医療現場で混乱が起きやすいのは、検索ワードとして「麻薬処方箋 保管期間 5年」が強い一方で、運用ルールの中核は「院外3年・院内2年」に分かれる点です。厚生労働省の「病院・診療所における麻薬管理マニュアル」では、調剤済みの麻薬処方せんは院外処方せんなら3年間、院内処方せんなら2年間の保管が義務づけられるとされています。
院外処方せんの「3年」は、薬局側(麻薬小売業者)が調剤済み処方せんを保管する前提で整理されます。実務では、患者さん側から「いつの処方か」を確認したい場面が2~3年スパンで起きやすく、薬局監査でも処方せんと麻薬帳簿・年間届の整合が見られます。
一方、院内処方せんの「2年」は、病院・診療所側で麻薬管理者が保管する前提です。院内での麻薬は“処方せん”という紙よりも、麻薬帳簿(受払簿)と施用記録、診療録の記載が監査の中心になりやすく、処方せん自体の保存年限は短くても、他の記録が長く残る構造が背景にあります。
参考)期限一覧表
では「5年」はどこから来るのかというと、麻薬処方せん(紙)の保存年限そのものではなく、診療録や一部の関連文書、あるいは施設内のリスク管理方針としての上乗せ運用で語られることが多い点に注意が必要です。つまり、検索上は「麻薬処方箋=5年保存」と読めてしまう記事があっても、まずは“書類の種類”を分けて法定年限を確認し、次に“施設として5年残す合理性”を検討する、という順番が安全です。
参考:院外3年・院内2年の根拠(麻薬処方せんの保存年限の部分)
厚生労働省:病院・診療所における麻薬管理マニュアル(麻薬処方せんの保管:院外3年・院内2年)
「麻薬処方箋を5年残しておいた方が良い」と言われる最大の背景は、診療録(カルテ)が5年保存であることです。厚生労働省の同マニュアル内でも、診療録の保存期間は医師法第24条第2項等により5年間と規定されている、と明記されています。
麻薬に関しては、診療録に「麻薬の品名及び数量」「施用又は交付の年月日」などを記載する必要があると整理されています。つまり、麻薬処方せん(紙)が2~3年で廃棄されても、診療録側に処方・交付・施用の痕跡が残り、5年スパンで追跡可能な状態を作ることが制度設計として想定されています。
監査・立入の実務では、紙の“処方せん”があるかどうかだけでなく、麻薬帳簿の受払・残高、廃棄や事故届の流れ、患者への交付・施用の裏付けが、整合する形で提示できるかが問われます。たとえば病院・診療所向けマニュアルでは、麻薬帳簿をコンピュータ処理する場合でも、原則として定期的に出力した印刷物を整理し提示できるようにする、といった監査対応を前提にした書きぶりがあります。
ここで重要なのが、「5年保存しなければ違法」なのか、「2~3年+診療録5年で十分」なのかを施設内で言語化しておくことです。麻薬処方箋の紙保存を5年に統一すると運用は単純になりますが、保管スペースや個人情報管理コストが増えます。逆に法定どおりに短くするなら、診療録・麻薬帳簿・廃棄届などの“代替証跡”が欠けない運用が必須になります。
参考:診療録5年保存の根拠(カルテ保存年限の部分)
厚生労働省:病院・診療所における麻薬管理マニュアル(診療録の保存期間は5年)
麻薬関係書類は、保存年限が「2年」「3年」「(ケースにより)5年」が混在し、現場の混同が起こりやすい領域です。薬局向けの「薬局における麻薬管理マニュアル」では、調剤済み麻薬処方せんは一般の処方せんと同様に“調剤済みとなった日から3年間保存”と整理されています。
同じ薬局向けマニュアルには、麻薬帳簿は最終の記載の日から2年間保存する義務があるとも書かれています。つまり、薬局では「処方せん3年」と「帳簿2年」が同時に走るため、監査で突合する期間の考え方(たとえば棚卸しのサイクル、年度報告の裏付け)を事前に決めておくと事故が減ります。
さらにややこしいのが、麻薬小売業者間譲渡許可に関連する書類群です。薬局向けマニュアルでは、麻薬処方せんの写しおよび譲渡確認書・譲受確認書は交付を受けた日から2年間保存とされています。
ここまでを見ると「5年」が出てこないように見えますが、実務では「許可書」や制度Q&Aで“5年保存”が語られることがあり、検索上位の断片情報だけ拾うと「麻薬処方箋=5年」と誤読が生まれます。したがって、施設内ルールを作るときは、最低でも次を別カテゴリで管理すると整理が一気に進みます。
✅保存対象の切り分け例(ラベル運用の発想)
この“ラベル運用”は地味ですが、監査時の提示速度が上がり、異動や退職で担当が変わっても事故りにくいのがメリットです。麻薬は「正しいことをしている」だけでは足りず、「正しいことを証明できる状態にしている」ことが強く求められます。
参考:薬局での処方せん3年・帳簿2年・写し2年の根拠(保存期間の部分)
厚生労働省:薬局における麻薬管理マニュアル(麻薬処方せん保存3年、帳簿保存2年、写し等2年)
麻薬関連書類を電子化する場合、単にスキャンして「見られる」だけでは不十分になりがちです。病院・診療所向けマニュアルでは、麻薬の受け払い等をコンピュータで処理して帳簿とする場合、原則として定期的に出力された印刷物を整理し、立入検査等の際に提示できるようにする、という趣旨の注意が書かれています。
この記載は、麻薬帳簿の電子運用が“不可”と言っているわけではありませんが、「検査で確認できる形」「改ざん疑義が起きにくい形」を強く意識していると読めます。現場では、電子カルテ・調剤システム・在庫管理が別々になりやすく、突合の最後が人力になりがちなので、監査で時間がかかるのはたいてい“検索性”ではなく“証跡のつながり”です。
そこで、5年保存を巡る実務の落とし所としては、次の2パターンがよく採用されます。
🟦パターンA:紙は法定どおり、追跡は診療録5年で担保
🟩パターンB:麻薬処方せんも施設ルールで5年保管(上乗せ)
意外と見落とされがちなのが、スキャン保存して紙を廃棄する場合の“廃棄プロセス自体”が監査リスクになる点です。麻薬は処方せんそのものが麻薬ではありませんが、個人情報・診療情報であり、廃棄がずさんだと情報漏えい事故として大きく燃えます。監査対応と同時に、情報管理(鍵付き保管、廃棄ログ、委託業者の管理)までセットで設計するのが安全です。
検索上位の記事では「何年保存か」という結論だけが強調されがちですが、現場で本当に効くのは“照合設計”です。麻薬管理では、処方せん・帳簿・診療録・廃棄・事故届がバラバラに動くと、正しく運用していても説明に時間がかかり、担当者の心理的負荷が跳ね上がります。
ここで「5年」を軸にすると、実務が楽になる場面があります。診療録が5年保存である以上、少なくとも5年スパンで「患者ごとの麻薬の交付・施用の履歴」を追える状態が望ましく、問い合わせ対応や院内の医療安全調査でも効いてきます。
特に“意外と起きる”のが、以下のようなケースです。
🚑現場で起きがちなケース(5年視点だと説明が簡単)
つまり、麻薬処方箋そのものを法定どおり2~3年にしても、運用を“5年で説明できる”ように設計しておくと、現場のストレスが下がります。逆に、5年保存に寄せるなら寄せるで、全件をただ長期保管するのではなく「照合の導線(どの記録で何を証明するか)」を先に設計しておくと、意味のある5年保管になります。
実装例としては、紙でも電子でも、患者ID(カルテ番号)・処方日・薬品名・数量が、診療録⇔麻薬帳簿⇔処方せん(または写し)で相互に引けることが重要です。病院向けマニュアルでも、帳簿の備考欄に患者氏名またはカルテ番号を記載する、といった考え方が示されています。

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