日本薬局方は、医薬品の性状及び品質の適正を図るため、厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を聴いて定めた医薬品の規格基準書です。通則、生薬総則、製剤総則、一般試験法及び医薬品各条から構成され、収載医薬品については我が国で繁用されている医薬品が中心となっています。日本薬局方に収載されている医薬品は「局方品」と呼ばれ、品質・純度・強度の基準が厳格に定められており、各医薬品の有効性を問う試験法や判定方法が掲載されています。mhlw+3
市販されているダイエットパッチの多くは、日本薬局方に収載されていない健康食品や化粧品扱いの製品です。これらの製品は医薬品ではないため、日本薬局方で規定される厳格な品質基準や有効性の試験法を満たす必要がありません。つまり、「日本薬局方」という名称を冠したダイエットパッチという製品カテゴリは、実際には存在しないのが現状です。note+4
医療従事者として重要なのは、日本薬局方に収載された医薬品と、市販のダイエット関連製品を明確に区別することです。患者から「日本薬局方のダイエットパッチ」について質問を受けた場合、この製品カテゴリが存在しないことを丁寧に説明する必要があります。answers.ten-navi+2
消費者庁は2019年11月に、ダイエットパッチを「貼るだけで短期間で痩せる」とうたった宣伝は虚偽で景品表示法違反(優良誤認)に当たるとして、販売会社3社に対して措置命令を出しました。措置命令を受けたのは株式会社シンビジャパン、株式会社ユニッシュ、株式会社tattvaの3社で、製品を体に貼るだけで痩せられるなどと表示し、著しい効果を示す使用前後の写真や体験談を掲載していました。nikkei+2
実際の口コミを見ると、効果に対する評価は極めて低いことがわかります。ダイエットカフェの口コミ分析では、ダイエットパッチの評価は1.9点であり、満足度は極めて低いという結果が出ています。「効果がわからない」「皮膚がかゆくなる」「結果が出ない」といった否定的な口コミが大多数を占めています。diet-cafe+1
医学的観点から見ても、皮膚のバリア機能を考慮すると、貼付剤に含まれる微量の成分では効果が見込めません。人間の皮膚は外部からの異物を簡単に通さない「バリア機能」があり、角質層は薬物吸収に大きく影響します。医療用の経皮吸収型製剤でさえ、特定の分子量や親油性を持つ成分でなければ効果的に吸収されないのです。ameblo+3
市販のダイエットパッチには、カプサイシン、カフェイン、天然ハーブエキスなどの成分が含まれていることが多いです。カプサイシンは唐辛子の辛味成分であり、経口摂取した場合には交感神経を活性化し、体温上昇や代謝アップの効果が報告されています。しかし、これらの成分が経皮吸収によって十分な量が体内に取り込まれるかは疑問です。note+6
医療用の経皮吸収型製剤は、基剤中の主薬の角層への移行、角層での透過と広がり、角層から表皮への分配、真皮以下の各組織における分配および拡散という複雑な過程を経て効果を発揮します。薬物の経皮吸収には「角層水分量」「皮膚からの水分蒸散」「皮膚pH」「体温」などの生体側の因子が影響し、製剤側の因子としては「基剤と皮膚の親和性」「薬物の分子量」などが重要です。hisamitsu-pharm+2
市販のダイエットパッチは、こうした厳密な製剤設計がなされていないため、成分が皮膚から十分に吸収される可能性は極めて低いと考えられます。角質層は約10~20μmの厚さがあり、強固なバリア機能を持っているため、単に成分を塗布または貼付するだけでは、脂肪細胞まで到達することは至難の業です。tomaligi+3
医療用の経皮吸収型製剤には、局所作用型と全身作用型の2種類があります。局所作用型外用剤は、薬物が皮膚から組織中に移行することで貼った部位周辺に効果を発揮し、代表的なものとしてロキソプロフェンナトリウムテープなどの消炎鎮痛剤があります。一方、全身作用型経皮吸収型製剤は、有効成分が皮膚の下の毛細血管を介して全身に到達することで効果を発揮し、気管支拡張剤、狭心症治療薬、パーキンソン病治療薬などがあります。gaiyokyo+1
これらの医療用製剤は、日本薬局方や医薬品承認申請の過程で厳格な品質試験、安全性試験、有効性試験を経ています。有効成分が皮膚から徐々に吸収されるために、血中濃度が長時間にわたり一定に保たれるという利点があります。また、重大な副作用が認められた時は、製剤を除去することにより容易に投与を中断できるという安全性の面でも優れています。artiencegroup+3
市販のダイエットパッチは食品や化粧品扱いのため、強い副作用は起こりにくいとされていますが、皮膚が敏感な方は発疹やかゆみ、かぶれなどの肌トラブルが起こる可能性があります。実際の口コミでも「肌がかゆくなった」「かぶれた」という報告が散見されます。経皮吸収型製剤の副作用としての皮膚症状は接触性皮膚炎と呼ばれ、紅斑、ヒリヒリ感、痛み、かゆみなどの症状が出現することがあります。shopping.yahoo+4
医療従事者として、患者からダイエットパッチについて相談を受けた際には、科学的根拠に基づいた適切な指導が必要です。まず、現時点でダイエットパッチ単体に「確実に体脂肪を落とす」だけの科学的根拠はないことを明確に伝えましょう。貼るだけで痩せるという主張は、消費者庁が違法と判断した虚偽表示であることを説明することも重要です。note+5
体重管理の基本は、摂取カロリーを抑えることと消費カロリーを増やすことです。医療用の肥満治療薬や漢方薬であれば、厳密な臨床試験で糖尿病の改善や体重減少の効果が証明されているものもあります。しかし、市販のダイエットパッチはこうした科学的検証を経ていないため、効果を期待することは現実的ではありません。saiclinic+4
患者がダイエット補助として何かを使いたいと希望する場合は、エビデンスのある医療用医薬品や、栄養指導を含む包括的なアプローチを提案することが望ましいです。また、ダイエットパッチを既に使用している患者に対しては、皮膚トラブルの有無を確認し、効果が実感できない場合は使用を中止することを勧めましょう。miyataiin+4
医療従事者として、科学的根拠のない製品に頼るのではなく、食事療法、運動療法、必要に応じた薬物療法といった標準的な肥満治療の重要性を患者に理解してもらうことが、最も重要な役割です。note+2
厚生労働省の日本薬局方ホームページでは、医薬品の規格基準について詳しく解説されており、医薬品と健康食品の違いを理解する参考資料として有用です。mhlw
ダイエットパッチに関する消費者庁の措置命令の詳細は、景品表示法違反の実例として患者指導の際に参考になります。wellness-news