FEV1(1秒量)の正常予測値は、年齢、性別、身長を基にした回帰式によって算出されます。日本呼吸器病学会が2014年に発表した新基準値では、LMS(Lambda-Mu-Sigma)法を用いて、より精密な基準値が設定されています。
🔹 男性のFEV1予測値算出式。
exp(-7.5722+1.9393×ln(身長)-0.3068×ln(年齢))
🔹 女性のFEV1予測値算出式。
exp(-6.9428+1.8053×ln(身長)-0.3401×ln(年齢))
従来から使用されている基準では、FEV1の正常値は年齢と身長によって計算した予測値に対する割合として評価され、通常80%以上が正常とされてきました。しかし、この固定的な80%基準は、特に高齢者では過診断の原因となることが指摘されています。
近年、FEV1の評価において、従来の固定的な80%基準に代わり、LLN(Lower Limit of Normal:正常下限値)の使用が推奨されています。LLNは統計学的に算出される正常下限値で、年齢とともに変化する生理的変化をより適切に反映します。
💡 LLN基準の優位性。
従来の固定基準では、高齢者で過診断(偽陽性)が増加し、若年者で過小診断(偽陰性)が生じる傾向がありました。LLNを用いることで、個人の年齢に応じた適切な評価が可能となり、特にCOPD診断の精度向上に寄与しています。
PFT報告書におけるz-scoreとLLNの使用に関する理解(最新のスパイロメトリー報告形式についての詳細な解説)
FEV1基準値には明確な人種・地域差が存在するため、欧米の基準値をそのまま日本人に適用することは適切ではありません。中国系アジア人を対象とした研究では、白人の基準値に民族補正係数を適用しても不十分であることが示されています。
🌏 日本人特有の特徴。
日本呼吸器病学会の2014年基準値は、17歳から95歳までの日本人を対象として策定されており、従来の欧米基準値よりも日本人の生理的特徴を適切に反映しています。この基準値は、COPDや喘息などの呼吸器疾患の診断精度向上に重要な役割を果たしています。
FEV1の評価は、単独ではなくFEV1/FVC比(1秒率)との組み合わせによる総合的な判定が重要です。現行のCOPD診断基準では、気管支拡張薬投与後のFEV1/FVCが70%未満であることが必須条件とされています。
📈 評価パターン別の臨床的意義。
最新の研究では、FEV1/FVC<0.70の固定基準の妥当性が再検証されており、COPD関連の入院や死亡率の予測において、年齢調整されたLLN基準よりも優れた識別能を示すことが報告されています。
FEV1:FVC閾値のCOPD関連入院・死亡率に対する識別精度(固定閾値の妥当性に関する大規模研究結果)
従来のGOLD基準によるCOPD重症度分類は、FEV1の予測値に対するパーセンテージに基づいていますが、近年、より精密な重症度評価システムが提案されています。
⚡ 新しい重症度評価の特徴。
また、PRISm(Preserved Ratio Impaired Spirometry:FEV1/FVC≥0.70かつFEV1予測値<80%)という新しい概念も注目されており、これらの患者群では将来のCOPD発症リスクが高く、予後不良であることが示されています。
環境因子の影響も重要で、短期間のオゾン曝露がFEV1値を有意に低下させることが健康成人での研究で明らかになっており、都市部での検査結果解釈には注意が必要です。