メプチンエアー(SABA)でも、吸入した薬剤の多くは口腔内に残り得るため、「口腔内の残留薬剤を取り除く」目的でうがいが位置づけられます。
吸入薬は気道に届ける設計でも、実際には口腔・咽頭側への沈着が大きくなりやすく、残留分が口腔粘膜から吸収されたり、嚥下されて全身へ回ると、β2刺激薬の全身性副作用(動悸、頻脈、手の震えなど)が出やすくなる、という説明が臨床教育資料に明記されています。
したがって「ステロイドじゃないから不要」と単純化せず、少なくとも“副作用予防の観点で推奨される”行為として患者に伝えると、説明の整合性が取りやすいです。
また、吸入薬の指導現場では、薬剤ごとに「うがい必要/不要」を細かく切り替えると患者が混乱するため、施設として“全ての吸入薬で吸入後うがいを指導する”運用が採られることがあります。
参考)https://kcmc.hosp.go.jp/files/000035512.pdf
メプチンエアーのようなβ2刺激薬についても、その枠組みの中で「できるだけ、うがいをする」と整理すると、吸入手技の標準化(手順が身体化する)が進みます。
うがいは「吸入直後」に行い、水で十分、咽頭部まで丁寧に(ガラガラ・ブクブクの両方)という指導が推奨されています。
この“ガラガラ+ブクブク”の併用は、咽頭側と口腔側のどちらにも残留が起こり得る、という前提に沿った現実的な方法です。
外来では「うがい=ガラガラだけ」になりがちなので、デモで“ブクブク→吐き出す→ガラガラ→吐き出す”の順番を一度見せると定着しやすくなります。
うがいができない状況(職場、外出先、学校など)を想定し、代替策を先に渡すとアドヒアランスが落ちにくいです。
代替策として、飲み物で口をゆすいで飲み込む工夫、食前吸入で食事により口腔内残留薬剤を除去しやすくする、吸入前に口腔内を湿らせて付着しにくくする、つばを吐き出すだけでも一定の効果がある、などが提示されています。
「できないならゼロ」ではなく「できる範囲で残留を減らす」へ落とし込むのが、現場での説明負担も少ないです。
うがい以前に、吸入が不適切だと口腔側への沈着が増え、結果として“うがいの重要度が上がる”構図になりやすいので、まず一連の吸入手順を整える必要があります。
吸入操作の基本フローは「薬のセット→姿勢を正す→吸入前の息の吐き出し→吸入→息止め→うがい」です。
この「うがい」まで含めて“ワンセット”で指導すると、患者の中で工程が抜けにくくなります。
pMDI(加圧定量噴霧式)の場合、吸入は3秒以上かけてゆっくり行うことがポイントとして示されています。
吸入後の息止めは5秒を目安に、無理のない範囲で実施し、肺内沈着率を高める要因として重要視されています。
つまり、メプチンエアーうがいを議論する前に「ゆっくり吸う」「息止めする」を徹底できると、気道到達が改善し、頓用SABAの効果実感にもつながりやすいです。
実地では、患者が“ボンベ押下と吸気の同調”でつまずくことが多いので、うまく吸えているか不安な場合はスペーサー使用が検討されます。
スペーサーは、同調不要にするだけでなく、大きい粒子がスペーサー壁に沈着することで口腔・咽頭への不要な沈着を減らせる、と説明されています。
結果として、メプチンエアーうがいの負担感(「毎回しないといけないの?」)を下げるコミュニケーションにもなります。
現場での最大の失敗は、「うがいは必要ですか?」に対して“薬理学的な正誤”だけで答え、患者の行動設計(いつ、どこで、どうやって)に落ちないまま終わることです。
施設によっては、薬剤別のうがい要否を細かく分けず、混乱回避のため“全吸入薬で吸入後うがい”と統一して指導する方針が示されています。
この統一は、患者の手技学習コストを下げるだけでなく、スタッフ間での説明ブレ(医師・薬剤師・看護師)を減らす効果も期待できます。
一方で「うがいが難しい患者」を前提に、代替策まで含めてセットで説明することが、実際の外来継続には重要です。
たとえば、吸入前に口の中を湿らせる、食前に吸入して食事で残留を減らす、つばを吐き出すだけでも効果がある、などは“患者の生活に滑り込ませる工夫”として価値が高いです。
うがいを「理想の指導」ではなく「現実に回る指導」に変換できると、結果としてメプチンエアーの適正使用(過量使用の回避、必要時の早期使用)にもつながりやすくなります。
参考:吸入後のうがいの理由(口腔内残留薬剤は約80%)、β2刺激薬の副作用予防、うがいができない場所での代替策、息止め・吸入速度など吸入指導の要点がまとまっています(吸入指導マニュアルのQ8〜Q10周辺が特に該当)。
https://kcmc.hosp.go.jp/files/000035512.pdf