タミフル(オセルタミビルリン酸塩)の副作用は、全体で27.5%の患者に出現する可能性があります。最も頻繁に報告される副作用は消化器系の症状で、悪心が約10%、嘔吐が約8%、下痢が約6%の頻度で発現します。
軽度の副作用一覧。
これらの消化器症状は特に空腹時の服用で出現しやすく、食後服用により軽減できることが知られています。軽度の副作用の場合、消化の良い食事(うどんや粥など)を摂取し、めまいがある場合は転倒リスクを考慮して急な立ち上がりを避けることが推奨されます。
タミフルの最も注目すべき副作用は、神経・精神系の症状です。厚生労働省の報告によると、10歳以上の未成年者での異常行動が特に問題となっており、日本では10~19歳の患者には原則として使用が控えられています。
重篤な神経・精神症状。
動物実験では、離乳前ラットにタミフルを投与した際に低体温、運動抑制・睡眠、呼吸異常・呼吸緩徐・呼吸不規則などの中枢抑制剤と同様の反応が確認されています。これらの症状は中枢神経系への直接的な影響を示唆しており、臨床現場では慎重な観察が必要です。
タミフルによる内臓器官への重篤な副作用は、生命に関わる可能性があるため特に注意が必要です。
肝機能障害関連。
腎機能障害関連。
血液・循環器系。
厚労省が関連を認めた死亡例では、80代男性が38℃の発熱でタミフルを5日間服用後、服用終了翌日に肝腎肺障害による多臓器不全で死亡した事例が報告されています。このような重篤な副作用は服用終了後も継続して観察が必要です。
タミフルによる皮膚・アレルギー反応は、軽度なものから生命に関わる重篤なものまで幅広く存在します。
軽度な皮膚症状。
重篤な皮膚症状。
アナフィラキシー症状。
これらの症状は数時間から数日で出現する可能性があり、タミフル内服中だけでなく、インフルエンザ症状が治った後もしばらくは注意深い観察が必要です。特に顔色や手・足の色が紫色になる、皮膚に赤い発疹や蕁麻疹ができるなどの症状が見られた場合は、迷わず医療機関への受診が重要です。
医療従事者は、タミフル服用患者の副作用発現時に迅速かつ適切な対応を行う必要があります。副作用の判別は、①熱性せん妄、②脳炎・脳症、③タミフルの副作用の3通りの可能性があり、即座の判断は困難であることを理解しておく必要があります。
緊急対応が必要な症状。
観察ポイント。
自身で体調の変化を伝えることが困難な患者や小児では、以下の症状がないか継続的な観察が重要です。
研究では、タミフルと代謝物が神経興奮作用を持つことが確認されており、海馬スライス実験でのペアードパルス促通現象の誘発や、エタノールとの相互作用による体温低下の増強などが報告されています。これらの基礎研究データは、臨床での神経症状の機序を理解する上で重要な知見となっています。
医療従事者は、副作用と思われる症状が出現した場合、患者・家族に対して自己判断での服用中断を避け、必ず医療機関への相談を指導することが重要です。また、症状の詳細な記録と適切な報告により、薬剤の安全性向上に貢献することができます。
厚生労働省によるタミフル使用上の注意 - 副作用の詳細な症状と対応方法
タミフルの突発性副作用のメカニズムに関する英語論文 - 異常行動と突然死のエビデンス