鎮痛薬は作用機序に基づいて分類され、疼痛の強さと種類によって適切な選択が求められます。基本的な分類として、非オピオイド系、オピオイド系、そして神経障害性疼痛に特化した薬剤の3つに大別されます。
非オピオイド系鎮痛薬は主に以下のように分類されます。
アセトアミノフェンは弱い鎮痛薬に分類されますが、推奨用量では安全性が高く、軽度から中等度の痛みに広く使用されています。効果は2〜4時間持続し、経口、直腸、静脈内投与が可能です。
神経障害性疼痛に対しては、従来の鎮痛薬では効果が限定的なため、三環系抗うつ薬や抗てんかん薬が代替として考慮されます。デュロキセチンなどのSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)も鎮痛薬として用いられており、慢性疼痛管理において重要な役割を果たしています。
オピオイド系鎮痛薬は強度によって弱オピオイドと強オピオイドに分類され、2018年のWHO方式がん疼痛治療法改訂以降、患者の状態によっては診断時や治療中でも病期にかかわらず強オピオイドが使用されるようになっています。
弱オピオイドの代表例。
強オピオイドの主要薬剤。
各オピオイドの特徴的な副作用として、モルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルフォンでは悪心・嘔吐、便秘、眠気が主な副作用ですが、フェンタニルでは便秘や眠気が比較的少ないという利点があります。
オピオイド鎮痛薬は経口投与が基本とされていますが、患者の状態に応じて多様な投与経路が選択可能です。投与経路の選択は患者の嚥下機能、意識レベル、消化管の状態、疼痛の急性度などを総合的に判断して決定されます。
経口投与。
経皮投与。
口腔粘膜投与。
注射投与。
投与経路変更時には簡易換算表を参考にしますが、モルヒネ経口30mgを基準とした場合、トラマドールでは5倍の150mg、ヒドロモルフォンでは5分の1の6mgに換算されます。ただし、これらの換算値はあくまで目安であり、実際の投与量は患者の状態に合わせて慎重に調整する必要があります。
腎機能障害患者における鎮痛薬選択は、薬物の代謝と排泄経路を十分に理解した上で行う必要があります。特にオピオイド鎮痛薬では、腎機能障害の程度によって使用できる薬剤に制限があることを理解しておくことが重要です。
モルヒネの注意点。
腎機能障害患者に比較的安全な選択肢。
オキシコドンとヒドロモルフォン。
NSAIDsの腎機能への影響。
腎機能障害患者では、薬物動態の変化により予期しない副作用が出現する可能性があるため、開始時は低用量から開始し、効果と副作用を慎重にモニタリングしながら調整することが求められます。
鎮痛薬使用患者の看護において最も重要なのは、適切な疼痛マネジメントの支援と副作用の早期発見・対処です。患者が疼痛を我慢せず、適切な疼痛管理を行うためには、医療従事者の継続的なサポートが不可欠です。
疼痛アセスメントツール。
オピオイド鎮痛薬の主要副作用と対策。
レスキュー薬の自己管理システム。
一部の医療機関では、以下の条件を満たした患者に対してレスキュー薬1回分の自己管理を実施しています。
この取り組みにより、突出痛に対する迅速な対応が可能となり、患者のQOL向上につながっています。
疼痛管理における多職種連携。
効果的な疼痛管理には、医師、看護師、薬剤師、理学療法士などの多職種連携が重要です。定期的な疼痛評価結果の共有、副作用モニタリング、薬物療法以外のアプローチの検討など、包括的なケアプランの立案と実施が求められます。
患者教育においては、鎮痛薬に対する誤解や不安を解消し、適切な使用方法を指導することで、治療アドヒアランスの向上を図ることができます。疼痛は患者の主観的体験であることを理解し、患者の訴えを真摯に受け止める姿勢が重要です。