あなたが毎月の抗VEGF注射で治療している患者の3割は、実は「本来打たなくても視力が保てる」ことをご存じですか?
加齢黄斑変性や糖尿病黄斑浮腫に対して、抗VEGF薬(アフリベルセプト・ラニビズマブ・ベバシズマブ)が標準治療とされています。多くの臨床現場では月1回投与を行う「固定投与」が主流です。ですが最近の多施設共同研究では、治療初期の反応を見ながら2〜3か月間隔に延ばしても視力維持できる例が約37%に上ることが報告されています(日本眼科学会2025年報告より)。
つまり、過剰な治療が一定数存在するということです。投与過多は角膜上皮障害や眼圧上昇の副作用を引き起こすこともあります。コスト面でも、年間の投与費用は軽く100万円を超えることがあります。つまり治療頻度の最適化はコスト削減と安全性の両立に不可欠です。
視力維持に必要な最小限の投与スケジュール設計がカギということですね。
VEGF(血管内皮増殖因子)は、網膜の血管新生を促進する主要因子です。加齢黄斑変性(AMD)では新生血管が脆く出血しやすく、視力低下を招きます。しかし、糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症では、虚血によってVEGFが過剰に分泌され、異常血管や血管漏出を誘発します。
一方で、高近視による脈絡膜新生血管では、VEGFのみならずPDGF(血小板由来成長因子)も関与していることが近年解明されています。このため、抗VEGF単独での限界も指摘されており、複合阻害薬の研究が進んでいます。
つまりVEGFだけを抑えても不十分な病態があるということですね。
VEGF阻害薬の種類ごとに作用持続時間や組織親和性が異なります。アフリベルセプトは作用が長く平均約8週、ラニビズマブは約4週程度、ベバシズマブは非承認薬ですが低コスト(約1万円/回)で使用可能です。そのため医療経済的にベバシズマブを選択する施設も少なくありません。
また、AI診断装置を用いたOCT(光干渉断層計)解析により、浮腫再発を定量判断できる時代になりました。これにより「必要なときだけ投与」するPRN方式の精度が飛躍的に向上しています。
目の状態に合わせた適正投与が今後の方向性です。
日本眼科学会公式サイト — 抗VEGF治療指針の最新情報が掲載されています。
2025年の米国ARVO(視覚・眼科研究協会)では、新規のVEGF阻害薬「ファリシマブ(faricimab)」に注目が集まりました。これはVEGF-AとAng-2を同時に阻害する二重抗体で、平均投与間隔が16週という結果が報告されています。つまり従来よりも2倍の間隔で同等の効果を得られるわけです。
この延長間隔は、患者負担の軽減だけでなく、医療機関のリソース圧縮にも直結します。年間投与回数が6回→3回に減るだけで、外来処置のスケジュールが大幅に緩和されます。治療効率の最適化指標としても重要です。
投与間隔の見直しが未来の標準になるかもしれません。
今後、抗VEGF治療は「個別化」と「持続化」がキーワードになります。遺伝子発現解析により、治療効果を予測できるバイオマーカー研究も始まっています。例えば、VEGF165bというアイソフォームの発現が高い患者では、抗VEGF薬の効果が低下する傾向があるとの報告があります。
また、眼内持続放出型デバイスの実用化が進めば、半年に1回の注射で済む時代も近いとされています。診療負担の軽減と治療継続率の改善に寄与するでしょう。
つまりVEGF治療はまだ進化の途中ということです。
ARVO公式サイト — VEGF阻害薬の国際的研究動向を確認できます。
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眼科グラフィック 「視る」からはじまる眼科臨床専門誌 第9巻2号(2020) 新しい角膜手術/最新の眼科手術器具/抗VEGF治療 専門医が教える治療戦略とコツ