放射線療法は手術、薬物療法と並ぶがんの三大治療法の一つです 。手術と同様に局所に対する治療ですが、手術のように臓器を切除することなく、臓器の機能と形態を温存しながらがんの治療が可能です 。放射線には細胞分裂が盛んな細胞に働きかける作用があるため、正常細胞よりも活発に分裂するがん細胞により強く作用します 。
参考)https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/radiotherapy/rt_02.html
がんの進行状況や患者の状態に応じて、治癒を目指した治療から症状緩和を目的とした治療まで、幅広く適用されます 。治療自体の身体への負担が比較的小さいため、高齢の方や合併症を抱えた患者であっても、治療が可能なことが多いのが特徴です 。放射線治療を単独で行う場合もありますが、手術や薬物療法と組み合わせた治療を行う場合もあります 。
参考)https://hamanomachi.kkr.or.jp/gan_shinryou/treatment/radiotherapy.html
放射線がDNAに与える損傷により、がん細胞の増殖を阻止し、細胞死を誘導することが基本的な治療原理です 。放射線の種類によって細胞への効果も変化しますが、細胞に落とすエネルギーが一定を超えると、過剰ダメージとなって細胞への効果が頭打ちになることも知られています 。このため、適切な線量設定が重要となります。
参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC11250016/
放射線療法の目的は大きく分けて 根治的治療 と 緩和的治療 があります 。根治的治療では、適応となる疾患として前立腺がん、頭頸部がん、肺がん、食道がん、子宮頸がんなどがあります 。一方、緩和的治療では、がんを治すことを目的とするわけではなく、がんの進行を抑え症状を和らげることを目的とします 。
参考)https://www.tmhp.jp/komagome/section/chuo/houshasenchiryou/shikkan/shoujoukanwa.html
手術と組み合わせて治癒率を高める場合もあり、適応となる疾患として乳がん、頭頸部がん、子宮がん、脳腫瘍などがあります 。また、がんによる症状を和らげる目的では、痛み、出血、がんによる圧迫や狭窄、神経障害などの症状緩和に用いられます 。
放射線治療は、体の外から放射線をあてる 外部照射 と、体の内側から、がんやその周辺に放射線をあてる 内部照射 に分けられます 。外部照射には、リニアック(直線加速機)を用いた高エネルギー照射治療や、IMRT(強度変調放射線治療)、陽子線治療、重粒子線治療などがあります 。
参考)https://ganjoho.jp/public/dia_tre/treatment/radiotherapy/rt_03.html
内部照射は密封小線源治療とも呼ばれ、放射性物質を「密封」した状態で病巣の近くや内部に挿入し、放射線を体の内から直接腫瘍に照射します 。外部照射と内部照射を組み合わせて治療を行うことも少なくありません 。また、放射線治療では、放射線だけを使用する治療方法と、化学療法や手術、温熱療法などを併用して治療する方法もあります 。
参考)https://gan911.com/blog/cancer-radiation-therapy/
緩和照射が適応となり得る病態として、転移性骨腫瘍による痛み、脊椎転移による痛みや痺れ、転移性脳腫瘍による頭痛や嘔気、上大静脈狭窄などがあります 。有痛性骨転移では、痛みのある骨に3Gy×10回または8Gy×1回などの照射により、治療1か月後の疼痛緩和効果が60%程度得られます 。
参考)https://housya.hiroshima-u.ac.jp/treatment-overview/mitigation-radiation/
脳転移に対しては、少数個の場合は定位照射として高線量×1~5回で1年局所制御率59-88%、多発の場合は全脳照射として脳全体に3Gy×10回の効果があります 。食道がんの通過障害では、3Gy×10回もしくは2Gy×20回に可能であれば化学療法を併用することで、70%弱で腫瘍消失が期待できます 。
放射線治療の副作用が起こる時期は、放射線治療中または終了直後の 急性期 と、終了してから半年から数年たった後の 晩期 があります 。急性期の副作用として、全身的なものでは疲労感やだるさ、食欲不振、貧血などがあり、局所的なものでは照射部位の皮膚の変化、頭部で脱毛、口腔で口の渇き、胸部で咳、腹部で軟便や下痢などがあります 。
晩期の副作用は二次がんの発生や妊娠や出産への影響などがありますが、放射線量や照射する部位の大きさなどで発生頻度が推定でき、細心の注意を払って治療計画を立てることで、重篤な晩期の副作用はごく少数の人にしか現れません 。副作用の症状が強いときは症状をやわらげる治療をおこないながら、放射線治療はできるだけ休まずに継続することが重要です 。
参考)https://www.haigan-tomoni.jp/know/treatment/radiotherapy04.html