拘縮期に「安静にしていれば治る」と患者に指示すると、可動域がさらに失われます。
肩関節周囲炎(五十肩・四十肩)は、医学的には「有痛性の可動域制限を主訴とする内因性肩関節疾患」と定義されます 。臨床上は大きく3つの病期に分類され、それぞれの特徴を理解することがリハビリ計画の基本となります。
関連)https://www.matsuyama.jrc.or.jp/media/aboutus/pdfs/main/renkei/b7f8549d84b34b1e53da2a0a9f929fac.pdf
炎症期(急性期):発症後1〜3か月
関連)https://africatime.com/topics/47649/
安静時痛・夜間痛が主訴となる時期です。就寝中に痛みで覚醒するケースも多く見られます 。この時期は関節包への負担を最小限に抑えながら、筋萎縮予防の等尺性収縮運動が中心となります。無理な可動域訓練は禁忌です 。
関連)https://tokyo-jointclinic.jp/tsunashima/blog/42-59/
拘縮期:発症後3〜9か月
関連)https://africatime.com/topics/47649/
痛みはやや落ち着くものの、「痛みより動きの悪さ」が前景に出てくる時期です 。服の着脱や髪を結ぶ動作が困難になります。外旋の可動域低下がとくに顕著に現れやすいとされています 。関節モビライゼーションや温熱療法、適度な可動域訓練が適応となります 。
回復期(解凍期):発症後9か月〜1年半
関連)https://africatime.com/topics/47649/
痛みが減少し、可動域が徐々に回復する時期です。つまり運動療法を積極的に導入する段階です。ただし、放置すれば完全回復を見込めないケースもあるため、肩甲骨周囲筋の筋力強化とセルフエクササイズ指導が欠かせません 。
| 病期 | 主症状 | リハビリの主眼 | 禁忌 |
|---|---|---|---|
| 炎症期(1〜3か月) | 安静時痛・夜間痛 | 疼痛管理・等尺性収縮 | 積極的な可動域訓練 |
| 拘縮期(3〜9か月) | 可動域制限が主 | 関節モビライゼーション・温熱 | 過度な安静 |
| 回復期(9か月〜1年半) | 痛み軽減・可動域回復 | 筋力訓練・セルフエクササイズ | 急激な高負荷運動 |
「症状が改善しない=まだ動かしが足りない」という判断は危険です。病期を誤認した介入が、回復を数か月単位で遅らせます。
炎症期の禁忌
関連)https://xpert.link/column/648/
炎症期における積極的な可動域訓練は、関節包の炎症を増悪させます。この時期にやってしまいがちなのが「少し動かせば早く治る」という思い込みによる無理なストレッチです。疼痛管理が最優先です。
拘縮期の禁忌
関連)https://jimbocho-seikei.com/blog/4585
過度な安静は禁忌です。動かさないことで拘縮が固定化し、保存療法のみでは自然経過(12〜18か月)から短縮できなくなるリスクが高まります 。この段階では、「痛みの出ない範囲での運動」が原則です。
関連)https://africatime.com/topics/47649/
回復期(治りかけ)の禁忌
関連)https://matsuiseikei.ansyokai.or.jp/news/p5720/
以下の5つの動作は回復期に再炎症を招くリスクがあります。
これは意外ですね。回復期こそ「動かしすぎ注意」が必要です。
患者への指導でも、「治りかけだから大丈夫」という過信を防ぐ説明が重要になります。痛みの質と量を継続的にモニタリングすることが条件です。
腱板(ローテーターカフ)の機能回復は、関節安定性の回復において核心的な役割を担います。腱板は棘上筋・棘下筋・小円筋・肩甲下筋の4筋で構成され、関節を「動かす」ためではなく「安定させる」機能を持ちます 。
関連)https://tokyo-jointclinic.jp/tsunashima/blog/42-59/
つまり腱板訓練が基本です。
段階的な腱板訓練の進め方
1. 等尺性収縮から開始(炎症期後半〜拘縮期初期)
2. 軽負荷での求心性収縮(拘縮期後半)
3. セラバンドを使った抵抗運動(回復期)
SPADIスコア(肩の痛みと機能を0〜100点で評価する指標)を用いた研究では、6週間の運動療法で平均29.86点から11.70点へと有意に改善した報告があります 。数値で患者の変化を可視化できるため、臨床評価ツールとしての活用も有効です。
関連)https://www.ilneurostudio.com/905/
腱板訓練と並行して、肩甲骨の上下・前後運動も取り入れることで、肩甲上腕リズムの正常化を促します。コッドマン体操(振り子運動)は拘縮期の可動域拡大として広く用いられており、重力を利用して関節腔を広げる効果があります 。
関連)https://xpert.link/column/648/
腱板訓練の負荷設定を誤ると、改善どころか炎症が再燃するリスクがあります。「痛みが翌朝まで残らない程度」を負荷の上限の目安とする指導が現場では実践的です。
肩関節の評価・訓練に使えるエビデンスベースの臨床情報として、以下のリソースが参考になります。
肩関節周囲炎の病期別リハビリプログラム(エクサ設定・禁忌事項を含む)。
肩関節周囲炎のリハビリで絶対にやってはいけない禁忌事項【時期別完全ガイド】 - Xpert
注射治療とリハビリの「タイミングの組み合わせ」が、回復期間を半分近く短縮できる可能性があります 。これは使えそうです。
関連)https://africatime.com/topics/47649/
炎症期の疼痛コントロールにはステロイド注射やヒアルロン酸注射が用いられます 。注射単体での治療では機能回復は限定的ですが、痛みが和らいだタイミングで適切なリハビリへ移行することで、拘縮予防と機能回復の相乗効果が得られます。
関連)https://www.teito-mc.com/shoulder-injection-therapy/
治療法別の期間目安
関連)https://africatime.com/topics/47649/
| 治療法 | 期間のイメージ | ポイント |
|---|---|---|
| 保存療法(安静・湿布・内服) | 12〜18か月 | 自然経過依存。痛みの谷を待つ方針 |
| 理学療法(温熱・可動域・筋力) | 6〜12か月 | 拘縮予防と機能回復の中核 |
| 注射治療(ヒアルロン酸/ステロイド) | 3〜6か月 | 炎症期の疼痛軽減→訓練移行を促進 |
注射治療の副作用リスクについての説明資料として、医療従事者が患者に使える参考情報。
肩関節周囲炎に対する注射治療のメリット・副作用・注意点を解説 - 帝都メディカルクリニック
注射後のウィンドウ(痛みが和らいだ期間)を逃さず、理学療法士へ速やかに引き継ぐ体制を構築することが重要です。炎症期に注射を併用し、拘縮期から系統的な運動療法へ切り替えると、体感的な改善期間が半分前後になるケースが報告されています 。
関連)https://africatime.com/topics/47649/
肩関節炎の患者で「リハビリを続けているのに思ったように改善しない」ケースでは、頚椎・胸郭の機能障害が見落とされていることがあります 。これだけは例外です。
関連)http://d1.gmobb.jp/dcm83pdwnugpf/img/2019y47-2.pdf
実際、頚椎C5/6椎間関節の近位滑り障害に対して徒手的な分節治療を行ったところ、3週間で頚部自動伸展運動時の最終域痛が消失した症例が報告されています 。肩だけを見ていては気づかない改善点が存在します。
関連)http://d1.gmobb.jp/dcm83pdwnugpf/img/2019y47-2.pdf
肩以外で確認すべき評価項目
肩関節を動かされると痛みが強い場合、肩関節以外の頚部・腰部・下肢からリハビリを始め、痛みの緩和を図るアプローチも有効です 。「肩だけ治せばいい」という発想からの転換が、難渋症例の改善につながることがあります。
関連)https://jimbocho-seikei.com/blog/4749
評価は全身から行う。これが原則です。
肩関節周囲炎の難渋症例・頚椎との鑑別に関するエビデンスを含む文献。
肩関節周囲炎における病期を考慮した治療(頚椎との関連を含む理学療法論文)
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