テリスロマイシン(販売名:ケテック錠)は、市販後に「意識消失」に関する副作用報告が集積し、注意喚起が段階的に強化された薬剤です。
厚労省資料では、販売開始は平成15年12月、推定使用患者数は累計で約340万人とされ、比較的短期間に広く使われた背景が読み取れます。
特に重要なのは、「意識消失」が単なる“ふらつき”の延長ではなく、事故につながり得る事象として扱われた点です。
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同資料には、意識消失の報告が累計15例に達し、そのうち4例が自動車事故として整理されたことが明記されています。
この経緯を医療者向けに言い換えるなら、「予測しにくいタイミングで突然に安全域(運転・高所作業)を破壊する副作用として評価された」ということです。
だからこそ当時の行政対応は、“注意して運転”ではなく“危険を伴う機械操作に従事させない”という、かなり強い行動制限の文言に踏み込んでいます。
実務上は、販売中止となった今でも「なぜ消えた薬か」を説明できることが、後輩教育や疑義照会の質を上げます。
また、過去に処方歴がある患者(古い薬歴・紹介状・お薬手帳の過去ページ)で「運転中に気が遠くなった」等の訴えがあった場合、当時の副作用情報と結び付けて把握し直す視点が役立ちます。
テリスロマイシンの安全対策では、「意識消失」と並んで「視調節障害」が前面に出ています。
厚労省の安全対策文言では、意識消失・視調節障害・霧視が併記され、運転など危険作業を避けるよう明確に指示されています。
視調節障害は、患者が「目がかすむ」「ピントが合わない」と表現しやすい一方で、受診理由として軽視されがちです。
しかし医療安全の観点では、視機能の変調は運転・重機操作・脚立作業・夜間歩行など、日常の転倒や事故に直結します。
現場での説明は、次のように“行動”に落とすと伝わりやすくなります。
「中止して受診」は当時の通知文のコアで、症状が出た場合は直ちに投与中止し医師の診察を受けるよう指導する、と具体的に書かれています。
この強い指示は、“発現したら継続してよい副作用”ではないというメッセージでもあり、医療者側の説明責任の根拠になります。
霧視は、患者が「眠い」「疲れ目」と誤認しやすく、申告が遅れるタイプの副作用です。
ただし安全対策の文言では霧視も意識消失と同列に置かれ、危険作業を避ける注意点の一部として扱われています。
霧視が問題になるのは、症状そのものより“状況依存の事故リスク”です。
厚労省資料では意識消失による自動車事故が示されており、視覚異常が加われば事故の閾値がさらに下がる可能性を想定できます(少なくとも安全対策がその方向に設計されています)。
販売中止を調べに来る読者(医師・薬剤師・看護師)が知りたいのは、「副作用が多い薬だった」よりも「どの場面で危険が顕在化したか」です。
そこで霧視については、次の“場面”をセットで教育すると院内の再発防止に効きます。
当時の通知は「患者等に十分に説明」することを求めています。
つまり霧視を“軽い副作用”として片付けず、患者の生活背景(通勤で運転するか、夜勤か、介護で車を使うか)を確認してから処方・調剤のリスクコミュニケーションを設計する、という考え方が重要です。
テリスロマイシンに関しては、厚労省が「安全対策」として使用上の注意改訂を通知し、医薬関係者への情報提供徹底を求めたことが明確に記録されています。
通知の中心は、意識消失・視調節障害・霧視の可能性を患者へ十分に説明し、症状が出たら直ちに中止して受診させる、さらに運転など危険作業に従事させない、という3点です。
このタイプの安全対策は、単に「禁忌が増えた」ではなく、患者指導と職業・生活行動まで踏み込んだ“行動制限型”です。
医療従事者向け記事としてのポイントは、販売中止を「供給の問題」だけで語らず、「注意文言がどのレベルまで強化されたか」を根拠付きで説明することにあります。
また、販売中止後は処方されないため、現場では知識が風化します。
その一方で、院内のDI資料や過去の症例検討、あるいは添付文書の相互作用欄の“相手薬”として名前だけが残ることがあり、「名前は見るが実物は見ない薬」になりやすい点が落とし穴です。
独自視点として強調したいのは、こうした“記憶の空白”が医療安全の盲点になることです。
たとえば、古い運転事故歴の聴取、過去薬剤の副作用歴の整理、患者説明のテンプレ更新(運転可否の確認項目)など、販売中止薬でも安全文化の教材として活用できます。
参考リンク(意識消失・視調節障害・霧視の注意文言、販売開始時期や報告例の整理に有用)
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2005/01/h0114-3.html