ヘルペスの原因となるウイルスは、主に「単純ヘルペスウイルス(HSV)」と「水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)」の2種類に分類されます。口唇ヘルペスや性器ヘルペスの原因となるのは単純ヘルペスウイルスで、さらにHSV-1とHSV-2の2つのタイプに分かれています 。
参考)https://anamne.com/herpes-symptoms/
HSV-1は主に口唇ヘルペスを引き起こし、HSV-2は性器ヘルペスの原因となることが一般的です。ただし、近年はHSV-1による性器ヘルペスも増加しており、オーラルセックスなどにより口から性器へ感染するケースが報告されています 。
参考)https://urawa-hifuka.com/herpes-simplex-treatment/
一方、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)は初感染時に水痘(水ぼうそう)を起こし、治癒後に神経節に潜伏して免疫力が低下した際に帯状疱疹として再発します 。このウイルスは学名をHuman herpesvirus 3(HHV-3)と呼び、単純ヘルペスウイルスと同じα-ヘルペスウイルス亜科に属しています 。
参考)https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B0%B4%E7%97%98%E3%83%BB%E5%B8%AF%E7%8A%B6%E7%96%B1%E7%96%B9%E3%82%A6%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%82%B9
単純ヘルペスウイルスは非常に強い感染力を持ち、主に接触感染によって広がります。HSV-1は水ぶくれやただれのある患部、またはウイルスを含む唾液に触れることで感染し、くしゃみや咳による飛沫感染も起こります 。
参考)https://www.clinicfor.life/lp/online-insurance/treatment/oi-032/
従来は幼少期の口移しなどで家族から感染することが多く、思春期までに多くの人が感染していましたが、近年では初感染年齢が上昇傾向にあります。また、患部に直接触れなくても、ウイルスが付着した手や物を介した間接感染も起こりえます 。
HSV-2は主に性行為によって感染し、粘膜や性器からの分泌物を通じて感染が拡大します。初感染後1年以内は無症状でも性器からウイルスを排出している場合が多く、パートナーへの感染リスクが高まります 。
初感染時のヘルペスは、再発時と比較して症状が重篤になることが特徴的です。口唇ヘルペスの初感染では、口の中や周囲にピリピリとした違和感やかゆみが現れ、その後半日程度で赤い腫れが生じます 。
参考)https://anamne.com/herpes-early-symptoms/
発症から1~3日で特徴的な水ぶくれが形成され、この水ぶくれには大量のウイルスが含まれているため感染力が非常に高くなります。さらに1~2週間後にはかさぶたが形成され、完全に治癒するまでに約3週間を要します 。
性器ヘルペスの初感染では、感染から2~10日の潜伏期間を経て陰部や肛門周辺にかゆみや違和感が現れます。その後、痛みを伴う水ぶくれや潰瘍が形成され、発熱や全身の痛み、リンパ節の腫れなどの全身症状を伴うことが多いです 。
参考)https://akane-hifuka.jp/herpes.html
再発時のヘルペスは初感染時よりも症状が軽く、範囲も限局的になることが一般的です。口唇ヘルペスの再発では、唇やその周りに痛みを伴う小さな水ぶくれが数個でき、1~2日後に膿やかさぶたになって8~10日以内に治癒します 。
参考)https://www.maruho.co.jp/kanja/herpes/labial-herpes/
再発前には多くの患者が前兆症状を経験し、この段階で適切な治療を開始することで症状の軽減や治癒期間の短縮が期待できます。前兆症状には患部のピリピリ感、かゆみ、違和感などがあり、経験者はこれらの症状でヘルペスの再発を予測できることが多いです 。
性器ヘルペスの再発時は、初感染時よりも水ぶくれの数が少なく、大きさも小さく、症状が現れる範囲も狭くなります。また、全身症状を伴うことは稀で、局所的な症状のみで済むことが大半です 。
参考)https://www.clinicfor.life/telemedicine/std-treatment/incubation/std-043/
ヘルペスの診断では、まず病変の視診による観察が重要な第一段階となります。外陰部に痛みを伴う浅い潰瘍や水ぶくれがある場合、性器ヘルペスの疑いが強くなり、病変の数や範囲を詳細に観察します 。
確定診断のためには複数の検査方法が用いられます。ウイルス分離法は培養液に患部の細胞を浸して変化を観察する方法ですが、結果まで最大1週間を要し、費用も高いため実施される機会は限られています 。
参考)https://anamne.com/herpes-examination/
より実用的な検査方法として、ウイルス抗原検出法があります。これは蛍光色素で着色したウイルスを結合させて反応を確認する方法で、迅速に結果が得られますが、正確率にやや課題があります 。血液検査による抗体検査も実施され、患部からの浸出液採取と組み合わせることで診断精度を向上させています 。