蒸留水と精製水の違いと注射用水と滅菌精製水

蒸留水と精製水の違いを、日本薬局方の水の種類(精製水・滅菌精製水・注射用水)も含めて、臨床現場での使い分けと注意点を整理します。器具洗浄や調製で「どれを選ぶべきか」迷ったとき、判断できますか?

蒸留水と精製水の違い

蒸留水と精製水の違い:医療の現場で迷わない要点
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定義の違い(日本薬局方ベース)

精製水は「常水を蒸留・イオン交換・超ろ過等(単独または組合せ)で精製した水」、蒸留水は「蒸留で得た水」。精製水は“総称”、蒸留水は“製法名”として捉えると整理しやすい。

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医療での使い分け(洗浄・調製)

精製水は試薬調製や器具洗浄に幅広く、滅菌精製水は点眼・外用や最終洗浄など“微生物リスクに配慮したい場面”で使われやすい。注射用は別枠で考える。

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落とし穴(滅菌・エンドトキシン・保存)

「無菌(滅菌)」と「発熱性物質(エンドトキシン)管理」は同義ではない。注射用水は“滅菌+発熱性物質試験適合”が要点で、精製水や滅菌精製水を注射用途に転用しない。

蒸留水と精製水の違いの定義と製法(蒸留・イオン交換・超ろ過)


蒸留水と精製水の違いを最短で整理するなら、「蒸留水=蒸留という製法で作った水」「精製水=常水を蒸留・イオン交換・超ろ過など(単独または組合せ)で精製した水(総称)」です。
この切り分けは医療現場での説明に効きます。なぜなら「精製水」という言葉は純度の印象が強い一方、実際には“どの工程で、どの規格(日本薬局方など)に合わせたか”で品質が決まるためです。
蒸留は、加熱して水蒸気にし、冷却して凝縮させる工程です。


参考)実験で使用される「水」にはいろいろな種類があります。違いを教…

この工程では、揮発しにくい塩類(電解質)などが原水側に残りやすく、結果として“脱塩精製した水”を得やすい、という特徴があります。

一方で、精製水は蒸留だけでなく、イオン交換や超ろ過など複数の方法を取り得ます。

つまり「蒸留水は精製水の一形態(になり得る)」という理解が、混乱を最も減らします。

また、医療従事者が押さえたい実務的な視点として、同じ“蒸留水”でも「無規格」「HPLC用」など用途別に規格が切られ、保証項目が異なります。


院内で「蒸留水だから大丈夫」と一括りにせず、“何に使うか”から逆算して水種(さらに言えば供給形態や規格)を選ぶのが安全です。


蒸留水と精製水の違いと日本薬局方の水(精製水・滅菌精製水・注射用水)

医療(薬機)領域では、日本薬局方で「常水(=水道水・井戸水など)」「精製水」「滅菌精製水」「注射用水」が整理されています。
ここに「蒸留水」が同列の“規格名”として並ぶと思い込むと、現場で説明が破綇しがちです。
精製水は、常水をイオン交換・蒸留・超ろ過・逆浸透などで精製したもので、試薬の調製や医療器具の洗浄などに用いられます。


参考)https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC8200124/

滅菌精製水は、その精製水を密封容器に入れて滅菌する、または無菌的に無菌容器へ充填して密封するなどの手順で「滅菌」まで担保したものです。

用途としては点眼剤・経口剤・軟膏剤、さらに医療器具の最終洗浄などが挙げられます。

そして注射用水は、「精製水を滅菌したうえで、発熱性物質(エンドトキシン)試験に適合したもの」が要点です。

ここが重要で、滅菌だけでは注射用途の要件を満たしません(無菌=エンドトキシン陰性、ではない)。

臨床の言葉に落とすなら、次の理解が事故予防に直結します。


  • 「滅菌精製水」=微生物の混入を避けたい用途向け(ただし注射用途とは別)​
  • 「注射用水」=微生物に加えて発熱性物質管理まで求められる用途向け​

蒸留水と精製水の違いと用途(医療器具の洗浄・試薬・点眼剤)

蒸留水と精製水の違いを“用途で腹落ち”させるなら、「何を守りたいか(汚れ、イオン、微生物、エンドトキシン)」で整理するのが実務的です。
精製水はコンタクトレンズの洗浄、保存剤の調整、医療器具の洗浄、試薬の調整など幅広く登場します。
ただし、現場では「患者に触れる可能性」「侵襲性」「最終洗浄かどうか」で水種を引き上げる判断が重要になります。
滅菌精製水が適する代表例として、点眼剤や軟膏剤のように微生物リスクの説明責任が重くなる領域が挙げられます。

また「医療器具の最終洗浄」に滅菌精製水が使われるという整理は、洗浄工程のリスクコミュニケーション(途中は精製水、最後は滅菌精製水、など)に役立ちます。

蒸留水については「常水を蒸留したもの」であり、微量の不純物が残る可能性がある、と説明されることがあります。

つまり、蒸留という工程は強力でも、“最終的にどの規格・どの保証(導電率、TOC、微粒子、微生物など)で受けているか”が品質の最終回答になる点を、部署内で言語化しておくと混乱が減ります。


なお、実験・検査部門の観点では、蒸留水・精製水・脱塩水・超純水といった呼び分けがされ、用途により選択することが明示されています。


同じ「水」でも、測定系(HPLC、分光、LC/MSなど)では“水そのものの不純物がノイズになる”ため、臨床側の感覚よりも水質の要求が一段厳しくなる場面があります。


蒸留水と精製水の違いで注意する滅菌と発熱性物質(エンドトキシン)

蒸留水と精製水の違いを議論していると、いつの間にか「滅菌されていれば安全」という短絡に寄りがちですが、注射用水の定義がそれを否定します。
注射用水は、滅菌に加えて発熱性物質(エンドトキシン)試験への適合が条件として示されています。
ここでの“意外な落とし穴”は、エンドトキシンが細菌由来成分であり、細菌が死んでも残る可能性がある点です(だから滅菌だけでは足りない、という構造になります)。

この差をスタッフ教育で伝えるときは、「無菌=生きた菌がいない」「非発熱性=発熱性物質として検出されない」という2軸で説明すると誤解が減ります。

また、精製水の容器入りは気密容器に入ったものとされ、製品形態(容器・密封・保管)も品質に影響します。

院内で詰め替え運用をしている場合は、“水の種類”だけでなく“容器と取り扱い”が汚染リスクを左右するため、ラベル・開封日・保管条件の統一が実害防止につながります。

参考:日本薬局方での精製水・蒸留水などの定義(定義の原文の抜粋があり、用語の混乱を整理できます)
実験で使用される「水」にはいろいろな種類があります。違いを教…
参考:日本薬局方の水の区分(精製水・滅菌精製水・注射用水)と用途例(点眼剤、器具の最終洗浄などの臨床寄りの説明があります)
https://pharmacista.jp/contents/skillup/academic_info/otc-academic_info/1878/

蒸留水と精製水の違い:院内教育での伝え方(独自視点)

蒸留水と精製水の違いが現場で揉める原因は、用語そのものより「誰が・どの目的で・どのリスクを避けたいか」が会話の前提として共有されない点にあります。
そこで院内教育では、“水の名前”を暗記させるより、次のチェックリストで統一すると運用に強くなります。
✅ 院内で共有したいチェックリスト(例)

  • 使用目的:試薬調製/器具洗浄/最終洗浄/患者へ直接接触(点眼・外用)/注射用途。​
  • 守るべき品質軸:イオン(導電率など)/有機物(TOCなど)/微粒子/微生物(滅菌の要否)/発熱性物質(エンドトキシン)。​
  • 供給形態:メーカー品(規格・ロット)か、院内製造か、密封容器か、開封後の管理ルールはあるか。​

🧩 伝え方のテンプレ(そのまま申し送りに使える形)

  • 「これは“精製水で可”です:理由は患者に直接触れず、最終洗浄でもなく、必要なのは主に不純物除去だから」​
  • 「これは“滅菌精製水に上げる”べきです:理由は点眼・外用または最終洗浄で、微生物管理が必要だから」​
  • 「これは“注射用水以外不可”です:理由は滅菌に加え、発熱性物質試験適合が求められるから」​

最後に、名称が似ている製品(例:精製水(蒸留水)表記など)を見たときは、“製法名”と“規格名”が混在している可能性があるため、製品規格書・添付文書・社内基準のどれに従うかを先に決めるのが安全です。


参考)精製水(蒸留水) - 製品一覧

この一手間が、現場の「言った/言わない」ではなく、規格と目的に基づく判断へ切り替えるになります。




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