤形の略語は、調剤行為そのもの(計数・計量・交付形態)に直結します。
例として tab.(錠剤)、Pulv.(散剤)、Suppo.(坐剤)、Garg.(含嗽剤)、Lot.(ローション)が一覧で整理されています。
外用の部位・対象を示す略語として、O.D.(右目)、O.L.(左目)、O2(両目)といった表記もあり、点眼では「回数」だけでなく「どちらの眼か」が安全性の核心になります。
吸入薬や点眼薬は規格違い・回数違いが多く、使用量や使用回数を明記する重要性が示されているため、略語を読めても最終的に“患者が実行できる指示”になっているかをチェックするのがポイントです。
特にO.D./O.L.のような短い略語は、急いで読むと見落としや取り違えのリスクがあるため、監査では「部位」欄を指差し確認したり、疑義照会の基準(例:左右の指定がないのに薬効が片眼想定など)を施設内で共有しておくと再現性が上がります。
検索上位の“略語一覧”は暗記用に便利ですが、現場の安全性は「施設内で実際に出る略語を棚卸しして、禁止・注意・許容を決める」運用で大きく変わります。
例えば、処方せんの記載は用法・用量の要素(1回量、回数、時点、日数)を明確にする考え方が示されているため、略語がその要素を欠く場合は「読める/読めない」ではなく「情報が足りない」と判断して確認するのが合理的です。
実務で効く“翻訳テンプレ”を用意すると、患者対応が速くなり、説明の揺れも減ります。
さらに一歩進めるなら、患者向けには「略語を日本語に直す」だけでなく、「いつ・どれくらい・どのくらいの期間」を1文で言い切る形に整えるのが効果的です(例:『朝食後と夕食後に1回1錠、14日間』のように、回数と期間を同じ文に置く)。
参考)https://www.wam.go.jp/wamappl/bb13GS40.nsf/0/7538b35e342d1e1c4925767f00202ad1/$FILE/20091201_6shiryou4.pdf
この“1文化”は、疑義照会の要否判断にも使えます(1文にできない=情報が欠けている可能性が高い、というサインになるため)。
参考:調剤事故を防ぐための具体例(用法・用量、余白処理、外用の書き方の注意など)
神奈川県薬剤師会:「院外処方箋の正しい書きかた」(改訂版)