耳垢溶かすお薬すごいと感じられる代表例の一つが、ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)耳科用液です。
DSS製剤は「耳垢水」として、外耳道内の皮膚表面にある耳垢へ直接作用し、薬液の浸透と軟化を促進する、とされています。
“溶かす”という表現は誤解を生みやすいですが、実際には「耳垢の脂質・角質の塊に水系の薬液が入り込みやすくなる→ふやける→取れやすくなる」というイメージが近いです。
なぜ浸透しやすくなるのかを説明する際、DSSが界面活性剤であり、水と比べて表面張力低下能を示す点は、医療者の説明材料になります。
さらに、ヒト耳垢に対して37℃で一定時間の経時的な溶解性(可溶化能)が認められた、と添付文書側で整理されています。
ここでの実務的なコツは、患者が期待する“瞬間的に消える”ではなく、「数分〜数日で“外しやすい状態”に持っていく」ことだと先に共有することです。
臨床では、耳垢の性状(湿性・乾性、油脂性、硬さ、外耳道皮膚への付着)で手応えが変わります。
硬く大きい耳垢栓塞は、点耳で軟化させた後に洗浄や用手的除去を組み合わせた方が、結果として安全で短時間に終わることがあります。
「耳垢溶かすお薬すごい=単独で完結」と思われがちなので、医療者側は“除去を容易にする前処置”の位置づけを明確にするとトラブルが減ります。
DSS耳科用液の用法は、通常は綿棒などで外耳へ塗布し、除去困難な場合は数滴点耳後5〜20分後に微温湯(37℃)で洗浄するとされています。
高度の耳垢栓塞では、1日3回・1〜2日連続で点耳した後、微温湯(37℃)洗浄を行う、という選択肢も添付文書に記載があります。
この「37℃」は地味ですが重要で、冷たい液体はめまい(温度刺激)を誘発しうるため、現場教育のチェックポイントになります。
洗浄や点耳の前段として、耳垢水(DSS、炭酸水素ナトリウム、過酸化水素、過酸化尿素、トリエタノールアミン、オリーブ油など)は処置を容易にし得る、と整理されています。
一方で、無症状の患者では耳垢を除去すべきではない、という基本も明記されています。
つまり「薬で溶かして常にきれいに」は正解ではなく、“症状・観察必要性がある時だけ介入”が基本戦略になります。
患者が自己流でやりがちな危険行動として、家庭用の口腔洗浄器(いわゆるウォーターピック等)を耳に使うケースがありますが、鼓膜破裂の可能性があるため避けるべきとされています。
また、耳の器具操作は深さ8mmを超えないようにする、鼓膜位置の目安(成人で深さ1.5〜2cm)など、事故予防の具体が示されています。
医療従事者向け記事としては、患者指導の文言を「入口だけ」「痛みが出たら中止」「奥は触らない」に落とし込むのが実装しやすいです。
DSS耳科用液は、鼓膜穿孔のある患者には投与しない(禁忌)と明記されています。
また、外耳炎のある患者では症状を増悪させるおそれがある、と注意喚起されています。
この2つは「耳垢があるから点耳」では済まない理由で、特に“痛み・耳漏・水が入ると痛い”といった病歴は、簡易スクリーニングとして役立ちます。
さらに、洗浄および/または耳垢水の使用が禁忌となり得る状況として、鼓膜の異常が疑われるケース(乳様突起手術歴、鼓膜チューブ既往で治癒不明、耳漏既往、耳に水が入った際の耳痛既往など)が挙げられています。
洗浄は「穿孔の危険因子がない場合にのみ行う」とされ、耳垢軟化→洗浄、の流れ自体にも適応判断が必要です。
ここが現場では抜けやすく、患者が市販の“耳洗浄”に走って悪化→受診、という動線が起こりやすいので、医療者からの啓発価値が高い部分です。
参考)耳垢
受診目安の提示も重要で、耳垢栓塞では自分で取ろうとして奥に押し込むリスクがあるため受診が推奨される、という情報提供があります。
参考)耳垢栓塞(じこうせんそく)|南浦和駅前ファミリー耳鼻咽喉科|…
また、市販洗浄液・スプレーが鼓膜穿孔や慢性中耳炎では禁忌になり得る、疑わしい場合は医師へ相談、という注意喚起もあります。
「耳垢溶かすお薬すごい」を安全に成立させるには、薬理より先に“適応と禁忌の見極め”を徹底する必要があります。
DSS耳科用液の副作用として、瘙痒感、外耳道発赤、疼痛、皮膚炎、かぶれが挙げられています。
頻度の整理として、健康成人20例で片耳ずつ本剤または生理食塩水を割り付け、0.5mLを1日3回点耳した試験が記載されており、副作用は皮膚刺激5%(1/20例)とされています。
この“軽い皮膚刺激”は患者が不安になりやすい一方、医療者側からは「中止すべき痛み」と「一過性の違和感」を言語化して渡すと、不要な継続使用を防げます。
また、耳垢除去の処置自体が医原性合併症の一般的な原因になり得る、という指摘もあります。
つまり、薬の副作用だけでなく、綿棒・器具・不適切な洗浄圧などの“機械的な外傷”も合併症として設計段階から警戒する必要があります。
患者指導では「痛みが出たら必ず中止して再診察」「耳の中に水を入れない」など、アフターケアの行動指針が実務的です。
【参考:ジオクチルソジウムスルホサクシネート耳科用液の用法・禁忌・副作用(添付文書)】
https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00065425.pdf
意外に知られていない重要点として、耳垢は外耳道内を酸性化し、外耳道皮膚を湿潤させ、感染リスクの低減に役立つため、頻繁な耳垢除去は勧められないとされています。
この視点を入れると、「耳垢=汚れ」一本槍の説明から、「耳垢=生体防御の一部、ただし詰まると症状が出る」というバランスの取れた説明に変えられます。
医療従事者が患者教育で使える、短い定型フレーズに落とすなら、「耳垢は本来必要なもの、困るのは“詰まった時”」が実装しやすいです。
エビデンスの温度感としても、点耳薬は耳垢で耳道が部分的/完全に塞がったときに耳垢除去へ有効かもしれないが、薬剤間の優劣や水・塩水より良いかは明確でない、という整理がされています。
参考)点耳薬の耳垢除去に対する効果
つまり、「耳垢溶かすお薬すごい」は体感として成立し得る一方で、“どの成分が最強か”の断定は避け、症例・禁忌・手技を含めた総合設計で成果が出る、と捉えるのが医療者向けには誠実です。
現場で差が出るのは、適応(症状がある/鼓膜所見が安全)を満たした上で、点耳→待機→適切な温度での洗浄、あるいは用手的除去へスムーズに移行できる運用があるか、です。
最後に、患者が「すごい薬を買えば解決」と誤解しないための注意点を、あえて箇条書きで置いておきます。

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