腱板修復術の点数と算定方法を正しく理解する完全ガイド

腱板修復術の診療報酬点数(K080-3・K080-4)の算定要件や区分の違いを詳しく解説。複雑なものの5cm基準、上腕二頭筋腱固定術との併施ルール、査定を防ぐ詳記のポイントまで、医療従事者が知っておくべき情報を網羅しています。あなたの施設では、正しく算定できていますか?

腱板修復術の点数と算定方法の正確な知識

「上腕二頭筋長頭腱の病名がなければ、K080-4の②は37,490点から27,040点に査定されます。」


🔎 この記事の3つのポイント
📋
K080-3とK080-4の点数を正確に把握する

開放手術と関節鏡下手術で点数が大きく異なります。令和6年改定の最新点数と区分(簡単・複雑)の違いを確認しましょう。

⚠️
「複雑なもの」の算定要件は2つが必須

断裂が5cm以上であることと、筋膜の移植または筋腱の移行を伴うことの両方を満たす必要があります。片方だけでは算定不可です。

💡
査定を防ぐための病名・詳記管理

上腕二頭筋腱固定術を伴う②を算定する場合、上腕二頭筋長頭腱の病名または詳記が必須です。病名なしでは確実に27,040点へ査定されます。


腱板修復術の点数:K080-3とK080-4の基本を理解する


腱板修復術(肩腱板断裂手術)の診療報酬点数は、術式によって大きく2つのKコードに分かれます。まずここをしっかり整理しておくことが基本です。


K080-3 肩腱板断裂手術(開放手術)


| 区分 | 点数 |
|------|------|
| 1 簡単なもの | 18,700点 |
| 2 複雑なもの | 24,310点 |


K080-4 関節鏡下肩腱板断裂手術


| 区分 | 点数 |
|------|------|
| 1 簡単なもの | 27,040点 |
| 2 簡単なもの(上腕二頭筋腱の固定を伴うもの) | 37,490点 |
| 3 複雑なもの | 38,670点 |


現在の臨床では、関節鏡下手術(K080-4)が主流です。開放手術(K080-3)は適応症例が限られ、関節鏡下より点数が低く設定されています。これは「K080-3は傷が大きくて術後負担が大きいから高いはず」と感じがちですが、実際は逆で、技術的難易度・精度の高さが反映されています。


令和6年度改定では、新たにK076-3「関節鏡下肩関節授動術(関節鏡下肩腱板断裂手術を伴うもの)」が54,810点で新設されました。強い拘縮を合併した腱板断裂症例に対する点数区分が整備されたことは、現場にとって大きな変化です。


1点=10円で換算すると、K080-4②の37,490点は約37.5万円に相当します(全額)。3割負担の患者さんの自己負担は約11.2万円、手術込みで1週間程度の入院となると医療費は60〜90万円程度になります。この規模の医療費を正確に算定できるかどうかが、施設の収益に直結します。


参考:令和6年度 医科診療報酬点数表(しろぼんねっと)にて最新点数を確認できます。


しろぼんねっと:令和6年 K080-4 関節鏡下肩腱板断裂手術の点数表・通知(算定要件の詳細確認に必須)


腱板修復術の「複雑なもの」の算定要件は2条件を同時に満たす必要がある

「複雑なもの」の算定を巡る誤請求は、現場で非常によく見られます。確認が必要です。


K080-3とK080-4の双方で「複雑なもの」に該当するには、以下の2つの要件を同時に満たさなければなりません。


- ✅ 腱板の断裂が 5cm以上 の症例であること
- ✅ 筋膜の移植または筋腱の移行を伴う手術であること


どちらか一方では算定不可です。「5cmを超えているから複雑なもので算定してよい」という判断は誤りです。


断裂が5cm以上であっても、筋膜の移植や筋腱の移行を伴わずに縫合修復のみを行った場合は「簡単なもの」での算定となります。このケースを複雑なもので請求すると査定対象になります。逆に言えば、「複雑なもの」には外科的な付加処置が伴っている証拠を手術記録・詳記で示す必要があります。


さらに注意すべき点があります。K080-3「複雑なもの」の通知には「筋膜の移植又は筋腱の移行を伴うものをいう」と規定されており、このときK033筋膜移植術やK040腱移行術は別途算定できません(同一術野の手術に包括されます)。手術室で「K033も算定しよう」という判断は間違いです。複雑なもので包括されていると理解しておく必要があります。


つまり複雑なもの算定が原則です。包括を見落とすと過剰算定になります。


断裂サイズの記録は術中の実測値として手術記録に明示し、筋膜移植・筋腱移行の有無も明確に記載しておくことが、査定対策の基本となります。


診療報酬算定Q&A(NJC):複雑なものに包括される術式の具体例(K033・K040の算定可否)


腱板修復術でK080-4②を算定するときの病名と詳記の落とし穴

K080-4の②「簡単なもの(上腕二頭筋腱の固定を伴うもの)」は37,490点と高額ですが、病名管理を誤ると確実に査定されます。


この区分が算定できるのは以下の条件を満たす場合です。


- 腱板の断裂が 5cm未満 の症例
- K080-7「上腕二頭筋腱固定術」を 併せて実施 したもの


しかし実際の現場では、「手術は行ったが病名が肩腱板断裂のみ」というケースが起きています。しろぼんねっとの事例報告(2026年3月)では、上腕二頭筋長頭腱の病名(上腕二頭筋長頭腱断裂・損傷・腱炎など)も詳記もなく請求したところ、37,490点→27,040点へ査定されたという実例が確認されています。差額は10,450点、つまり約10.5万円の減収です。


これが発生しやすいのは、術中に上腕二頭筋長頭腱の状態を確認してテノデーシスを実施したが、術前の主病名が「肩腱板断裂」のみで登録されているケースです。術前診断に上腕二頭筋長頭腱の病名が追加されていなければ、レセプト審査は②を認めません。


対策は明確です。術前診断・病名として「上腕二頭筋長頭腱損傷」または「上腕二頭筋長頭腱断裂」を確実に追加し、術中の実施内容と病名の整合性を確認する運用フローを整備することです。あるいは、詳記で「上腕二頭筋長頭腱の損傷を認めK080-7を実施した」旨を明記する方法も有効です。


病名の抜け1つが10万円超の査定につながります。このことを施設全体で共有しておく必要があります。


しろぼんねっと:K080-7 上腕二頭筋腱固定術の算定通知(インターフェアレンススクリュー使用の条件を確認できる)


腱板修復術の点数に加わる令和6年新設コード:K076-3の算定ポイント

令和6年度診療報酬改定で新設されたK076-3「関節鏡下肩関節授動術(関節鏡下肩腱板断裂手術を伴うもの)」は54,810点と、関連する腱板手術の中で最も高い点数区分です。まだ算定機会が少なく見落とされやすい新設コードですが、適応を正確に理解しておく価値があります。


このコードが算定できるのは、強い拘縮を合併した腱板断裂症例に対して、関節鏡下に関節包の全周切離を行いながら腱板修復も実施した場合に限られます。拘縮のみ、または腱板修復のみでは算定できません。


DPC対象病院においても、K076-3は「厚生労働大臣が指定する手術」(五号告示対象)として出来高算定の対象となります。つまり包括範囲外となり、出来高で点数が加算されます。


54,810点(約54.8万円相当)で出来高算定されることのインパクトは非常に大きく、適応症例であれば正確に算定することが施設の適正収益確保につながります。一方で、適応を逸脱した算定は指導・監査の対象となります。適応の判断は必ず担当医と連携して行うことが必要です。


新設コードの算定に不安がある場合は、審査支払機関への事前照会(事前確認)を活用する方法があります。照会すれば算定根拠を明確にした上で請求できます。


しろぼんねっと:令和6年 K076-3 関節鏡下肩関節授動術(腱板断裂手術を伴うもの)の点数・通知


腱板修復術の点数を正しく守るための実務チェックリストと運用のコツ

ここまで解説した内容を踏まえて、腱板修復術の算定漏れや査定を防ぐために現場で使える実務チェックを整理します。


術前・術中の確認事項


- 📌 断裂サイズ(5cm未満か以上か)を手術記録に実測値で明記しているか
- 📌 筋膜移植または筋腱移行の有無を手術記録に明記しているか
- 📌 上腕二頭筋長頭腱の処置(テノデーシス)を実施した場合、対応する病名が登録されているか
- 📌 拘縮合併例でK076-3の適応を医師と確認しているか


レセプト請求前の確認事項


- 📌 K080-4②(37,490点)を算定する場合、上腕二頭筋長頭腱の病名または詳記があるか
- 📌 K080-4③(複雑なもの)の請求時に、断裂5cm以上かつ筋膜移植/筋腱移行の両方が記録されているか
- 📌 複雑なものに包括される別術式(K033・K040など)を重複して算定していないか
- 📌 DPC病院の場合、K076-3が五号告示対象(出来高算定)として正しく処理されているか


実際の現場では、手術室スタッフと医事課が情報共有できていないことで請求ミスが発生しがちです。この課題に対して有効なのは、術後に「算定確認シート」を用いた手術記録レビューの運用です。断裂サイズ・追加手技の有無・病名の対応関係を1枚のシートで確認する習慣をつけることで、査定リスクを大幅に下げられます。


医療事務と手術室看護師・担当医が連携し、手術翌日には記録確認ができる体制を整えることが理想です。これは地道な取り組みですが、10万円単位の査定を防ぐ効果は確実にあります。


腱板修復術の点数は区分が多く、病名・詳記・包括ルールが複雑に絡み合っています。一度正確な算定ルールを整理し、施設内マニュアルに落とし込んでおくことが、長期的な請求精度の向上につながります。


ナレティ:K080-3 肩腱板断裂手術(令和6年度版)の告示・通知(開放手術の区分と通知の確認に便利)




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